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みずほ銀行 調査報告書からの教訓

(株)みずほ銀行は、9月27日に販売提携ローンでの反社会的勢力との取引について、金融庁から業務改善命令を受けました。これを受け、同行は外部の専門家による第三者委員会として「提携ローン業務適正化に関する特別調査委員会」を設け、10月28日同委員会は調査報告書を取締役会に提出し、同日公表されました。そして、翌日同行は54人に上る処分を発表しました。11月13日には頭取が国会に招致されるまでに至った原因は一体どこにあったのでしょうか。

報告書は事件が起きた原因について、次の8点を掲げています。
①本件取引が関連会社である(株)オリエントコーポレーションが実取引を行っていたことから、自行債権であるという意識が希薄であったこと
②反社会的勢力との関係遮断につき、組織として取り組むことの重要性に対する役職員の認識が不足していたこと
③役職員の退任・異動により課題認識の断絶が生じたこと
④組織としての課題取組の継続性を担保するための制度が機能しなかったこと。
⑤反社会的勢力の問題の経営陣に対する報告の行内ルールが明確性を欠き、行内に十分浸透していなかったこと。
⑥本件取引の所管部署であるコンプライス統括部と他の関連部署との間の連携・コミュニケーションが不足していたこと。
⑦内部監査が十分に機能していなかったこと
⑧金融庁への報告に際して確認不足・不徹底な対応があったこと。

ここでは報告書に記載されていないことで、特に気になること・教訓として受け取るべきこと3点について言及します。

1.リスクコントロール及びその評価
コンプライアンス経営においては、自社のリスクを網羅的に把握し評価することが求められます。リスクの評価に当たっては、リスクの発生頻度と影響の大きさ(金額や事業経営への影響度)のマトリックスにより評価する手法が一般的です。このリスク評価は社会の動向等を反映するため、毎年見直すことも一般的に実施されていることです。
みずほ銀行においても、コンプライアンス・リスクに関して、各部門における取引・事象を網羅的に把握した上で評価を行い、対策を練ってその効果が発現されているかということをコントロールしていたのではないかと、推測されますが、報告書にはこの評価制度についての言及がありません。
本件は、2009年当時はコンプライアンス委員会での審議事項であり、取締役会での報告事項でもありました。報告書は、後任の頭取に引き継ぎが行われなかったことを問題点として指摘し、組織としての取組みの必要性を指摘しています。
ところが、重要事項から除外するときの手続きについての言及がないために、組織としての体制の整備状況を知るすべはありません。コンプライアンス委員会で重要事項としての審議対象としていたのですから、問題が発覚した当初において、リスク評価は高かったものと思われます。
リスク評価を変更するときのルール、コンプライアンス委員会で重要事項として取り上げるべきリスクのレベルについて、制度と運用の実態への言及があれば、他社への教訓となるのにと、残念でなりません。
ある個人が退職すると、あるいはある個人が一職務に忙殺されるとないがしろにされるような事態になった組織・制度こそが、原因として追及されるべきことであったのではないでしょうか。

2.目標管理
目標と対応した成果主義の弊害として、その年度に達成できることを目標とするために、目標のレベルを下げ、実現できないことは目標として掲げなくなる、ということがつとに指摘されています。
そのため役員をはじめ部門長には、各部門・各職員がチャレンジ精神を失わせないように目標レベルを下げないよう、目を光らせることが求められています。
本件について、報告書は当初、頭取やコンプライアンス担当役員が、反社管理の問題として把握していたことに言及した上で、「事後チェックを超えた対応は現実的には困難であるという認識の下、その取組みを放棄したと疑われる事実も認められた」と指摘しています。
これこそが重要性を低くしたこと、リスク評価を低くし、コンプライアンス委員会における審議事項から除外した根本原因ではないのかと、思えてなりません。
実現できない目標は取り上げないということが、コンプライアンス遵守においても起きているとするならば、コンプライアンス遵守をいくら標榜しても実態が伴うはずもありません。目標管理の病弊が現れていないことを切に願うばかりです。

