2013年10月 不正リスク対応基準

 最近忙しく、更新が遅れておりました。
 「これだ!」というネタも少なかったのですが、今回は平成25年3月に企業会計審議会が公表した「不正リスク対応基準」についてです。
 「不正リスク対応基準」は、従来の監査実務における不正への対応について改めて注意を喚起するものであって、現実的に監査実務に大きな影響を与えないものと考えていました。しかし、これに伴い改正された監査基準委員会報告書等をよく読んでみる、と相応の手続やそれに応じた文書化をしておかないと「不正リスクに適切に対応していない」という問題が生じることになりそうです。
 無論、従来から不正については職業的懐疑心を高めて対峙することが求められているのですが、今回の改正は、虚偽表示の可能性の高まりを下記で示すように「兆候」→「示唆」→「疑義」と表現して、それぞれの可能性に応じて監査人の行うべきことを示しています。
 
(1)不正による重要な虚偽表示の「兆候」を示す状況
(2)不正による重要な虚偽表示を「示唆」する状況
(3)不正による重要な虚偽表示の「疑義」

 以下、やや教科書的な記述になりますが、それぞれについて説明します。

(1)不正による重要な虚偽表示の「兆候」を示す状況
 これは、不正による重要な虚偽表示が行われている可能性を示す状況を意味します。
 監査人が監査手続を実施した結果,当該状況を識別した場合,監査人は,アサーション・レベルの不正による重要な虚偽表示リスクに関する評価が「依然として適切であるかどうか」を判断する際にこれを考慮することが求められます。
(2)不正による重要な虚偽表示を「示唆」する状況
 これは、不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況のうち,不正による重要な虚偽表示が行われている可能性がより高いものとして不正リスク対応基準で取り扱われているものを意味します。この状況が存在する場合,監査人は,経営者に「質問し説明を求める」とともに,「追加的な監査手続」を実施することが求められます。
(3)不正による重要な虚偽表示の疑義
 これは、不正による重要な虚偽表示の疑いが高いと監査人が判断した状況をいい,以下のいずれかに当てはまる場合が該当します。
①不正による重要な虚偽表示を示唆する状況について,関連して入手した監査証拠に基づいて「経営者の説明に合理性がない」と監査人が判断した場合
②識別し評価した不正による重要な虚偽表示リスクに対応して当初計画した監査手続を実施した結果,必要と判断した追加的な監査手続を実施してもなお,不正リスクに関連する「十分かつ適切な監査証拠を入手できない」場合
 この「疑義」がある場合には、不正リスク評価とその対応の見直しが求められるとともに、想定される不正の態様等に直接対応した監査手続の実施及びその結果、結論及び重要な判断の文書化が求められます。
 
 以上要するに、監査人はまず「兆候」を見落とさないことが求められます。
 その上で、その兆候が「示唆」する状況に該当するかどうかを判断し、「示唆」する状況であるならば、質問や追加手続を実施しなければならず、その結果、「疑義」に該当するかどうかを判断することになるわけです。
 問題は、「兆候」か「示唆」か「疑義」かの判断でしょう。
 一部、細かく事例は示されてはいますが、なかなか実務では困難な判断が伴うことでしょう。
 今後の実務動向が気になります。Taku
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