2018年3月 プロデュース粉飾事件で東陽監査法人に賠償責任6億円

 ポンコツ会計士による粉飾の指南により、上場してしまったプロデュースは既に破産しており、またその役員らも破産している以上、「本件で損害賠償責任を負える財力のある者は監査法人しかいない」と被害者たちは考えていました。しかし、そのことを理由として、裁判官が監査法人に賠償責任があると判断したならば、不合理と言わざるを得ません。というのも「誰が悪いのか?」と「誰が責任を負えるのか?」とは別問題だからです。

 この点、日経新聞は下記のように報じています。
 「新潟県長岡市の工作機械メーカー「プロデュース」(破産)の粉飾決算で株価が下落し、損害を受けたのは監査法人に責任があるとして、株主が、粉飾時の監査法人を吸収合併した東陽監査法人(東京)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は20日までに、請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、約6億1760万円の支払いを命じた。高裁の野山宏裁判長は有価証券報告書などの重要事項について虚偽記載があったと判断し、吸収後の監査法人の免責を認める余地はないと結論付けた。東陽監査法人の姿勢を「証券市場の透明性確保の一翼を担う使命感が感じられない」と批判した。東陽監査法人は「主張が認められず誠に遺憾だ。判決内容を精査し、方針を検討する」とのコメントを出した。」

 誰が悪いのか?
 これはハッキリしています。既に破産したプロデュースの役員に加え、粉飾を主導してきたポンコツ会計士が悪いのです。
 今回賠償責任を負うこととされた監査法人は、そのポンコツ会計士が代表を務めていた東都監査法人を吸収合併した法人であって、東陽監査法人自体がプロデュースの監査業務を行っていたわけではありません。
 その合併後に今回の訴訟が提起されたわけですから、「東陽監査法人はポンコツ会計士の尻拭いをしなければならない」と裁判官は判断したことになるのです。
 会計士業界は監査の質の向上のために事業再編が急速に進んでいます。その中で、本件は合併によるリスクが顕在化したことを意味します。そのため、今後の業界の事業再編に大きな影響を与えることは必至でしょう。

 果たして裁判官の中にも、ツイッターで不届きなコメントを開示するなど、その使命感を感じられないような輩もいることは確かですし、人が判断する以上、その判断に誤り生じることも当然あることです。
 もしかしたら東陽監査法人の経営陣は、「我々が責任を負うことなどありえないだろう」と考えていたのかもしれません。
 そうした姿勢がこの裁判官には無責任に映った可能性があると思います。
 上記裁判官の監査法人に対する「証券市場の透明性確保の一翼を担う使命感が感じられない」というコメントが気になります。
 断じて、そんなことはないと信じるとともに、裁判の恐ろしさをヒシヒシと感じます。
 受け入れがたい判決です。Takun
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2018年2月 JA秋田おばこ赤字56億円

 ようやく産経新聞が取り上げました(2018年2月1日の産経新聞の朝刊です)。
 いままで地元の秋田魁新報が取り上げていたのは注目していましたが、今回はJA秋田おばこで明らかになった標記の問題を取り上げます。事実関係を簡単に整理します。

① JAが組合員からコメを買い取ります。
② JAは買い取った代金を組合員に対して支払います。仮払いです。
③ JAは買い取ったコメを卸業者へ販売します。
④ コメ卸業者から支払われる販売代金をJAが回収します。
⑤ ②と④の差額を精算します(④<②であれば、生じた余剰金を組合員に対して追加で支払いますが、②>④であれば、生じた損失を埋め合わせるのに組合員から徴収が必要となります。)

 JA秋田おばこで問題になっているのは、②>④となっている状況です。つまり④の販売代金が②の購入代金を下回っているため、組合員に対してコメ代金を過大に支払った状況が継続し、長年にわたって赤字が続いているのです。
 「高く仕入れて、安く売れば、損失になる」という、とても単純な話です。
 なぜそんなことをするのでしょうか?
 「販売量日本一のプライドがある」という理由もあるようです。要は「コメを集めるため②の仮払金を多額に設定している」というのです。残念ながら、実際はそれほどの販売力などないにもかかわらず・・・です。
 また、見方によっては利益相反の可能性も考えられます。自分の家族が米を作っていれば自らの利益のため、または蜜月の関係にある農家の利益のため、「JAが損をしても構わない」と考えて、多額に仕入れたのであれば、これは立派な違法行為です。