3.役員の責任
報告書は本件について、取締役会において大部の会議資料中の若干の記載によってなされていることから、役員がこれを知悉できないことはやむを得ないこととして、役員への責任について言及しなかったようです。一方で、今後の対策の中で、コンプライス委員会への報告事項(審議・調整事項)を明確にするよう求めています。
会議において、報告されたことの適否を判断するに当たっては、記載されていることの適否にとどまらず、記載されていないことは何か、不足していることは何かを検討することが、出席者に求められていることは言うまでもありません。
限られた時間の中で取締役会等の会議で決するためには、報告すべき重要事項をあらかじめ明確にすることは、当然のことです。それを怠ったことにつき、報告書では役員の責任として指摘していませんが、内部統制構築責任を担う役員の責務であることを自覚すべきでしょう。

                                             Tetsu
 

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2013年11月 テレビ朝日元従業員による不正流用の続報

 今回の不正事例「2013年11月テレビ朝日元社員による不正流用141百万円(以下、「今回の事件」という。)」について、昔、同じような事件がありました。
 「テレ朝、所得隠しで責任者解雇
 これは2006年9月、テレビ朝日が国税局の調査を受けた結果として、架空の制作費を番組制作会社に支払ったことが明るみになった事件(以下、「過去の事件」という。)で、当時の社長が記者会見している写真が掲載されていました。
 過去の事件での架空の制作費による申告漏れ総額は155百万円、追徴税額は重加算税も含めて59百万円になるとしています。
 「国税の調査」で「大物プロデューサー」が「番組制作会社」を利用して「架空の制作費を請求させ」、「旅行や服飾・接待等の奢侈財への費消する」という点で、両者は全く同じパターンです。
 さらに不正発覚後の対応も「懲戒解雇」、「役員の減俸」、「刑事告訴の見送り」、「実名公表せず」という対応に加え、約150百万円の水増し請求で金額的にも酷似しています。
 さらに驚いたのは、不正の開始時期です。
 いずれの不正も2002年~2003年頃から不正を始めているのです。過去の事件は2006年9月に発覚しましたが、今回の事件は、その後も発覚を免れていたことになるわけです。
 過去の事件の発覚時に「他に同様の不正はないか」という調査を徹底的に行っていれば、今回の事件は発覚していたかもしれないのです。なんともお粗末な話です。
 全く同様の不正が起きるということは、「こうした不正は、多少はやむを得ないんだ」という姿勢の現れです。それほどにテレビ会社と制作会社との間の「密接な関係」は根深い問題なのでしょう。

 こうした不正が後を絶たず、テレビ朝日の自浄作用にも頼ることができず、本来の目的とは異なる「国税局の調査」によって、こうした不正が「たまに」発覚するというのも、何とも情けない話です。
 効果的と考えられるコントロールは前回の記事の最後に載せていますが、これを含めて、徹底的なコントロールを構築しない限り、こうした類の不正は無くならないでしょう。
 この不正によって「一体、誰が損をしているのか」を真剣に考えることも重要でしょう。Taku
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2013年11月 テレビ朝日元社員による不正流用141百万円

テレビ朝日は、2013年11月、「当社元社員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。不正実行者は「まさか」見つかるとは思わなかったことでしょう。
 本件が明らかになって、「俺もヤバい」と思っている人も少なくないかもしれません。
 「悪事千里」といいますが、現実は、発見に至らない不正も多いのです。
 本件の発覚の発端となったのは「国税局の調査」ですが、この調査がなければ本件は発覚しなかったかもしれません。いや、きっと発覚しなかったでしょう。
 こうした不正は発見が非常に困難なのです。以下、検討します。

1.事件の概要
 本件は、不正実行者(テレビ朝日元社員;懲戒解雇)が「外部の制作協力会社」に実態のない業務の代金や実態より高額の代金を請求させ、この資金を私的に流用した事件です。期間は2003年11月~2013年3月の約10年間の長期にわたり、その回数は100回ほどで、総額は141百万円でした。1回の請求に付き100万円から200万円といったところでしょうか。

