2017年12月 代表取締役による不正の資金流出160百万円

 店舗運営事業のサポート等のシステム事業を行うINEST株式会社(JASDAQ)は、「不正行為に関する再発防止策等に関するお知らせ」を公表しました。
 不正実行者である同社の元代表取締役は、取引先を経由させて社外流出させた資金を横領していました。不正実行期間の6年間累計の資金流出額は160百万円とされます(そのうち125百万円は不正実行者からの担保差し入れを受けており、差額の35百万円が未回収の資金流出額になるとのことです)。
 以下の記述は、平成29年11月に同社が公表した「内部調査委員会の調査報告書受領等に関するお知らせ」からの引用ですが、それぞれコメントします。

 「過年度において費用認識されていた資金流出額は、元役員(不正実行者の元代表取締役)への未収金または適切な科目の債権に振り替えることになりますが、同時に当該未収金または債権の性質を考慮すると同額の貸倒引当金を計上すべきと考えられますので・・・」
 資金流出額が元役員に対する債権として計上されることは当然としても、「同額の貸倒引当金を計上すべきと考えられる」その理由は明示すべきと思われます。というのも、その理由として「元代表取締役の債務返済能力がない」なのか、「もう125百万円も差入れているから、これ以上は勘弁してやろうとしている」なのか等の推察を招くためです。今後の会社としての回収努力やその意向について明示すべきでしょう。

 「仮に過年度決算を訂正した場合にも、段階損益には影響があり得るものの過年度の連結財務諸表に与える影響が軽微であることから、過年度の決算の訂正を行うまでの事由には該当しないと判断致しました。」
 資金流出額が累計で160百万円である一方で、過年度の業績の推移(連結の経常利益;平成29年3月期 101百万円、平成28年3月期125百万円等)と比較すると、たとえ百歩譲って差額の35百万円の問題としても、決して「軽微」といえる額ではないと思います。何をもって「軽微」としているのか、その根拠を伺いたいところです(なによりも上記表現では、「段階損益への影響」の重要性がハッキリしないことが気になります。)。

 上記の記述からは、残念ながら「ほとんど回収しているからいいだろう」とか「差額は大した額ではないだろう」といった会社側の開き直った姿勢が私には見て取れます。
 過去5年分の段階損益に与える影響の内容、元代表取締役の資力及び元代表取締役に対する刑事告訴(特別背任罪)予定について、会社の意向を伺いたいところです。
 税務調査で発覚した本事件は、社内の自浄作用ではさらに長期間見つけることは困難だったことでしょうし、何よりも本不正事例は、代表取締役が行った不正であって、質的にはとても重要なものと考えられるのです。
 果たして、この不正実行者は大晦日に何を思うのでしょうか?
「あの税務調査さえ来なければ見つからなかったのに…。」(これも推察にすぎません。)Takun
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2017年11月 OSJBホールディングス連絡子会社での費用の水増し・架空発注

 橋梁事業及び建設事業を主要な事業内容とするOSJBホールディングス株式会社(東証第一部)の主要な連結子会社であるオリエンタル白石株式会社にて、従業員による不適切な取引が判明しました。
 その内容は以下の通りです。
 「・・・複数の従業員が、協力会社に対して外注費の水増し発注を繰り返し、キックバックを受け取り従業員の飲食費として費消するなどした疑い」、「一部の事業所において、協力会社に対して(注)架空発注を行い費用をプールさせたうえで、 他の業務の原価に付け替えていた疑い」です。
 費用の水増しや架空発注は、水増し又は架空により実態より多額に支出された資金を従業員が横領する典型的な不正手法です。しかし、上記の(注;原文のまま)が理解できません。下線部をよく読むと、①架空発注を行ったこと、②費用をプールさせたこと、③(その費用を?)他の業務の原価に付け替えたこと、として理解できますが、②→③の流れについて合点がいきません。
 というのも、②の「費用をプールさせた」というのは、①の架空発注に伴う支出を、②「費用としてプール」、つまり、簿外の預金等として別に保管していたと理解できますが、その費用(架空発注である以上、架空の費用;実態の伴わない費用でしょう)を、③として「他の業務の原価に付け替えた」、としているのです。
 これは協力会社からの架空発注に係る請求をそのまま経費や原価として計上すると、異常な支出として発覚してしまうことから、「③他の業務の原価」に付け替えることで不正発覚の隠蔽工作を意図したものなのでしょうか?それとも、他になにか理由があって付け替えたのでしょうか?または、付け替え自体を問題視する必要があるのでしょうか?どうも理解ができません。(しかし、これは公表された資料に基づく私の解釈なので、私の理解不足に起因した誤解かもしれません。予めご了承ください。)。
 いずれにしても同社は、今後、弁護士等の外部専門家を補助者とする社内調査委員会を設置して、全容の解明及び原因究明ならびに同種の事案の有無について調査を進めるとのことです。

