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2014年4月 KNT-CT連結子会社での経理担当者の不正

 「KNT」は何の略か?おわかりでしょうか?
 関係者でなければ判別できない人が多いのではないでしょうか?
 正解は「近畿日本ツーリスト」です。言わずと知れた旅行業界の大手です。
 2013年1月に「近畿日本ツーリスト(KNT)」と「クラブツーリズム(CT)」とが経営統合し、持株会社化された会社名が「KNT-CT」です。
 2014年4月、同社は「当社連結子会社元社員による不正行為について」を公表しました。
 上記報告書では、KNT-CTの連結子会社「近畿日本ツーリスト沖縄」で、経理担当者が2005年10月~2014年1月の間、足かけ10年にわたって不正を行っていたことを明らかにしています。不正実行者からの返戻金を控除した被害総額は251百万円。単独犯の従業員不正としては、比較的多額の不正と言っても良いでしょう。
不正の手法は以下の通りです。
・ファームバンキングを利用しての不正実行者の個人口座への不正送金
・不正な預金の引き出し
・夜間金庫の投入現金の抜き取り
 報告書では、上記の不正について「巧妙に経理書類を改ざんしていた」と指摘しています。
 「巧妙かどうか」は報告書を見る限り判断できませんが、上記の不正は容易に想定しうる典型的な手法なはずですから、そうした不正が発生するリスクを識別し、これに対応するコントロール(リスク低減策)が十分だったかどうかが問題となるでしょう。
 具体的な業務プロセスの内容にもよりますが、例えばファームバンキングの送金内容と請求書や支払依頼書等との照合、預金の引出に係る承認手続の有無や定期的な残高の検証、不自然な入出金の原因調査、領収書や入金票の日付や金額と夜間金庫の現金投入のタイミングや金額の不整合に係るチェック等、上記の不正リスクに対応する典型的なコントロールに不備がなかったかどうか、が問題となると考えます。
 こうしたコントロールが有効に機能しているにもかかわらず不正が発覚しなかったのであれば「巧妙な隠蔽」だったのでしょうし、仮にこうしたコントロールが運用されていなかったのであれば「巧妙」ではなくて、「管理態勢が不十分だった」ということになるでしょう。また、何よりも現金や預金(ファームバンキング等も含む)の取扱担当者は、定期的に配置換えを行うか、強制的に休暇を与え、他の者が作業を行う等のコントロールが必須です。
 特に注目すべきは、この不正の発覚は不正実行者である経理担当者が2014年1月に退職したことに起因する点です。つまり、不正実行者の退職後、他の者がその経理業務の状況を確認した結果、不自然な経理処理の存在が明らかになったのです。こうした発覚の経緯からすれば、長期間にわたって不正実行者の業務内容を誰もチェックしていなかった可能性があります。また、もしかしたら不正実行者が2014年1月に退職していなければ、この不正は未だに発覚しなかったのかもしれません。
 最後に、同報告書の結びの記述です。
「当社では、コンプライアンスを重視し、適正な業務の執行に努めてまいりましたが、このように重大な不祥事が発生いたしましたことは痛恨の極みであり、事態を重く受け止め、全役職員が一丸となって再発防止に努め、信頼回復を図った参る所存であります。」
 個人的には、その具体的な「再発防止策」について興味があります。
 それには今回の不正が長期間にわたり発覚しなかった具体的な原因が踏まえられるはずですから。今後、具体的な再発防止策が開示されることを期待しましょう。Taku
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