2.発覚の困難性
 今回の不正で注目すべきは「番組制作費」という「漠然とした支出」が不正対象となっている点です。素人目にみても、番組の制作に際しては様々な支出が必要になることは想像できます。番組制作に当たっては、様々な人材・機材が必要でしょうし、旅費交通費、食費その他、およそ関連づけようと思えば「何でも経費」になりそうです。
 加えて注目すべきは、「テレビ朝日」と「制作協力会社」との関係です。
 当然に、制作協力会社は、立場的に「テレビ朝日」には頭が上がらないはずです。
 テレビ朝日の担当者に逆らえば、制作会社は自らの仕事を失いかねませんから「何でも言うことを聞く」状況は容易に想像できるでしょう。制作協力会社は、テレビ朝日の元社員の言われるがママに、架空請求や水増し請求を続けたことでしょう。
 さらに言えば「業界の慣習」もあるでしょう。私の偏見かもしれませんが、芸能・テレビ関係のいわゆる「業界」は、比較的ノリも軽く、安易に不正の片棒を担がせようという雰囲気があったかもしれません。「○○ちゃん、頼んだよ~」という軽いノリならば、「みんなやっていることだ」という正当化が働いてしまう虞があります。
 上記はあくまで仮の話ですが、上記のとおり「何でも経費になる」「相手は言われるがママ」「軽いノリ」であるならば、今回の不正実行者に限らず、他の真面目な社員であっても、同様の不正を行ってしまうかもしれません。

3.なぜ発覚したのか
 「国税局の調査だから」といっても過言ではないでしょう。税務調査では、「反面調査」という強力な手段を採ることがあります。「怪しい」と思った取引について、相手方の会計処理を調査しに行くのです。
 これも想像の域を超えませんが、本件で言えば、調査対象であるテレビ朝日の「仕入、経費が架空でないかどうか」という問題意識を国税局はもっていたはずです。そのため取引の相手方である外部制作会社側を調査対象として、テレビ朝日側の仕入、経費に該当する「売上、収入」があるかどうかを調べたはずです(こうした取引の相手方の処理から裏付ける調査方法を反面調査といいます。)
 テレビ朝日が支払っているはずの制作費について、番組制作会社側で売上・収入として計上されていない場合、「仕入、経費が架空である」すなわち「テレビ朝日は税金をもっと払え」という理屈が成り立ちます。
 税務調査は「正義のために、不正を発見して悪を挫くこと」を目的としていません。
 あくまで「課税の公正性」の観点から、課税所得の過少申告の有無を調査しています。
 その税務調査の副産物として、「誰かがその制作費を不正に取得している」という疑いが明らかになったわけですから、不正実行者としては「税務調査さえなければ見つからなかった」「不運にも見つかってしまった」と考えているかもしれません。

4.テレビ朝日が公表した再発防止策について
 同社は今後の再発防止策を三つ掲げています。
 「①制作費監査チームの新設」及び「②予算執行の詳細に把握する監督者の設置」は、ある程度の不正の抑止力となるでしょう。こうしたコントロールは、下記の③も含めて、明示的にも黙示的に「君たち(社員)は見張られているんだ」というメッセージになりますから、牽制効果が期待できます(しかし予算と実績との整合性を合わせるような予算消化型の水増し請求については機能しない可能性があります)。
 一方で、下記の「③コンプライアンス誓約書を新設」はどうでしょうか?
 「『制作協力会社』から、架空請求書を発行するなどして、当社社員の不適切な予算執行に協力しないよう、誓約書を提出していただきます。」
 いや、矛先を向ける順序が違いませんか?
 まずは、テレビ朝日の社員(番組制作に係る者)から「不適切な予算執行はしない」という誓約書をもらうのが「先」でしょう。その上で、制作協力会社からも誓約書を入手するのは理解できます。しかし、番組制作会社からのみ誓約書を入手するということは、もしかしたら「今回の不正の原因は、テレビ朝日の社員ではなくて、外部の番組制作会社にある」と考えているのかもしれません。また、それほどに番組制作会社の立場は弱いことの現れなのかもしれません。
 むしろ番組制作会社に対する誓約書の提出も含め、なんでも言うことを聞かせることができるのであれば、以下のようなコントロールも考えられます。例えば、番組制作会社の決算日をテレビ朝日と一致させ、制作会社から収入の一覧を含む決算書を提出させ、当該資料とテレビ朝日側の「番組制作費」と照合するコントロールです。直接的でしょうが、やりすぎでしょうか。
 
 最後に、不正を実行するかもしれない社員から、「私は不正を実行しません」と予め一筆取る方法は、非常に地味な方法と思うかもしれません。しかし、実際は非常に有効な方法なのです。「予め」サインしたことが、その人の心理的な牽制となって、不正の実効を抑止したという有力な実験結果もあるのです。
 可能であれば毎年(番組制作会社からではなく)社員から誓約書を取るのはどうでしょうか?Taku
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2013年11月 サニックス子会社での売上の架空計上と期間帰属誤り

