2014年1月 NEC関連子会社 経理担当者横領15億円

 今朝の日経新聞の社会面でも取り上げられていましたが、ネッツエスアイ東洋株式会社の経理担当者による資金横領が発覚しました。同社は、紙幣識別装置等のマネーハンドリング機器の製造販売を行う会社で、NECネッツエスアイ株式会社の子会社です。
 同社は、もともと「東洋通信機株式会社」として、社歴のかなり古い独立事業系の会社でしたが、平成17年に事業分離により、NECネッツエスアイ株式会社(日本電気株式会社(NEC)の連結子会社(51.42%の株被所有))の資本参加の結果、同社の100%子会社となっています(そのためネッツエスアイ東洋株式会社は、NECの孫会社に該当することになります)。

 今回の事例で個人的に驚いた点は2点です。
 一つは不正の金額です。
 「15億円」というのは、この類いの不正では相当に多額です。
 感覚的な話ですが、マスコミが取り上げる重要性の指標は「1億円」と思います。1億円以上の横領があると新聞記事に取り上げられることが多いのです。また税務の調査でも1億以上の脱税の場合、刑事告訴されるケースが多いように見受けます。過去の不正事例を見るにつけ、組織的な不正は別として、個人的な不正の場合には、せいぜい1億円~2億円で露見するケースが多いように思うのです。それは、不正実行者が隠しきれないほどの金額、又は行き詰まって身動きがとれなくなる金額なのかもしれません。
 しかし、今回の不正は平成17年~平成25年までの間で15億円にまで膨らんでいます。もう少し早く発見できなかったのか?大きな疑問を抱きます。

 また、今ひとつ驚いたのが、不正の手法です。
 もともと個人的な不正は、管理体制の不備を突いた単純な手法が多いことは事実です。今回の不正も「小切手の二重振出・不正な裏書きによる現金化」という単純極まりない手法です。これほどに単純で金額も多額である不正の場合、単純な検証方法(残高証明書と帳簿との照合や小切手の振出控えや当座照合表との照合の他、銀行勘定調整表と上記関連資料との照合等)でも、比較的容易に不正が発覚したはずなのです。
 なるほど会社の指摘の通り、「残高証明書などの偽造」や「不正仕訳」により不正の隠蔽工作が行われていたことは理解します。しかし、それ以上に「不正実行者に経理業務を長年にわたり任せきりにしていた」ということが問題視されるべきでしょう。

 過去の不正事例では、印刷業者に依頼して当座照合表を「巧妙に」偽造する不正事例もありました。つまり不正実行者は「不正隠蔽のためには何でもする」と考えて間違いないのです。そのため、不正を防止発見する立場にある者は、不正が発覚した場合、不正隠蔽工作の悪質さを強調して自らの責任を回避しようとするのではなく、不正を防止・発見するための体制作りを長年にわたって採用しなかったことを反省するべきでしょう。
 特に上記のような単純な不正である以上、経理担当者のローテーションや強制休暇制度、内部監査部門による定期的な預金残高確認等の一般的な手法が確立していれば、十分に不正の防止・発見に寄与するでしょうから、不正実行者に「不正を行っても見つかってしまう」という心理的な牽制を与えることができたと思うのです。
 ちなみに、横領した資金をどのように使おうが、不正事例の研究には寄与しないため、あまり興味はないのですが、この不正実行者は15億円もの資金を競馬に使い込んでいたようです。
 なんとも愚かしい。
 せめて少額でも的中して、一部でも返済できたのであれば良いのでしょうが、きっとこうした人は、たとえ的中しても、「外れるまで賭け続ける」でしょうから、期待はできません。
 同社が公認会計士・監査法人の監査を受けていたかどうかは調べていませんが、外部監査が入っていれば、直接金融機関からの確認状を入手するので、本不正は発覚した可能性は高いと思われます。
 できれば同社の決算資料も見たかったのですが、同社のホームページには決算書の開示はありませんでした。機会があれば、改めて検討したいと思います。Taku
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2014年1月 質問という監査手続(その3) ~怪しい回答

 前回に引き続き、去年のはじめ(2013年1月)の「嘘を見抜く方法」という記事との関連で、「質問」について考えます。質問した結果、「怪しい」「嘘かもしれない」と感じる場合があります。
 これは「不正の兆候」として重要な感覚です。
 仮に不正実行者が質問の対象となっている場合で、不正の有無について質問が行われている場合は、不正実行者は動揺し、不自然な対応をとる場合があります。質問者が不自然な回答に気がつくことは、不正発見の端緒なのです。

