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2017年3月 「監査人の交代」について

 この度、日本公認会計士協会東京会新宿支部にて、「監査の品質管理」に係る研修会を担当して、「不適切会計の具体例」について講演することになりました(平成29年3月22日開催です)。有難いことです。
 そこで本稿では、その研修会の中で取り上げる「監査人の交代」をテーマとします。
 「監査人の交代」については、監査基準委員会報告書900が実務上の指針を提供していますが、ここでは実際に問題となりうる事例(あくまで例)を紹介します。
【事例】 下記のC監査法人による監査業務の引継について問題点を指摘しなさい。
 A監査法人は、甲社の前期の財務諸表に対して監査報告書を発行したが、その後、監査人の交代により、B監査法人が甲社の監査人となった。
 B監査法人は甲社と監査契約を締結したものの、監査報告書を発行せずに期中交代することとなり、C監査法人が監査人予定者となった。
 そこでC監査法人は、前任監査人であるB監査法人に対して、監査契約締結前に監査人の交代に係る引継の手続を実施したが、甲社の前年度の監査報告書を発行したA監査法人に対しては、監査契約の締結後に監査人の引継の手続を実施した。
【事例の問題点】
 監査業務の引継は監査契約の締結「前」に実施する必要があり、C監査法人はB監査法人のみでなく、A監査法人についても監査契約締結「前」に監査人の交代に係る手続を実施する必要があった。
【事例の解説】
 監査業務の引継の目的には、「監査業務の受嘱の可否」を判断することも含まれます。
 そのため、監査業務の引継は監査業務の受嘱「後」ではなく、監査業務の受嘱「前」に行うこととされます。
 また、監査人予定者である監査法人Cが引継を求める相手である「前任監査人」の範囲も問題となりますが、これは下記の前任監査人の定義が参考になります。
 「前任監査人とは、前年度の財務諸表の監査報告書を提出したか、又は当年度の財務諸表の監査に着手したものの監査報告書を提出していない別の監査事務所に属する監査人のことをいう(監基報900.5)。」
 つまり本事例では、C監査法人にとっての前任監査人はB監査法人のみでなく、前期の監査報告書を発行したA監査法人も含まれるのです(特に本事例では、B監査法人がどれほど甲社の事情に精通していたかは不明です)。

 監査人の交代に関して実際に問題となったケースとして、2002年10月にナスダック・ジャパンに上場した会社の例を挙げましょう。同社は、2003年3月期決算にて巨額の赤字(△9億8千万円)により債務超過となるはずでしたが、その後、その監査法人との契約解除して別の監査人と監査契約を締結することで、監査人が交代します。その結果、2003年3月期の決算数値を黒字(+66百万円)に訂正したのです。
 本事案は、前任の監査法人による監査がほぼ終了した時点での監査人の交代であって、「オピニオン・ショッピング(会社にとって都合の良い意見を買う悪質な行為)」が疑われます。なお、問題となった会計処理は棚卸資産の評価損の減少(当初11億円の損失から、訂正後は2千8百万円の損失)です。この処理を新たな監査人に認めさせることで、債務超過を回避したことになるのでしょう。
 本事案は、その後、循環取引を利用した大がかりな粉飾事件とされ、架空取引指南役(大手商社関連企業社員)への報酬数千万円が支払われていたことでも有名な事件です(同社は2004年5月上場廃止となります)。
 そういえば、この事件は以前に不正事例研究会でも取り上げていましたね。Taku
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Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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