 太陽光発電システムの施工販売、環境衛生事業を手掛ける株式会社サニックス(東証一部、福証)は、「当社連結子会社の従業員による不正行為について」を公表しました。
 不適切な会計処理の概要は以下のとおりです。
(1)特定の従業員による架空売上計上
 産業用太陽光発電システムについて、施工の実態がないにもかかわらず売上計上していた(1件100百万円)。
(2)売上高の期間帰属の不適正計上
 7月に計上すべき売上高を6月に早期計上していた(13件173百万円)。

 上記の不適切な会計による同社の第1四半期(2013年4月~6月末)連結数値への影響は以下のとおりでした。
・売上高(誤 16,027百万円→正 15,753百万円(274百万円(1.7%)過大計上))、
・経常利益(誤 1,015百万円→正 924百万円(90百万円(9.7%)過大計上))
・当期純利益(誤 830百万円→正 778百万円(51百万円(6.5%)過大計上))
 また、年度の数値(2013年3月)と比較すると売上高43,366百万円(274/43,366=0.6%)、経常利益1,788百万円(90/1,788=5%)でした。
 一般に、重要性の基準値は税前利益の5%を利用しますから、本件については、「ギリギリ重要性あり」と判断したのかもしれませんが、状況如何によっては「重要でない」と判断することも考えられたのではないかと思われます。
 また、上記事実を踏まえて同社は、2013年3月の内部統制報告書について「内部統制は有効」から「内部統制は有効でない」と訂正しています。

 本不正発覚の発端は、内部監査室への匿名の通報だったようです。
 きっと社内事情に精通している者が、その正義心に駆られて通報したのでしょう。仮にそうだとすれば、不正を許さない組織風土による「自浄作用」が働いたと評価することもできるでしょう。
 確かに不正が発生したことは不幸なことですが、今回の不正をきっかけとして、同社はより厳密な業務プロセスを構築しています。下記は同社が公表した再発防止策としての内部統制の改善策の一部ですが、いずれも具体的かつ直接的であり、有効な手法と言えるでしょう。他社でも参考になるコントロールもきっとあると思います。
・売上計上の必須書類に施工行程ごとの現場写真と「工事完了チェックシート」を追加する。 → 写真添付は有効でしょう。偽装は困難です。
・関連書類の作成を担当する際、「契約書」は営業職、「施工完了報告書」工事現場写真、「工事完了チェックシート」は技術職が担当する。
 → 営業職と技術職との分掌により相互牽制が期待されます。
・本社お客様相談室から契約者に対して契約締結後及び施工完了後にお礼の電話をする
→ お客様と管理部門とが接触することは、不正を行おうとする営業職にとって大きな心理的牽制効果が期待されます。

 上記事例は、不正発覚を契機として管理体制が充実強化された、典型的な「良い例」といえるでしょう。加えて、内部監査室への匿名の通報が10/7、不正行為の公表が11/7で、訂正報告等の公表が11/12でした。この早期対応も評価できるのではないでしょうか。
 同社では、今後、同様の不正は発生しないことでしょう。Taku
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2013年10月 東芝医療情報システムズの不適切な会計

 2013年10月30日、東芝情報システムズ株式会社(以下、TSMED)は、「当社における不適切な会計処理」を公表しました。TSMEDは、東芝メディカルシステムズ株式会社(以下、TMSC)の子会社(98%被所有)で、TMSCは、東芝の100%子会社ですから、今回、不適切な会計処理を公表したTSMEDは、東芝本体の孫会社になります。
 その不適切な会計処理の手法は「資産の過大計上」であり、売上原価や費用、損失として計上すべき「仕掛品」「ソフトウェア」「ソフトウェア仮勘定」を資産計上するという、単純な手法です。その金額は2006年度~2012年度の間で、9,863百万円とのことですが、本事例で気になった点は以下の三つです。