・質問を繰り返す場合
 十分に聞き取れているはずにもかかわらず、相手が質問を繰り返してくる場合には、回答者は「どう答えるべきか」を考えている可能性があります。回答者は質問の意図を探りつつ、どう取り繕おうかを考慮していることがあるので、回答の信憑性に注意を要します。
・質問返し
 質問に対して質問で返す場合です。「その時、あなたはどこにいました?」「なぜ私に質問するのですか?」という場合です。「あなたこそ、どこにいたのですか?」という返し方もらうでしょう。素直に答えられない事情があり、質問をはぐらかそうとする意図を感じます。
・忙しい
「すいません。忙しいので・・・。」とその場を去ろうとする対応ですが、怪しいか否かは口調にもよります。事前にインタビューする時間をとってもらって入るにもかかわらず、「急用で・・・」となれば、「都合の悪い場から離れたい」という意向の現れと見て良いでしょう。特に含みがなく、「本当に忙しい」ことも考えられますから、勘ぐりすぎない注意も必要です。
・無関係、無知
「私は関係ない」「知らない」こうした対応も、その言葉にどのような感情が伴っているかによって、質問者が感じ取る「怪しさ」の程度は異なります。回答者が冷静沈着に答えている場合と、明らかに狼狽えて答えているかによって、その回答の真実性を推し量ることは可能でしょう。仮に具体的な質問をする前から、感情的に「私は何も知らない!」と騒いでいるのであれば、何らかの事実を知っているケースが多いと思われます。
・忘却
「覚えてない」これも同様に、感情・口調が重要です。こうした対応には、通常は「それに関連した何かを覚えていませんか?」「何でもいいですから覚えていませんか?」という問いで繋ぐのが一般的です。その上で、「何にも覚えていないといっているでしょう!」「全部忘れたんです!」との感情的な回答があれば、何らかの事実を知っている可能性も否定できません(質問者のしつこさにもよりますが)。また質問内容の詳細度が高まっている状況下で、些末なことは覚えているのに、核心部分になると「覚えていない」と答える場合にも、都合の悪いところだけ隠蔽していると見て取れる場合があります。
・不平や不満
 質問をしている最中に、「この部屋熱くない?」「イスが堅いんだよね。」等、質問者以外の状況に不平や不満を漏らす場合があります。これは質問に対するストレスを感じている証拠で、実は質問者に対する不正や不満の現れと見るか、またははぐらかしか、そのいずれかとみて良さそうです。状況の改善をしてあげるかどうかは別として、不平・不満のあとの質問に対する回答の信憑性には疑問がもたれる場合が多いと思われます。
・妙な改まり方
「分かった。本当のことを話す」との言い回しは、これから話す嘘を信じさせようとする幼稚な手法である場合があります。「実は」は実話ではないことがあるのです。「実は」と改まって話し始めた場合には、真に観念して話しているのか、何とかその場を取り繕うとしているのかを見極める姿勢が重要です。
・無関心、敵対、極端な敬意
 自分が潔白であるにもかかわらず嫌疑が掛けられれば頭に来るのは同然でしょうが、自分に疚しいことがなければ、疑いをかけられた側は「身の潔白を分かってもらおう」と真摯に対応することが建設的です。相応の責任ある立場にある人は、特に感情的になることは損だということを理解していることが多いので、不用意に敵対をしようとは考えないことが多いと思われます。逆に罪を犯している場合には、その発覚を恐れて緊張し、無関心を装ったり、又はぶっきらぼうな態度や横柄な物言いで質問者と敵対しようと考えることが多いようです。さらに、興味深いことに、人によっては、質問者に対して極端な敬意を払い出す不正実行者もいます。「ゴマをする」ことで質問の切っ先を鈍らせようとしている意向が働いているのかもしれません。

 回答者が感情的になっている場合には、一旦、質問を中断することが通常です。回答者が冷静になった時点でアッサリと回答を始める場合も多いためです。また質問を変えたり、回答者を変えたりすることも必要な場合があります。重要なことは無理に質問を続けることで、回答者が感情的になりすぎて修復が困難となることを避けることです。
 質問に行き詰まった場合には、質問する側が黙ってしまう方法もあります。回答者の出方を見るためです。この場合、平気で嘘をつける人は平然としていることが多いですが、「質問者に自分の潔白を理解してもらおう」と考える回答者であれば、質問者の沈黙を不審に思って「どうしたんですか?」と逆に質問してくる可能性もあります。質問者側の沈黙が、時として、回答者側の回答につながる場合もある訳です。Taku


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2014年1月 質問という監査手続(その2) ~質問の種類