 いずれにしても注目すべきは、「高く仕入れて安く売ることでJAに損失が累積していった」という事実です。私には、JA役員らが問題を直視できず、ただなし崩し的に問題を放置してきた、としか見えません。
 にもかかわらず、産経新聞の記事では、本件の累積赤字について、代表理事長の以下のコメントが掲載されています。

 「事務経理が手薄になっていた。深く反省している。」

 私には、問題をすり替えているようにみえるのですが、どうでしょうか?
 ゲスの勘ぐりかもしれませんが、累積損失は把握しつつも、「きっといつか何とかなる」「いや、なんとかしなきゃいけない」と悩み続けた問題じゃぁないんですか?
 果たして、JA秋田おばこの理事会では、理事33名の報酬を4カ月にわたって50%減額することを決めたそうです(その減額した総額だけでも公表してほしいものですが・・・)。
 その金額がJAの損失を補填するほどに十分な額なのか、または「焼け石に水」程度の金額なのか、想像に任せる他ありません。
 農協法の理事の責任は、会社法の取締役の規定を準用しており、株式会社の役員が株主代表訴訟によって巨額の賠償責任を負う事例と同様に、JAの役員も厳格な責任を負っています。
 JA役員には、JAおばこが被った損害を補填する責任があるのです。
 このことは、きっとJA役員本人の皆様は自覚していると思います。
 直接的な利害関係のある組合員の出方次第ですが・・・、JA役員の大きな責任問題となる可能性が高いでしょう。

 次回は、少し古い話になりますが、やはり同様な問題が秋田県で発生したことを扱おうと思います。
 とっても根深い問題なのかもしれません。Takun
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2017年12月 代表取締役による不正の資金流出160百万円

 店舗運営事業のサポート等のシステム事業を行うINEST株式会社(JASDAQ)は、「不正行為に関する再発防止策等に関するお知らせ」を公表しました。
 不正実行者である同社の元代表取締役は、取引先を経由させて社外流出させた資金を横領していました。不正実行期間の6年間累計の資金流出額は160百万円とされます(そのうち125百万円は不正実行者からの担保差し入れを受けており、差額の35百万円が未回収の資金流出額になるとのことです)。
 以下の記述は、平成29年11月に同社が公表した「内部調査委員会の調査報告書受領等に関するお知らせ」からの引用ですが、それぞれコメントします。

 「過年度において費用認識されていた資金流出額は、元役員(不正実行者の元代表取締役)への未収金または適切な科目の債権に振り替えることになりますが、同時に当該未収金または債権の性質を考慮すると同額の貸倒引当金を計上すべきと考えられますので・・・」
 資金流出額が元役員に対する債権として計上されることは当然としても、「同額の貸倒引当金を計上すべきと考えられる」その理由は明示すべきと思われます。というのも、その理由として「元代表取締役の債務返済能力がない」なのか、「もう125百万円も差入れているから、これ以上は勘弁してやろうとしている」なのか等の推察を招くためです。今後の会社としての回収努力やその意向について明示すべきでしょう。

 「仮に過年度決算を訂正した場合にも、段階損益には影響があり得るものの過年度の連結財務諸表に与える影響が軽微であることから、過年度の決算の訂正を行うまでの事由には該当しないと判断致しました。」
 資金流出額が累計で160百万円である一方で、過年度の業績の推移(連結の経常利益;平成29年3月期 101百万円、平成28年3月期125百万円等)と比較すると、たとえ百歩譲って差額の35百万円の問題としても、決して「軽微」といえる額ではないと思います。何をもって「軽微」としているのか、その根拠を伺いたいところです(なによりも上記表現では、「段階損益への影響」の重要性がハッキリしないことが気になります。)。

 上記の記述からは、残念ながら「ほとんど回収しているからいいだろう」とか「差額は大した額ではないだろう」といった会社側の開き直った姿勢が私には見て取れます。
 過去5年分の段階損益に与える影響の内容、元代表取締役の資力及び元代表取締役に対する刑事告訴(特別背任罪)予定について、会社の意向を伺いたいところです。
 税務調査で発覚した本事件は、社内の自浄作用ではさらに長期間見つけることは困難だったことでしょうし、何よりも本不正事例は、代表取締役が行った不正であって、質的にはとても重要なものと考えられるのです。
 果たして、この不正実行者は大晦日に何を思うのでしょうか?
「あの税務調査さえ来なければ見つからなかったのに…。」(これも推察にすぎません。)Takun
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