 ①TSMEDの設立が2004年4月でした。
 その後、2006年度から同社は粉飾に手を染め、以降ずっと粉飾を続けてきたことになります。「粉飾するために設立された会社」であるはずないのでしょうが、なんとも首を傾げたくなる会社です。
 ②ホームページを見ると同社の資本金48億円とありました。
 資本金5億円以上であれば、非上場でも会計監査人の監査が必要となります。こうした単純な不正ならば、会計監査人が発見する可能性が高いでしょうし、果たして会計監査人はなぜこれを看過したのか?と思ってよく見ると「資本金4.8億円」でして、私が小数点「.」を見落としておりました。すいません。
 会計監査人を設置しないために資本金を5億円未満とすることは良くある話です。
 親会社のTMSC及び東芝本体は当然に、会計監査を受けているはずですが、TSMEDはその規模からして「重要性のない構成単位」として、監査の対象から外されているのでしょう(重要性の話は後述します)。
 ③親会社の指摘で不正が発覚しています。
 親会社が指摘した「資金収支の過度の悪化、仕掛品勘定の金額の増加等」は、財務数値の推移を見れば直ちに把握できるはずです。気になるのは「なぜ、今まで(2006年~2012年)気付かなかったが、今回(2012年)気が付いた」のか?です。
 粉飾の額が次第に膨らんでいき、金額的な重要性が高まっていったことは容易に想像できるのですが、その裏には「実はもう少し前に気がつくことはできなかったのか?」という疑問が残るのです。

 ちなみに今回問題となった金額は、上述したとおり9.863百万円でした(仮に現金とすると1千万円を1kgとすれば約1トンにもなる金額です)。資本金480百万円のTSMEDにとって重要性はあることは間違いありませんが、親会社のTSMED(売上高277,450百万円、経常利益22,889百万円(2013年3月期))からしても、単純に利益との比率で見れば9,863/22,889=43%となり、相応の重要性が認められると思います。(ちなみに、東芝全体の売上高5,800,300百万円、事業継続利益155,600百万円(2013年3月期米国基準)ですから、重要性は乏しいでしょう。)
 
 最後に、同社が公表した再発防止策です。典型的な不正防止策ばかりですが、いくつかコメントします。
1.人事ローテーション
 今回の不正の原因は、取締役管理部長と経理グループ長が「長年」経理業務を行っていたこと捉えているようです。確かにその通りでしょうが、そもそも同社は少人数の会社(約200名)である以上、社内でローテーションすることは難しいことでしょう。
 もちろん「東芝グループ内でローテーションを実施する」ことは理想的であって、それに越したことはないのですが、現実問題として、「人事」は不正防止の観点からのみ検討されるわけではないので、なかなか難しい面もあるでしょう。少なくとも、一般の中小企業ではなかなか難しい方法かもしれません。
2.役職員の会計に関する知識・能力の強化
 個人的には、これこそが最も重要だと思いました。
 これに加えて「5.監査役監査の充実」を再発防止策として掲げていますが、両者を切り離さない方が良さそうです。監査役は取締役を、取締役は他の取締役を、それぞれ監視する立場にありますから、要するに「役員間の相互牽制」が重要であり、より具体的には「会社役員らが自社の数値を丁寧に見る」だけでも重要なコントロールになるはずなのです。
 この点、本報告書の中に「(不正を働いた)取締役管理部長以外の取締役や幹部職員が経理についての十分な知識を有していたとは言いがたい」という記述がありますが、東芝グループ内には優秀な人材が多くいるはずでしょう。何ともお粗末な話です。
3.コンプライアンスの意識の徹底
 同じく同報告書の中に「上層部の言動で従業員に示す」「コンプライアンス研修の機会増加」とあります。確かに、不正の再発防止策としての一般論としては頷けますが、本不正事例では、その上層部自らが不正を行ったわけで、従業員からすれば納得がいかない話でしょう。
4.内部通報制度の改善
 これも一般論として良く耳にしますが、内部通報制度はうまく機能させるには相当な工夫が必要なようです。この点は改めて検討しましょう。

 私が提唱したい再発防止策は一つあります。
 あと2百万円増資することです。そうすれば資本金5億円以上となり、会計監査人の設置義務が生じますから・・・。
 以上、やや長くなりましたが、本不正事例で最も印象に残ったことは一つです。
 当たり前ですが、「東芝は大きい」ですね。ちなみに私もTOSHIBAのdynabook愛用です。Taku
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2013年11月 雪国まいたけ(その3)不適切な会計処理(広告宣伝費)

 前回に引き続き、「雪国まいたけ」の不適切な会計処理について検討します。
 今回、違法配当の問題も絡んでいますが、具体的に問題となった「不適切な会計処理」は以下の三点でした。
①過去に取得した土地の資産計上額の妥当性(土地仮装計上716百万円)
②一部事業用資産の減損について(減損損失非計上470百万円)
③過年度における広告宣伝費の会計処理について(不当な繰延処理180百万円)