 前回に引き続き「質問」という監査手続についてです。
 監査実務界で名著とされる野々川幸雄先生の「異常点監査の実務」(中央経済社)では、一橋大名誉教授の植松正先生の「供述の心理」から、質問の7つの形式を紹介しています。以下、要約して紹介します。
 
総括問
「この訴訟事件について知っていることを述べてください。」
 回答方法を回答者の自由に任せる問形式であり、多くの情報が収集できる可能性がある一方で、総括的な回答にとどまり、具体的・核心部分の回答が得られない可能性もある。
疑問詞問
「この仕訳は、いつ、誰が起票したのですか」
 いわゆる5W1Hの疑問詞を利用した問形式であり、総括問に比べれば具体的な回答が得られる可能性は高く、監査でも多用されている。
認否問
「借入金はありますか」「その領収書は本物ですか」
「はい」か「いいえ」で回答する問形式であり、端的な回答が期待されるため多用されるが、確信のない回答者は「は い」と回答する傾向があることから、暗示性が高いといわれる。
肯定問・否定問
「債務保証していましたね」「その時点で知っていましたね」
 これも「はい」か「いいえ」で回答する問形式であるが、回答者を問い詰める形式となるため、誘導尋問となりやすく、また回答者の反感を抱く原因となる。
選言問
「承認したのは課長ですか、別の人ですか」
 一つの特定した候補とそれ以外とを選別させる問形式であるが、回答方法は二者択一となり、これも上記の認否問と同様、確認のない回答者は「はい、課長です」と回答する傾向があることから、暗示性が高いといわれる。
二者択一問
「次長の指示ですか、部長の指示ですか」
 これも二者択一の回答を求める問形式であるが、二つの特定した候補のいずれかを選択させることで、回答者が誤った回答をする可能性がある。
前提問
「この『横領』に気づかなかったのですか」「この『粉飾』は・・・」
 横領や粉飾について回答者が未確認のまま、回答する場合、それらの前提を肯定したことになる可能性があり、暗示性が高いといわれる。

 上記のうち「総括問」は「開かれた質問」に該当しますが、それ以外は端的な回答を前提としますから「閉ざされた質問」に該当します。以下では、現金出納担当者に質問する場合の例として、二つの質問方法を考えます。
A「現金は毎日、小口現金残高と一致を確認してますよね?」
B「毎日の現金の管理はどうしてますか?」
 Aが上記でいう「肯定問」であり、「毎日一致を確認しなければならない」という質問者の価値意識が回答者に伝わることで、回答者は咄嗟に「はい」と答えることが多いようです。「はい」と答えた上で回答者は「いや、毎日はやってないけど・・・。でもいいか。」と考えたとしても、質問者はその事実を知ることはできません。
 一方で、Bは「総括問」であり、機転の利く回答者であれば「毎日というわけではないですが2~3日おきに残高と確認しています。金種表も作っています。」と答えるでしょう。適切な質問をしない場合、真実を知り得ない場合が多いことに注意が必要なのです。
 また、やや高飛車な話で恐縮ですが、質問する場合には回答者の知的なレベルにも配慮することが必要とされます。
 総括問の場合、相手に裁量がありすぎるため、知的レベルが高くない人の場合には何をどう答えて良いか判別できない場合もあります。そうした場合には「疑問詞問」を中心として「認否問」で補足するような質問が有効です。認否問だけで「はい」という回答が増加し、質問の回答間に矛盾が生じてしまうことも考えられます。
 基本的には、肯定問や否定問は誘導的であるため基本的に使用せずに、また選言問や二者択一問はインタビューの最終時点で確認のために使用される場合が多いようです。インタビューの初期の段階で、選言問や二者択一問を多用すると、前回も指摘しましたが、畳み掛けるような雰囲気から回答者からの心理的な抵抗感を与える可能性も注意が必要ですし、また前提問は質問する側が「前提問となっているかどうか」の配慮が必要となります。
 いずれにしても、質問者は種々の質問方法の有する特徴を理解しておくことが重要でしょう。
 次回は質問の結果「怪しい」と思う場合の例を検討します。Taku
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2014年1月 質問という監査手続 その1

