2017年4月 東芝に意見不表明

 四半期財務諸表は、決算日後45日以内に提出する必要があります。
 東芝の第3四半期財務諸表(2016年12月31日;期末日)の提出期限は、期末日から45日ですから2017年2月14日でした。
 その提出期限を特別に延長して、2017年3月中旬としました。
 それでも開示することができず、さらに再延長した期日が昨日の2017年4月11日でした。
 その昨日、東芝が開示した四半期財務諸表は、監査人が意見不表明(厳密には「結論不表明」)のママでの公表となりました。
 報道によると、子会社のWHの経営陣が業績の見込みを実際よりも良くするようゲキを飛ばしていたとされます(親会社の東芝と同様に「チャレンジ!」と業績の嵩上げを強要していたのであれば、子会社での「チャレンジ」なので、「こどもチャレンジ」ということになります)。

 冗談はさておき、監査人が意見不表明とするのは新聞報道にもあるとおり「極めて異例」です。ちなみに、監査を実施する上で遵守しなければならない「監査基準」には、以下の規定があります。
 「監査人は、重要な監査手続が実施できなかったことにより、財務諸表全体に対する意見表明のための基礎を得ることができなかったときには、意見を表明してはならない。」 「意見表明のための基礎」は、監査人が監査手続の結果得られる「確信」です。
 その確信のないママ、「財務諸表は適正と認める」との意見を表明することは禁じられています。
 なるほど、確信のないママに「財務諸表が適正」といわれても、後になって重要な虚偽表示の存在が明らかになれば、それを信じた財務諸表利用者は大損害を被る可能性が高いわけですから、監査人が根拠のない意見を表明すること(ときとして、会社の意向を忖度して意見表明してしまうケースも考えられる)は禁じられているわけです。
 
 今回の問題の焦点は、子会社のWHにおいて「業績の見込みを実際よりも良く見せかけていたこと」が、果たして「いつからだったのか」という点です。
 東芝がいうように2016年4月~12月から業績悪化の問題が生じたとすれば、東芝の会計処理が正しいといえるでしょう。しかし、監査法人は「それよりも前から業績が悪化していたのではないか?」さらに「その業績悪化を隠蔽していたのではないか?」と考えており、要するに、遡及修正の必要性(減損の計上のタイミングの問題)について懸念を抱いていると考えられます。
 仮に監査法人の懸念が事実だとすると、東芝はもっと前から「債務超過だった」可能性が高まります。
 監査法人としては、「原発事業の減損計上のタイミング」に係る調査が不十分であり、「遡及修正の要否について判断ができない(確信が得られない)」ことから、意見表明の基礎が得られず、「意見不表明」としたと考えられます。

 東芝は前任監査人である新日本をずーっと欺き続けました。
 そのため今回、後任監査人のPwCあらたが東芝の主張に疑念を抱くのは当然ともいえるでしょう。
 東芝としては、なんとかしてPwCあらたに信じてもらうよう種々の努力をしたのでしょうが、その溝が埋まらなかったのでしょう。
 報道を見ると、東芝は「監査人の交代」の可能性を示唆しているようです。東芝の監査を引き受けられる国内の監査法人は、規模からして限られるでしょう。加えて独立性の問題もあるでしょうから、必然的に特定されるかもしれません。
 果たして、その監査法人が引き受けるか?また、新日本→PwCあらた→○○といった短期間での監査人の交代は「オピニオン・ショッピング」として問題視される可能性もあります。

 監査人は会社の「保証人」です。
 「この会社の言っていることは正しい」と保証してあげることが監査人の役割であり、その責任は重大なのです。
 そのためには、会社と監査人との間に「信頼関係」が必要です。
 東芝は、監査法人と信頼関係を構築できるのでしょうか?注目です。Taku
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