 本稿では、上記の③に焦点を絞ります。
 ③の問題は、広告宣伝に係る契約(733百万円)について、会社は契約期間である30ヶ月(24百万円/月×30ヶ月=733百万円)で按分計上していたところ、本来は具体的な作業の大部分が完了した2012年3月期に費用計上すべきとされています。
 この点について、同社の公表した報告書の記述の抜粋(一部要約)を引用し、それに個人的なコメントを付すことで、その不合理さを検討します。

「当社に保管されている契約書(写し)では、具体的な業務の内訳と対価の対応関係は記載されていない」
→(コメント)
 何億ものお金を支払うのに具体的な業務内容と対価の対応関係がハッキリしないのは不合理です。むしろそれが分かると一括費用処理が求められるから、隠蔽されたと考えるのが合理的ではないでしょうか。今回の社内の調査では、広告代理店であるD社からの当時送信されたメールデータでその内容を確認したようですが、なぜ契約当時に、具体的な業務の内訳と対価との対応がハッキリなかったのか、理解に苦しみます。

「広告宣伝に関しては、社長がリーダーとして先頭指揮して進めたプロジェクトであるが、担当者は、分割計上を前提に画策したものと認められる。担当者の行動は、経営者のトップの意向を付度し無理でもそれに応えようとしたものと考える」
→(コメント)
 この辺りの表現は読み手を誘導しているように読めます。
 「経営者のトップの意向」は「分割計上であり、一括計上ではない」ことは、明記はされていませんが、確かでしょう。この点、読み手が知りたいのは、「末端の担当者がどのように考えたのか」ではなくて、「社長から『分割計上』に係る直接的な指示があったかどうか」です。少なくとも社長からは細かく事情聴取しているはずですから、「社長が直接的な指示を行っていないことは明らかである。」と記述することもできたはずです。それを明記せずに、暗黙裏に上記記述に留めたのは、「嘘は書けない」という心理が働いたからと考えるのは、考えすぎでしょうか。
 いずれにしてもこの記述からは、未だに前社長に大きな影響力があると感じざるを得ません。

「広告宣伝費の処理に関しては、・・・担当者任せに行われ、上司・・・の確認手続きがなされなかったことにより不適切な会計処理を見落とす結果となった」
→ この記述が最も不合理に感じました。
 社長案件でプロジェクトが進んでいるにもかかわらず、末端の担当者が独断で会計処理を決められるはずはありません。逆に末端の担当者が、あるべき会計処理として2012年3月に733百万円の広告宣伝費を「一括計上」し、赤字幅がさらに大きく膨らんだとしても、それも見落とす結果となったのでしょうか?どうなんでしょうか?
 会計処理を考慮することなく、733百万円もの契約をする経営者はいません。
 「会計処理は担当者に任せていた」では、筋が通るはずはないのです。

 最後に同社は、上記の問題を公表する前に、2012年3月期に大幅な赤字転落した原因を三つ示していますので、それを紹介します。
・東日本大震災による風評被害
 →確かに風評被害は、過去、現在及び将来に関係する、大きな問題でしょう。
・ぶなしめじ工場の立ち上げ
 →新規工場の立ち上げは多くが固定資産計上されますが、人件費等の経費もかさむことから、確かに業績に与える影響は少なからずあったのでしょう
・過去の決算における黒字決算の維持の反動
 →これはどうでしょうか?
 「黒字を維持するため」→「費用とすべきものを資産としていた」→「資産が一気に費用となった」ということです。この三つ目の理由は、そもそもが粉飾していたことを認めているような記述に読めてしまうのですが、どのように感じるでしょうか?
 なお、全然関係ないかもしれませんが、同社は、2013年3月期に固定資産の減価償却方法に係る会計方針を定率法から定額法に変更しています。Taku
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2013年11月 雪国まいたけ(その2)不適切な会計処理の具体例

 前回に引き続き、「雪国まいたけ」の不適切な会計処理について検討します。
 今回の仮装経理は、2012年3月期の違法配当の問題も含まれますから、今後の法的な動向も気になります。
 しかし、本稿では以下の①~③の具体的な「不適切な会計処理」に焦点を絞って検討しましょう。
①過去に取得した土地の資産計上額の妥当性(土地仮装計上716百万円)
②一部事業用資産の減損について(減損損失非計上470百万円)
③過年度における広告宣伝費の会計処理について(不当な繰延処理180百万円)
 それぞれ、どのような会計処理だったのでしょうか。監査上の対応をも含めて検討します。