去年のはじめ(2013年1月)に「嘘を見抜く方法」という記事を書きました。
 これに関連して、「質問」について考えてみたいと思います。
 「監査」(Audit)はラテン語の「Audio」を語源として、「質問」という監査手続は基本とされます。他人に質問をして回答を求めるという行為は、人間の情報収集のための基本的な手段なのです。
 一般的に監査では、下記のプロセス(①質問→②回答→③根拠提示依頼)で作業が進みます。
質問者「①なぜこれが増加しているのですか」
回答者「②それは○○があったためでしょう」
質問者「③それでは、その根拠資料を見せてください」
 質問者は回答者の回答について「本当か?」という疑念を抱きつつ上記③を行います。
 回答者が質問者を欺こうという意図がある場合には、③の資料を偽造する場合があります。しかし、たとえ巧妙な偽造が伴っていたとしても、回答者が「嘘」をついている以上、質問結果に関して質問者が何らかの「兆候」を感じ取る場合があります。世の中には平気で「嘘」をつく人もいますが、現実問題として、質問の結果「怪しい」という質問者の直感を端緒として、多くの不正が発覚していることも事実なのです。
 そこで以下では、質問をする場合の注意点について、いくつか紹介したいと思います。

・回答者の目を見ること
 先述の「嘘を見抜く方法」でも紹介しましたが、人は嘘をつく場合、目の動きの他、不自然な動きが伴うことが多いようです。質問者は(威圧感を与えない程度に)回答者の目を見ながら回答を求めた方がよいでしょう。
・書き留めること
 質問が多岐にわたる場合には、回答の正確性を担保するため、メモに書き留める必要があります。質問者がメモを取ることで、回答者には「正確に答えなければならない」という心理的な牽制が働く場合があります。一方で強権的な調査であるかのような圧力を与える場合もありますから注意が必要です。
・ラポールの確立
 ラポールは心理学用語ですが、質問者と回答者との間の相互信頼に基づく協和や調和を意味します。質問者の無礼・無用な質問や、あらぬ嫌疑をかける質問により、回答者は敵対心を抱きかねません。質問する場合には、相手の感情を害さないような配慮が必要です。そのためには、詳細な質問に入る前、例えば以下のように回答者が「はい」で応える質問を行った方が良い、とされます。「寒いですね。」「年末はどこも込んでますね。」という話です(やりすぎると「本題はまだか?」と思われ、逆効果となるので注意が必要です)。
・質問の方法
 様々な質問方法(これは次回のテーマとします。)がありますが、最も基本的な区分は「閉ざされた質問」と「開かれた質問」です。前者は「はい・いいえ」で答えられる質問で、例えば「それは月曜日でしたか?」「場所は会議室ですか?」といった端的な回答を求める質問です。一方、後者は「~について知っていることを話してください」といった質問です。
 多くの情報を収集するためには回答者に自由に話してもらう「開かれた質問」を使いますが、逆に回答者が回答に窮したり、的を射ない回答となったりする可能性もあります。また、閉ざされた質問は、回答者は回答しやすいですが、短時間に多用すると詰問調になりかねませんので、注意が必要です。
・質問をする場合の距離感
 ここでいう距離感には物理的な面と心理的な面とがあります。
 物理的な距離感としては、質問者と回答者との間には1メートル~2メートル程度の距離が通常でしょう。3メートル以上離れると、会話が成立しにくい距離となり、逆に1メートル未満とすると至近距離からの質問となり、回答者に不快感を与えます。
 また、心理的な距離感としては、言葉遣いや間合い・会話のスピードや態度等が関係します。友達同士で使うフランクなしゃべり方をした場合、回答者は抵抗感を示すかもしれませんし、逆に通常よりも畏まって質問すれば、回答者側も神経をとがらせる可能性があります。これは上述のラポールにも関連するでしょうが、回答者の回答しやすい雰囲気を質問者が作ることも重要です。
・複数の回答者に注意
 一般の情報収集のための質問であれば、同時に二人以上に質問をしても特に問題はありませんが、不正が疑われる場合のインタビューに際しては、同時に二人以上に対して行わないことが肝要です。なぜなら、一人の証言がもう一方の証言に影響を及ぼす可能性があるためです。関係者が複数いる場合には、別々にインタビューし、相互に矛盾する点を解消することも、不正発見のための重要な手法です。
 次回は「質問の種類」についてまとめてみようと思います。Taku
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2014年1月 政治資金収支報告書の監査制度について

 2014年1月5日の日経朝刊の社会面「政治とカネ チェック大丈夫?」との見出しで監査人である公認会計士・弁護士等が国会議員の資金管理団体に寄付していることが問題視されています。記事では「監査制度導入に伴って支持者の弁護士らに監査を依頼し、寄付も従来通り受け続けたケースが大半」としています。
 その議員側の考えが二つ示されています。
A「法的に問題はないが、誤解を招かないよう今後は寄付を遠慮しようと考えている」
B「厳正な監査で特に問題はない。監査人の変更も考えていない。」
 結論から申し上げるとAは正解です。Bは残念ながら誤解があります。以下、解説します。

