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2013年9月 那須電機鉄工の元従業員不正。領収書偽造で約2億円横領

 鉄塔メーカーの那須電機鉄工株式会社(東証2部)は「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 不正実行者は、八千代工場に勤務していた事務担当者で、消耗工器具備品の購入に関して領収書を偽造して会社資金を着服し、2006年10月~2013年8月までの約7年間での着服総額は約2億円です。
 「社内・社外を含め共犯者はいない」とすれば、不正実行者は、相当大胆に不正を繰り返していたことでしょう。しかし「領収書の偽造」という非常に単純な手口で、長年気がつかなかった理由が気になります。加えて、なぜ、今回発覚したのか、という点も気になります。
 今回発覚した理由に、早期発見のためのヒントがあると思います。
 今後は「社内調査委員会を設置し、外部専門家の協力を得て調査して」いくようですが、その調査結果の公表を待ちましょう。

 さて、本件とは無関係ですが、領収書偽造による不正の話です。
 領収書を経理に持参して、立替えた経費を精算するプロセスはあります。
 仮に「10,000円」の領収書を「70,000円」と改竄して、収入印紙も忘れずに貼付して、消印を適当に押して経理に持って行くとどうなるか?
 ウルサイ経理ならば「高いわね」と怒られそうですが、事情の知らない担当者であれば、問題なく精算されそうです。この場合、自分は10,000円しか立て替えていないのに、会社から70,000円貰うことになります。
 誰もが思いつく単純な、しかし悪質な不正です。
 一般的に領収書は「複写式」になっています。
 お客が受け取るのは「複写された側」ですから、これを改竄するには、そのためのカーボン紙等の不正用具を持つ必要があります。これとは別に聞いた領収書の偽造の事件では、不正実行者は、様々な領収書に対応できるように、様々な種類のカーボン紙を机の中に忍ばせていたようです。
 大きく水増しするとバレるでしょうが、少額な不正であり続ければ、永遠に気がつかないかもしれません。また、業務プロセスが末端になればなるほど、役員等の上層部からは目が届きにくくなります。

 しかし、本件では7年間で2億円もの不正です。
 不正の実行方法は上記と異なるかもしれませんが、巧妙に領収書を偽造していたとしても、「そうした不正が起こるかもしれない」という問題意識があれば、事前に防止又はもう少し早期に発見できたかもしれません。
 例えば、少額な精算はやむを得ないにしても、一定額以上(一定期間内との制約も併せた方が良い)の精算は、稟議を含む事前申請とした方が良いでしょうし、事後的にでも承認を求めることも考えられます。また予算と実績との慎重な比較や、そもそも予算に不正額が織り込まれている可能性にも配慮して、慣習的になされている相対的に多額の支出について、無駄な支出がないかどうかを予算策定時に注意することも有効です。
 ちなみに同社の2013年3月期の連結ベースでの財務数値は、売上は21,281百万円、税前利益が224百万円、当期純利益は73百万円でした。純資産が13,538百万円ですから、200百万円は重要性ないと判断したのでしょう。
遡及修正は行わないこととしており、2014年3月期に与える影響も軽微なようです。
 なるほど遡及修正したとすれば、200百万円の不正支出は7年の各期に分散されますから、各期における重要性は乏しくなるでしょう(旧態の開示方法では「前期損益修正損」となり、200百万円が一気に特別損失となる可能性もあり、なかなか「重要性なし」で逃げられないような気もしてきます)。
 加えて、他に同様の不正がなかったかどうかの検証は、なかなか困難を極めるかもしれません。
 なにしろ「領収書の偽造」ですから、領収書の綴りを一つずつ見ていく作業も必要になるかもしれません。考えただけでも気が遠くなる作業です。
 いずれにしても、会社にとっては、金額では計り知れない痛恨の不正だったことでしょう。

 全然関係ありませんが、私は東西線をよく使います。東葉高速鉄道もよく使います。
 南砂町、八千代緑が丘。よく使います。
 そういえば、NASUのロゴもよく見かけます。Taku

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2013年9月 カネボウ化粧品「都合の悪いこと無視」に思う