①過去に取得した土地の資産計上額の妥当性(土地仮装計上716百万円)
 これは1995年まで遡る「昔の話」です。
 社内の関係者に対して事情聴取するにも、既に退職しているか、又は記憶が明確でないため、具体的経緯は不明な点が多いままのようですが、同報告書で示されている以下の事実関係からすれば、あるべき会計処理はハッキリしています。
 同社は1995年から関西地区の生産・物流拠点とするため、近江八幡市の土地開発を進め、716百万円を外部の会社に手付金等として支出し、建設仮勘定としていました。
 ところがその後、3年後の1998年にこの進出計画を中止します。
 この時点で、上記の建設仮勘定の回収可能性を検討して、回収可能性がなければ全額損失とする必要があったわけです。しかし「リーダーシップの『暗黙』の重圧」により、業績を仮装するために建設仮勘定のまま未処理とし、その後、まったく別案件の土地開発に上記の建設仮勘定716百万円を土地として忍ばせた形としたのです。
 旧来の土地開発と今回の土地開発とに関連性がない以上、両者を同一視して土地勘定に計上するのは問題があります。正に仮装経理です。
なお監査法人は、2005年3月期に変更しており、当該建設仮勘定710百万円の処理については、会社は特に監査法人に説明をせず、また監査法人の引継事項でもなかったので、問題にはならかったようです。
 土地勘定は減損の対象にはなりますが、そもそも時価で評価するものではありませんし、特に昔の会計処理について、過去に遡ってその当否を検証することには限界がありますから、会社側が特に説明をしない限り、本件を問題視することは困難だったかもしれません。

②一部事業用資産の減損について(減損損失非計上470百万円)
減損損失の認識に際しては、金額的にも重要なケースが多いだけでなく、将来の利用見込や将来キャッシュ・フロー見込等の将来の事象に関連するため、主観的判断や恣意性が介入しやすく、会計上も監査上も慎重な判断が必要とされます。
 この点、同社の報告書では、減損会計導入時の減損処理の要否の判断に誤りがあったとし、「日高配送センター及び日高工場(81百万円)」と「西新宿YMビル(344百万円)」については、当時の利用状況や、その後の利用目的などからして、平成18年3月期に減損処理すべきところ、これを減損処理していなかったとしています。その後、毎期、減損の要否を見直すとして、2014年3月期の第1四半期末までの累積で470百万円の減損損失の過小計上(これに伴い減価償却費の過大計上11百万円)がなされているとしています。
 監査上も相応の検証を行ったと思いますが、同報告書では、監査法人に対しては、減損回避のため具体性を欠く将来の利用見込の説明等を行っており、また、一時しのぎの利用実績を仮装したり、固定資産の活用方針を取締役会で取り上げたりしていたとの指摘もありました。
 この辺りの記述から、社長を始めとして取締役会全体が減損回避措置を講じていたことになり、組織的な粉飾の疑いが色濃く感じ取ることができます。

③過年度における広告宣伝費の会計処理について(不当な繰延処理180百万円)
 上記2つ以上に不透明さが拭えないのが本件です。
 「不当な繰延処理180百万円」としていますが、実際の広告宣伝に係る契約金額は733百万円でした。会社はこれを契約期間である30ヶ月(24百万円/月×30ヶ月=733百万円)で按分計上していましたが、本来は具体的な作業の大部分が完了した2012年3月期に費用計上すべきでした。
 同社の2011年3月期の経常利益(連結)は906百万円(黒字)に照らして、本件の契約金額は733百万円は、相当多額です。また「社長がリーダー先頭指揮して進めたプロジェクト」とされていますから、なおさら「重要なプロジェクト」だったはずです。
 ところが、報告書の以下の記述を見る限り、社内の管理資料の保管も不十分で、上司から担当者への指示も杜撰でした。この不合理さが最も気になるのです。
 次回は、上記の広告宣伝費にかかる報告書の記述の抜粋(一部要約)を引用して、その不合理さを検討しようと思います。今回は、久々の大作になりました。Taku
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2013年11月 雪国まいたけ(その1)。不適切な会計と代表取締役の辞任

