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2018年6月 不祥事を公表するか否か(その1)

 社内で発生した不正を公表するかどうかは悩ましいところです。
 そこで、本稿では、一般的に不正公表の要否についての知見をまとめてみました。参考にしてください。

1.不祥事の公表について
 一般に会社は社会的責任を全うするため、不祥事を積極的に公表して、説明責任を果たすことが求められており、これを隠蔽した場合、社会的信用を毀損するケースが多いと考えられます。逆に重要性のない不祥事を含め、社内に発生したすべての問題を公表する場合、徒に会社の評判を落とし、不当に不利な扱いをされる可能性がありますから、「公表しない」との経営判断に合理性が認められること考えられます。
 そのため、必ずしもすべての不祥事を公表しなければならないわけではありません。
 この点、下記2.「公表する義務が法令等で規定されている場合」を除き、不祥事を公表するか否かについての一般的な基準は存在しません。したがって、不祥事が発生した場合には、「公表するか否か」を判断する必要がありますが、この判断に際しては、下記3.「不祥事を公表する目的・必要性」に留意する必要があります。

2.公表する義務が法令等で規定されている場合
 例えば、法令上の開示義務として、独占禁止法、金融商品取引法、有価証券上場規程等に抵触する場合や、法令上の回収措置や当局への届出義務が規定されている場合(食品衛生法、薬事法(廃棄、回収等の実施義務)、道路運送車両法、毒物及び劇物取締法等)には、これらの法令等の規定に従い、開示(又は届出)を行う必要があります。
これは下記3.(1)の被害の拡大を抑止する観点から規定されている義務と考えられます。
 そのため、不祥事を認識した場合には、まずはこれらの法令等に抵触するかどうかについて慎重に検討する必要があります。

3.不祥事を公表する目的・必要性
 一般に不祥事の公表は、下記の2点を目的としていると考えられます。
(1) 被害の発生・拡大の防止
 不祥事の内容によっては、被害が継続して発生し、さらにその被害が拡大するおそれがありますから、そうした事態を防止するため不祥事を公表する必要があります。逆に考えれば、被害の継続的発生や拡大が想定されない場合には、公表を不要とすることの合理性が認められる場合も考えられます。
(2)取引先等との信頼関係の維持・回復
 既述のとおり、不祥事を公表しない場合には、その会社の社会的信用を毀損する可能性があり、不祥事の公表により、取引先等との信頼関係の維持・回復に寄与すると考えられます。一方で、重要でない不祥事をすべて公表する場合、却って社会に混乱を与える可能性や、会社が不当な不利益を被る可能性も考えられます。

 なかなか難しい判断ですが、次回は上記の議論を踏まえて、公表の要否と具体的な公表方法についてまとめます。Taku


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2018年4月 財務諸表監査の実務第3版 発売

 「財務諸表監査の実務第3版」が出版されました。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 初版発行から3年が経過しました。
 おかげさまで一定の評価が得られたのか、初版の増版、2年前の第2版の刊行を経て、今回の第3版を刊行することになりました。こうして版を重ねることができたことは、大変うれしく、ありがたいことです。
 本書は、「財務諸表監査をは具体的にどのように実施されるか?」という問いに答えることを主眼として作成しており、その内容はわが国の監査実務の指針となっている「監査基準委員会報告書」の解説に重点を置いています。

 上記は本書冒頭の「第三版の刊行にあたって」の引用です。
 アマゾンで購入の方は、こちらへ。

 なお、takuya@nakazato-cpa.comにメールをくだされば、1割引き・送料当方負担にて発送します。お問い合わせください。Taku

 
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2018年3月 プロデュース粉飾事件で東陽監査法人に賠償責任6億円

 ポンコツ会計士による粉飾の指南により、上場してしまったプロデュースは既に破産しており、またその役員らも破産している以上、「本件で損害賠償責任を負える財力のある者は監査法人しかいない」と被害者たちは考えていました。しかし、そのことを理由として、裁判官が監査法人に賠償責任があると判断したならば、不合理と言わざるを得ません。というのも「誰が悪いのか?」と「誰が責任を負えるのか?」とは別問題だからです。

 この点、日経新聞は下記のように報じています。
 「新潟県長岡市の工作機械メーカー「プロデュース」(破産)の粉飾決算で株価が下落し、損害を受けたのは監査法人に責任があるとして、株主が、粉飾時の監査法人を吸収合併した東陽監査法人(東京)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は20日までに、請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、約6億1760万円の支払いを命じた。高裁の野山宏裁判長は有価証券報告書などの重要事項について虚偽記載があったと判断し、吸収後の監査法人の免責を認める余地はないと結論付けた。東陽監査法人の姿勢を「証券市場の透明性確保の一翼を担う使命感が感じられない」と批判した。東陽監査法人は「主張が認められず誠に遺憾だ。判決内容を精査し、方針を検討する」とのコメントを出した。」

 誰が悪いのか?
 これはハッキリしています。既に破産したプロデュースの役員に加え、粉飾を主導してきたポンコツ会計士が悪いのです。
 今回賠償責任を負うこととされた監査法人は、そのポンコツ会計士が代表を務めていた東都監査法人を吸収合併した法人であって、東陽監査法人自体がプロデュースの監査業務を行っていたわけではありません。
 その合併後に今回の訴訟が提起されたわけですから、「東陽監査法人はポンコツ会計士の尻拭いをしなければならない」と裁判官は判断したことになるのです。
 会計士業界は監査の質の向上のために事業再編が急速に進んでいます。その中で、本件は合併によるリスクが顕在化したことを意味します。そのため、今後の業界の事業再編に大きな影響を与えることは必至でしょう。

 果たして裁判官の中にも、ツイッターで不届きなコメントを開示するなど、その使命感を感じられないような輩もいることは確かですし、人が判断する以上、その判断に誤り生じることも当然あることです。
 もしかしたら東陽監査法人の経営陣は、「我々が責任を負うことなどありえないだろう」と考えていたのかもしれません。
 そうした姿勢がこの裁判官には無責任に映った可能性があると思います。
 上記裁判官の監査法人に対する「証券市場の透明性確保の一翼を担う使命感が感じられない」というコメントが気になります。
 断じて、そんなことはないと信じるとともに、裁判の恐ろしさをヒシヒシと感じます。
 受け入れがたい判決です。Takun
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 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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