2014年5月 太陽商会の上場廃止

 前回は太陽商会の「不適切な会計処理」に起因して、同社が二期連続債務超過だったことが明らかになり、上場廃止基準への抵触を問題視しました。また、同社の株価の動向についても、同社の開示資料も関連づけながら説明しました。
今回は、視点を若干変えて、「上場廃止理由」を考えてみようと思います。
 以下の①~⑤の「カギ括弧」内の記述は、太陽商会が上場している名古屋証券取引所のセントレックスにおける上場廃止基準の一部です。

①債務超過
 「上場会社がその事業年度の末日において債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき」
 繰り返しになりますが、太陽商会ではこの規定に抵触が問題となっています。会社はこれに関連して、2014年3月11日に「不適切な計処理の判明した事実」を公表しています。

②上場時価総額
 「月平均又は月末時点における上場時価総額が2億円に満たない場合において、9ヶ月以内に2億円以上とならないとき」
 2014年3月31日時点の同社の発行済株数は2,129,100株です。2014年5月16日現在の同社の株価(終値)は67円です。上場時価総額は142百万円→1.4億円です。同社は2013年3月にも「当社株式の上場時価総額について」として、時価総額基準で上場廃止の可能性について開示しています。
 しかし、その後2013年の4月に「当社株式の上場時価総額が1.8億円以上となったことについて」を公表し、上場廃止のおそれがある銘柄から解除されたことを公表しています。
 今後の時価回復の可能性は?上場廃止となれば、そうした淡い期待も無くなるでしょう。

③不適当な合併等
 「上場会社が非上場会社の吸収合併又はこれに類するものとして当取引所が定める行為を行った場合で、当該上場会社が実質的な存続会社でないと当取引所が認めた場合において、当該上場会社が3年以内に上場審査基準に準じて当取引所が定める基準に適合しないとき等」
 この規定はいわゆる「裏上場」に対する規定です。例えば、上場会社が別の会社を買収して、従来から行ってきた事業を中止した場合、上場した会社が事実上消滅する一方で、買収された側の会社が上場を果たしたことになります。これを「裏上場」といいます。こうした潜脱的な行為を許さないために「不適当な合併等」が上場廃止理由とされています。
この点、太陽商会(旧Now Loading)は、2014年2月25日に「実質的存続性の喪失に係る猶予期間入りに関するお知らせ」を公表しています。その中で「名古屋証券取引所からの公表内容」を一部抜粋して、その概要を以下に示します。

・新任代表取締役(S氏)が買収した企業グループは、当社の事業内容と異なり、また当社の規模を大幅に上回る。
・新任代表取締役(S氏)は当社の筆頭株主となる。
・Now Loadingという称号から、新任代表取締役(S氏)が別に代表取締役を務める会社と同一の商号(太陽商会)に変更する。
・創業者である代表取締役(N氏)が代表を辞任する。
・2014年2月25日 創業者である代表取締役が代表を辞任し、新任代表取締役が中心となる不動産分野での売上に経営資源の比重が移行する。(猶予期間はH29年3月31日)
 以上の状況を総合的に勘案すると当社が実質的な存続会社でない。

 要するに、「もともとあった会社は存続せず、買収した企業グループが上場した形になってしまっているから、改めて上場審査をする」ということです。

④虚偽記載又は不適正意見等
 下記の規定も上場廃止に関連して、取り沙汰されますが、監査人による「不適正意見」又は「意見不表明」が直ちに上場廃止となるわけではありません。あくまで「影響が重大であると当取引所が認めた場合」です。
・有価証券報告書等に「虚偽記載」を行い、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めた場合
・公認会計士等によって、監査報告書において「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨が、又は四半期レビュー報告書において「否定的結論」又は「結論の表明をしない」旨が記載され、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合」

⑤その他(公益又は投資者保護)
 「公益又は投資者保護のため、当取引所が上場廃止を適当と認めた場合」
 私が注目するのは、この包括規定です。
 証券取引所は、公益又は投資者保護のために上場廃止を適当と認めた場合には、上場廃止とすることができる訳です。この規定があるにもかかわらず、証券取引所が適時に上場廃止の判断を行わない場合、証券取引所の責任の下で、公益又は投資者保護にならない会社の上場が維持されることにもなりかねません。
 「慎重な判断」と「問題の先送り」とは別であることを強調したいところです。