 2013年11月、キノコ類の栽培・販売の雪国まいたけ(東証2部)は、「社内調査委員会の調査報告書の受領及び当社の対応」を公表しました。これに伴い「強くなりすぎたリーダーシップ」を発揮する代表取締役は、経営責任をとって辞任しました。
 ことの発端は、退任した取締役からの「過去の会計処理に係る疑義」の告発でした。
 具体的な「不適切な会計処理」(個人的には「仮装経理」や「粉飾」とした方が、その重要性が伝わると思いますが)の問題は、以下の三つです。
①過去に取得した土地の資産計上額の妥当性(土地仮装計上716百万円)
②一部事業用資産の減損について(減損損失非計上470百万円)
③過年度における広告宣伝費の会計処理について(不当な繰延処理180百万円)
 上記の仮装経理の結果、平成24年3月 は配当原資はなかったことになります。
 その結果、平成24年3月期に実施した株主配当金133百万円は、全額、違法配当に該当します(違法配当となれば、株主に対する返還請求や、取締役の連帯責任の問題も生じます)。本件は、ただ単に取締役を辞任すれば足りる単純な問題ではないのです。
 今回は、本件の概要のみを扱い、次回、上記の仮装経理の詳細について検討します。

1.事件の経緯
 今回の事件の経緯を簡単に示すと、以下のとおりです。
・ 2013年6月、退任した取締役からの告発(過去の会計処理に係る疑義の指摘)
・ 2013年8月、証券取引等監視委員会による立入調査
・ 2013年10月、同委員会からの指摘等を踏まえて社内調査開始
・ 2013年11月、今回の調査報告書の公表及び代表取締役辞任
(今後、過年度決算書類等の修正を行う予定)

2.同社の業績の推移
 同社の有価証券報告書の経営指標の推移を見ると、同社の業績は2011年3月期まで順調に推移しています(推移しているように見えます)。同社の連結売上は約26,000百万円前後で推移し、利益はやや波がありますが、2011年3月期は906百万円の経常利益を上げています。これが2012年3月期に3,247百万円の経常赤字、2013年3月期には1,384百万円の経常赤字となっており、急激に業績が悪化したように見えます。
 この点、同社は2012年5月に業績予想修正を行っており、2012年3月期の決算数値に関して、「米国子会社の工場建設延期に伴い、固定資産の減損損失410百万円(連結)」と「これに伴い、米国の関係会社株式の評価損592百万円(単体)」を計上することを公表しています。
 この業績予測の甘さも今回の事件の兆候と捉えることもできるでしょう。
 以下、公表資料に基づいて、今回の不正事例を検討します。

3.不適切な会計処理の原因は「リーダーシップ」と「コンプライアンス意識の欠如」
 辞任した代表取締役は「強いリーダーシップ」、「強くなりすぎたリーダーシップ」と表現され、かなり大きな影響力を有していました。詳細な会計処理は次回検討しますが、いずれも「業績を悪化させてはならない」という考えが強かったことが原因と考えられます。
 こうした社長の考え方は、社風はもとより、幹部職員や末端の従業員の考え方にまで浸透するものです。以下、同報告書で示されている行動指針を紹介します。
 「私たちはできない理由を探しません!できる理由を見つけます!」
「私たちは妥協しません!許しません!」
 多分にこの行動指針は、辞任した代表取締役が作ったのでしょうか?分かりませんが、この行動指針を見る限り、何か「ただならぬ雰囲気」を感じ取ることができます。
 もちろん善意に解釈すれば、「言い訳ばかりを探すのではなく、積極的に「できる」ことを考えろ」ということでしょうし、「妥協するな。ガンバレ」と理解することもできます。
 しかし、世の中には「できないこと」や「してはいけないこと」もあるわけで、それも含めて「何でもできる」としてしまえば、「無理が通って道理が引っ込む」ことになるでしょう。
 「妥協しません!」というのも耳障りはいいですが、「現実を直視しません」と読むこともできます。果たして「許しません!」となると、もう訳が分からなくなって、何に対して怒っているのか、どうにも二の句が継げません。
 上記の行動指針が、幹部社員や従業員のコンプライアンス意識を乏しくした要因となったことは間違いなさそうです。
「業績を維持するためには何をしても良い」
「業績悪化は許しません!」
 ということで、仮装経理が行われたと考えることができます。
 次回は、本事例をもう少し具体的な経理処理を検討したいと思います。Taku
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