 この会社は3月決算で、第2四半期(平成29年4月1日~同年9月末)の開示予定は平成 29 年 11 月 14 日でしたが、本事件の発覚により、1か月延期するとのことです。
 さて、業績に及ぼす影響は?
 現時点で判明している不適切な取引に係る不正金額は約2億円、当社の最終損益に与える影響としては約 1.5 億円の損失(2億円より減少するのは不正実行者に対する求償権や当該損失に係る税効果を考慮してのことでしょう)を見込んでいます。
 ちなみに同社の平成29年3月期の連結売上高は513億円、経常利益は30億円でした。
 今後も同様の規模で推移するとしたならば、業績に与える影響は「軽微」といえるかどうか?微妙なところでしょうか。Taku
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2017年10月 バンダイの元従業員による取引先との共謀

 2017年10月バンダイナムコホールディングスの子会社である株式会社バンダイの元従業員による不正行為が判明しました。
 不正実行者は2013年から2017年の5年間にわたり、取引先と共謀して当該会社から、約2億円(現在判明分)にわたる金員を不正に詐取していました。
 本不正の発覚は、2017年8月に行われた国税当局による税務調査によるものでした(その後、外部弁護士を含めた内部調査委員会による調査が開始されました)。

 不正実行者は同年10月に解雇され、同社では本不正行為に対する監督責任を明確にするため、下記の処分を行っています。
① 親会社の常勤取締役全員(4名)の報酬減額
 ・ 代表取締役:同年10月より月額基本報酬の 30%を3カ月間減額
 ・ 取締役:同年10月より月額基本報酬の 15%を3カ月間減額
② バンダイの常勤取締役全員(7名)の報酬減額
 ・ 代表取締役および担当取締役:同年10月より月額基本報酬の 30%を3カ月間減額
 ・ 取締役:平成 29 年 10 月より月額基本報酬の 15%を3カ月間減額

 事件の発覚から処分まで相当なスピードです。
 この対応の速さには目を見張るものがあります。
 もちろん、はやいに越したことはありませんが、仮に幕引きをはやくする余り、原因の検討が不十分な場合には、再発防止策も不十分になりかねません(特に本件は、社内の自浄作用で発覚したわけでないため、その分、慎重に原因の検討を行う必要があるかもしれません)。
 ちなみに、同社の公表した再発防止策です。
・ コンプライアンス意識のさらなる徹底
(当社では、グループのコンプライアンス憲章を制定し、憲章の掲示やコンプライアンスに関する冊子の配布、eラーニングによる社内教育などの様々な機会を通じてコンプライアンス意識の徹底を行ってまいりましたが、今回の不正行為の発生を厳粛に受け止め、コンプライアンス意識のさらなる徹底をはかる)
・ 業務フローの見直しなど内部統制体制の強化を行い、グループ全体で再発防止に取り組む

 上記の再発防止策が、やや抽象的な記述にとどまっている点が気になります(とはいえ、取引先との共謀がどのように行われたのか、詳細な開示がなされていないので、再発防止策の十分性についてコメントはしかねます)。
 一般的に取引先との共謀による場合、「架空請求」や「水増し請求」が行われることが多いようです。
 こうした不正に対しては、取引実態の把握のため必要な添付資料の見直しや、価格の妥当性の検証、社内での違和感を覚えた者の有無や、そうした違和感を管理部に吸い上げるための情報・伝達のためのコントロールが有効な場合があります。
 本不正の詳細な手法が気になります。Takun 
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 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
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実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
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