2017年9月 経理部門責任者による不正~税務調査により発覚230百万円

 最近、子会社おける不正が続発していますが、今回は開示会社そのものの経理部門責任者による不正です。山梨県甲斐市を本社とする株式会社光彩工芸(ジャスダック上場)は、ジュエリーの製造販売を行っています。
 同社は2017年8月に「当社経理部門責任者の不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 上記開示資料及び報道によると、同社経理部門責任者は、会社の預金口座から金員を不正に引き出して(1回につき数十万円から数百万円を数十回)当社に多大な損害を与えたとのことです。
 この点、一般的には、不正に引き出された資金は、三競オート(競馬・競輪・競艇・オートレース)やパチンコ等のギャンブルの他、異性のための遊興費として費消され、不正発覚時点では本人に資力がないケースが多いようです。
 しかし、この不正は異なります。
 というのも、不正に引き出された資金は、主に不動産投資及びその他物品等の購入費等に充てられており、これらの資産を抑えれば会社の被害を最小限にできるようなのです。
 また、不正実行者は経理部門責任者ですから、資金移動に関する権限を有しています。これを悪用し、支出した資金に相当する金額の材料費や棚卸高を過大に計上することで不正の発覚を免れていたのです。
 この点、資料からは明らかではありませんが、こうした材料費や棚卸高に係る関係資料のねつ造等、巧妙な隠蔽工作も伴っていたことが想定されます。そうでなければ、本不正により生じた異常値について、材料の調達部門や棚卸管理部門等の他部門の監視、又は内部監査等による原因究明によって、本不正が発覚する可能性が高いのです。つまり、社内の他部門の監視をすり抜ける隠蔽工作(これは財務諸表の監査人に対する隠蔽工作にも通じます)によって、不正発覚を逃れていたと考えられるのです。
 ここで強調したいのは、「経理責任者による不正は内部統制の限界を超える」と簡単に結論付けられないことです。
 経営陣を含め、他部門の責任者らが、会計数値の異常の有無を注意深く検証していれば、もっと早期に不正を発見できたのか、又はそうした監視下で「すぐ見つかる」という状況にあれば、そもそも不正を防止できた可能性もあるのです。
 さて、この不正行為の発覚の経緯ですが、実は東京国税局の調査を契機としています。
 これが、大変残念です。
 というのも東京国税局の調査は、この経理部門責任者の不正を質すことを目的としていたわけではありません。単純に「脱税の有無の調査」つまり、「水増しの経費計上はないか?」という趣旨で調査に来ているのです。
 つまり「この不正は、たまたま税務調査で見つかった」ということであり、会社の自浄作用によって発覚したわけではない、という意味で、大変残念なのです。
 同社の決算書を見てみました。
 平成29年1月期の売上高1,979百万円、当期純利益2百万円です。これらの財務指標と比較すると、当該不正行為の被害額230百万円は巨額です。
 「いやいや、不正実行者の保有する不動産を抑えれば大丈夫。実質、損害は生じませんから。」
 そんな声が聞こえてきそうですが、とんでもないことです。
 同社の業績は、平成27年1月期と平成28年1月期と連続して赤字で、売上高も下降気味です。業績動向を見る限り、ようやくリストラが一段落したのでしょう。平成29年1月期は、売上高の急落にも関わらず、何とかギリギリで2百万円の利益を出しています。このタイミングで、今回の経理部門責任者の不正が発覚したのです。仮に早期に不正が発覚していればリストラの方法も変わっていたかもしれません。
 しかも、自浄作用でなく、外部の調査によって「たまたま」発覚したのです。憎むのは不正実行者ですが、不正実行者が不動産投資をしていたことには感謝すべきでしょう(この不動産の上げ相場ですからね)。
 全てが結果オーライなのです。
 
 ちなみに、今年の4月に発覚した三菱食品株式会社の連結子会社でも同様の不正がありました。こちらは平成2004年6月~平成2015年3月にわたる長期間、請求書の偽造により個人の私的流用が行われていましたが、やはり国税局の税務調査により980百万円の着服が明らかになりました(資金の使途は開示されていません)。
 同社では、再発防止策として、役員を含めて単独での支払決裁ができない体制を構築することとしています。
 果たして、光彩工芸ではどのような再発防止策を提言するでしょうか?注目です。Taku

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