 果たして、こうした記事を書いている間に、2014年5月27日、「名古屋証券取引所による当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄指定に関するお知らせ」が公表されました。その中の一節です。「直ちに同社株式の上場を廃止しなければ当証券取引市場の秩序を維持することが困難であることが明らかである。」

 この判断が遅かったのではないかという問題は、議論されないのでしょうか?Taku


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2014年4月 太陽商会の不適切な会計処理と株価の推移に思う。

 2014年4月、株式会社太陽商会は「不適切な会計処理についての報告」を公表しました。 同社は、国内で唯一の「セールスプロデュース」を手がける名証セントレックス上場会社です(旧Now Loading)。
 同社の業績(連結経営指標)は、2012年3月期に債務超過(純資産△42百万円)となり、その翌年の2013年3月期に利益50百万円を計上することで債務超過を回避(同年末の純資産+7百万円)したことになりました。
 しかし、実は上記報告書にあるとおり、同社は2013年3月期の売上76百万円、当期純利益及び純資産それぞれ38百万円を過大計上していたので、修正後の純資産は△30百万円となり、二期連続の債務超過に該当します。

 一般に「二期連続債務超過」は上場廃止基準に該当します(セントレックスも同様です)。
 そのため、本事例では同社の上場廃止の可能性が問題となるわけですが、いろいろと同社の公表資料を見ていくと、同社は単に債務超過だけが問題となっているわけではありませんでした。その詳細は次回検討しますが、今回は、やや趣味の悪い検討の方法かもしれませんが、同社の株価の動きと同社の公表した資料との関連を検討します。
 なお、同社は2014年3月31日を基準日として、1株を100株に分割していますが、以下の株価は調整後(分割後)で示します。

1.年初来高値
 2014年の同社の年初来高値は2014年2/24の439円(同日終値423円)です。
 その10日前、2/14に同社は3四半期の短信を公表し、2013年12月末時点で債務超過△32百万円としている一方で、2/19に代表取締役代表が会社を買収し、「連結子会社の異動の見込みに関するお知らせ」を公表しています。これが好感されたのか、2/19の終値278円から2/24の439円まで一気に株価は上昇したのです。

2.株価の下落と上昇
 その後、株価は下落を続け3/4に285円となりますが、3/6に374円まで急上昇します。その原因が3/5に同社が公表した「株式分割」です。上記にも示しましたが、1株を100株に分割することを公表した結果、一気に株価が上昇したのです。
 至極当然の話ですが、株式が分割されたからと言っても、簡単に言えば「1万円札1枚か100円玉100枚か」の相違に過ぎませんから、理論的な株価が変わるわけではありません。しかし株価はそうした理屈よりも、「株式分割」=「所有株数増加」=「好材料」=「買いが入る」=「値が上がる」という思惑が重要なのでしょう。

3.ストップ安
 その後、一進一退の同社の株価は3/11の終値385円から、ストップ安を挟みながら、一気に3/18の107円に急落します。これが冒頭に掲げた「不適切な会計処理についての報告」に関連しますが、3/11に「不適切な会計処理の判明について」及び「当社株式の管理銘柄(審査中)の指定に関するお知らせ」が公表されたことに起因した株価の急落です。
 同社の株はその後も多少の動き(4/7に一時的に200円を超える場面も)ありましたが、ズルズルと下がり続けます。

4.現在の株価
 その後、株価は多少の動きはありますが、2014年5月14日現在の終値が66円(本日の出来高が11,700株=取引総額772千円)です。

 上記に関連して個人的に興味を覚えるのは、同社の不適切な会計処理(売上の過大計上)そのものよりも、証券取引所の対応(上場廃止の判断)と、上記の株価の推移に見られる売買関係者の思惑です。会社の公表する資料一つ一つに市場が敏感に反応して株価が形成される現実があるのです。その会社は、上場廃止のリスクと背中合わせにあって、その株式は監理銘柄とはいえ、市場で平然と売買されている現実に「ババヌキ」に似たスリルを感じざるを得ません。もしかしたらそのリスクは、三競オート(競馬、競輪、競艇、オートレース)に賭けるスリルと同じなのかもしれません。
 「きれいごと言うな。」「株がギャンブルでなければ何なんだ。」
 との指摘も容易に想定できますが、いやいや、そんなことはないでしょう。
 証券市場とギャンブルとが同じだなんて、乱暴な議論です。
 証券市場の健全な発展が、日本経済の基盤であることは疑いの余地はありません。果たして本事例は、日本経済の基盤である証券市場に大きな疑念をもたらしていると懸念します。Taku
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