「Kanebou.For beautiful human life!」
 昔、よく耳にしたキャッチ・フレーズです。
 カネボウといえば、2005年に発覚した巨額の粉飾事件が記憶に新しいところです。
 「循環取引(宇宙遊泳)」や「連結外し」によって、業績を嵩上げした挙げ句、同社は破綻しました。同社を監査していた4大監査法人の一つ「中央青山監査法人」が解体される要因にもなった事件で、担当の公認会計士が逮捕されたことや、当時の公認会計士協会の会長宅に家宅捜索が入ったこと等、相当にショッキングな事件でした。
 その後、カネボウの化粧品部門は花王の傘下に入り、堅調に業績を伸ばしてきていました。
 しかし、今回のロドデノールの白斑事件です。
 10ヶ月も対策を取らずに被害を拡大させたことで、カネボウのブランドイメージの悪化は避けられないでしょう。
 本件も前回に引き続き、本来、不正事例研究会で取り上げる性質の事件ではありませんが、社会に与える影響の大きさや、発覚までの経緯に学ぶべき点があるため、取り上げることとしました。
 
 同社の公表資料では「白斑様症状の発症者被害が拡大したのは、お客様の声や専門家のご意見、社員の声を真摯に捉え、集約し、迅速に対応することができなかったことが原因」としています。様々な人の声を「真摯に捉え」ていれば、それを「集約」するでしょうし、「迅速に対応」するはずですから、最も大きな問題は「様々な人の声を真摯に捉えていなかった」ことでしょう。
 では、なぜカネボウは、様々な人の声を真摯に捉えなかったのでしょうか?
 第三者委員会の調査報告書では、その原因と考えられる以下の記述があります。
「厚生労働省の承認を得るための厳格なテストを通過して白斑出現の可能性はないと確信していた」
「当時(症状の発現時期)は、未だ症例はきわめて少なく、医師の診断結果においてロドデノールとの因果関係を窺わせるような所見も顕れていなかった」
「『白斑は病気である』という思い込みがあり、『化粧品によって白斑が生じることはまずない』との知見がある」
 要するに、「化粧品を使って白斑ができるはずがない」と信じて疑わなかった訳です。
 一方で、被害者の方々にとっては気の毒ですが、上記は症例が出始めて直ちに商品回収としなかったことについて、一定の合理性を与えていると考えます。
 
 しかし、問題はその後です。
 その後も数多くの症状の発現が報告されるのですが、上記の「思い込み」から、適切な対応が取られないまま被害者が増加し続けてしますのです。第三者委員会の報告書が最も問題視しているのは、2012年9月4日(カネボウが自主回収を発表した2013年7月4日の10ヶ月前)の医者の診断結果です。
 この診断結果は、「ロドデノールがトリガーとなった白斑を引きおこすことがあり得ること」を示すもので、これを本社担当部署が認識したのですから、早急に商品回収等の対策を講ずるべきだったといえるでしょう。
 下記が同報告書の会社の体質について、最も注目すべき記述であり「ごもっとも」と評価したい表現です。
「都合の悪いことについては突っ込まないで無視しようとする態度が顕れている」
 約1万人の方に症状が出たとされる本事件、もっと早くに対応していれば、被害者の数は抑えられたはずですし、不正事例研究会が扱う不正についても同様のことが言えるでしょう。
 「都合の悪いことについては突っ込まないで無視しようとする態度」が、多くの不正の発覚を遅らせる原因になっています。「仮に、本当にそうだとすると、大変なことになる」という危機感は、現実から目を背ける理由にはなりません。
 
 そういえば20年ほど昔、とある勉強会で原子力発電所の仕組みについて教えてもらった際、「もし事故が起きたら大変ですね?」と質問したところ、講師の方にこう言われました。
 「間の抜けた質問はしないで下さい。原子力発電所は安全ですから、事故が起こるはずはないのです。」
 これも「都合の悪いことについては突っ込まないで無視しようとする態度」の一つと言えるでしょう。

 化粧品会社の皮膚障害。
 原子力発電所のメルトダウン。
 あるまじきことが起こってしまうのです。

 これを機に会社の最も大きなビジネスリスクは何かを考えて下さい。
その上で、そのリスクが現実のものになったらどうなるのかも考えて下さい。
「まさか、そんなことは起きるはずはないよ」
 いやいや。
 それでは上記の会社と同じではないですか?Taku

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TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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