 監査の目的は「信頼の向上」です。
 その目的を果たす上で重要なことが「監査人の独立性」です。
 監査人の独立性は「精神的独立性」と「外観的独立性」とに区分されます。
 精神的独立性は、監査人の「心の状態」としての独立性であり、いかなる圧力や誘惑にも屈しない自己の信念に基づいた公正不偏の態度を意味します。要するに「厳正な監査をする」という監査人の姿勢・意気込みのようなものでしょう。
 一方、外観的独立性は、監査人の「見た目の問題」としての独立性であり、監査対象と経済的・身分的に特別の利害関係にないことを意味し、監査人の公正不偏の態度に関する疑念を持たれない状態を意味します。要するに「厳正な監査をしているように見える」という監査人の外観の問題なのです。
 監査の目的が「信頼の向上」であるならば、監査人は精神的独立性を保持するだけでは不十分であり、外観的独立性をも保持しなければならないのです。

 上記に照らして、果たしてAの見解はどうでしょうか?
 「誤解を招かないよう今後は寄付を遠慮する」としたのは、「信頼が得られない」ことを危惧した見解です。寄付をするような身内が監査をすることで、癒着や馴れ合いがある(実際にあるかどうかは別問題として)ようにみえることが問題視されているわけですから、解決策は以下の二つしかないのです。
① 監査人を変更しないなら、その者からの寄付を遠慮する。(Aが採用)
② 寄付を継続してもらうならば、監査人を変更する。

 一方のBはどうでしょうか?
 この見解は「監査が厳正に行われているか」ということと、「監査が厳正に行われているように見えるか」ということとは、別問題であることが理解されていません。寄付をしていない公認会計士や弁護士が沢山いるにもかかわらず、あえて「寄付をしている者に監査をお願いしている」「癒着・馴れ合いがある」と思われても仕方ないのです。
 重要なことは、事実は別として「どのように見られているか」ということなのです。
 「監査が厳正に行われている」ということは、あくまで監査人と監査を受ける側の当事者間での感想に過ぎません。
 監査が信頼の向上を目的とする以上、信頼を損なう状況は可能な限り避けることが必要なのです。
 「寄付も貰いたいし、監査人も変更したくない。」残念ながら、それでは監査は成り立ちません。
 「独立性なくして監査なし」と言われる所以です。
 監査の目的を今一度、考え直して欲しいと思います。Taku
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2014年1月 不正事例研究会 始動

あけましておめでとうございます。
 旧年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。

 昨年、もっとも印象に残った不正は「テレビ朝日元社員の不正流用」でした。
 これは2013年11月に問題になりましたが、実は全く同様の事件が2006年9月にも発覚しており、いずれの不正も2003年前後頃から長期にわたって行われていたことが指摘されています。仮に2006年9月に不正が発覚した際、「他に同様の不正がないか」との調査を徹底的に行っていれば、もう一方の不正もその時点で発覚したことでしょう。
上記事件は、組織内の自浄作用が全く作用していなかった事件として、その「根深さ」を感じざるを得ません。その根深さの原因を考えてみたところ、「天地人」という言葉が思い浮かびました。
 不正を行う者が最も悪いことは明白です。特に外部者との共謀が加わると、不正実行は容易になり、発覚が困難になります。これは「人」の問題です。
 不正が発生するのは環境に起因することもあるでしょう。番組制作会社とテレビ局という関係から当然に生じうる密接な関係を想定すれば、不正が生じる風土があったと思われます。これは「地」の問題です。
加えて、世間の目でしょう。今回の不正発覚で「けしからん」という報道はあったにしても、2006年に同じ会社で同様の不正があったことを強調する報道はなかったと思います。つまり世間的にも「不正やむなし」という風潮になっているのかもしれません。これは「天」の問題です。

 「天地人」の本来は、孟子の教えにある成功術としての「天の時、地の利、人の和」です。不正実行者を主体とすれば、まさに「不正実行」=「成功」ということでしょうか。
 天の時を待って、地の利を生かし、人の和をもって不正を成就せんとす。
 なんとも厄介な不正実行者の意気込みですが、逆に不正事例研究会としては、こうした不正実行者の考えを念頭におこうと考えます。その上で、今年も不正の要因や防止・発見・是正策について検討・公表していきます。
 同業者、関係者等から「不正事例研究会。見てますよ。」というコメントも頂けるようになってきました。
 これは励みになります。
 できれば「お問い合わせ」でも良いですし、メールtakuya@nakazato-cpa.comでも結構ですので、感想やコメントを頂けると幸いです。

 今年も、不正事例研究会をよろしくお願いいたします。Taku
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プロフィール

TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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