2017年7月 ながの東急百貨店での従業員不正 在庫の横流し?

 2017年6月、ジャスダック上場の株式会社ながの東急百貨店は、「第三者委員会の調査報告及び当社の対応について」を公表しました。ながの東急百貨店は、長野県東北信地方を主な地盤とする地方百貨店です。
 問題となったのは、元従業員による貴金属類の商品の不正持ち出し及び転売行為です。
 同社の公表資料によると、本不正の手法は以下の通りです。
 不正実行者は、同社が例年行っているワールドジュエリー&ウォッチフェア(以下、「本フェア」)という特別の拡販策の中で「適正に顧客へ販売したように装って伝票処理を行い、商品を店外に持ち出し他に転売するなどの不正な取引行為」を行っていました。
 要するに、仕入れた時計を顧客に売ったことにして持ち出し、これを他に転売して資金化し、横領するという単純な手法です(いわゆる「ラッピング」といわれる不正の常套手段です)。
 当然、会社経理側では売掛金の入金遅延を認識しますが、不正実行者は自転車操業的に商品転売による資金化を続け、遅延した債権の入金に充当し続けるわけです。当初20万円程度から始まった不正は、次第に多数・多額となっていき、最終的に上記報告書では、取り消されるべき売上取引は65百万円としています。
「なんでこんなことをするのか?いつかはバレるだろうに?」
 それは一般的な発想です。
 不正実行者は「今を何とかしなきゃ」と一生懸命に考えており、「いまバレないように、不正を続けるしかない」と考えてしまうのです。
 しかも不正実行者は、自らの取引集中による嫌疑を避けるべく、他の従業員の名義を使うことで取引を分散していました。これが多額・多数の取引の認識が遅延した原因となったようです。
 内部統制上の問題として注目すべきは、「本フェア」では、通常とは異なり、以下のように例外的な扱いがなされていたことです。

・ 店舗販売が原則だが、商品を持出して営業できる。
・ 現金又はクレジットカードでの販売が原則だが、掛売上(信用販売)ができる。
・ 例外的な掛売上の場合、上司の承認により与信枠を決めるが、与信枠がない。

 このように、拡販のために商品管理及び与信管理・支払期限を緩和していたことが本不正の発生原因と考えられます。
「買上明細で買主名義が変更されている」、「入金名義が変わっている」という不正の兆候に目を光らせていれば早期に発覚したかもしれません。また「商品の受取欄に買主の署名が必要」というルールが形骸化していたことも問題といえるでしょう。
 実は、本不正事例は、「在庫の横流し」と書きたいところなのです。
 しかし、本不正事例は厳密には「在庫の横流し」ではありません。
 というのも、百貨店では原則、「消化仕入(売上仕入)」という慣行があります。これは「顧客に売れるまで仕入れない」ことを意味しますから、販売前の商品は百貨店にとっての在庫ではなく、仕入先の在庫なのです(在庫リスクは仕入業者にあります。)
 つまり、本不正事例では、百貨店の在庫が横流しされたわけではなく、仕入業者の所有する在庫を勝手に資金化したことになるのです。
 小さくて価値のあるモノは不正の対象になり易いですから、管理を徹底化する必要がありますね。Taku
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