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2012年12月 不正リスク対応基準の公開草案に思う

 2012年12月、企業会計審議会監査部会は「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」を公表しました。この中で、不正に対応する手続として注目された「取引先企業の監査人の連携」は規定されませんでした。この点も含めて、今回の新たな基準設定と監査基準の改訂について考えてみましょう。

1.「取引先企業の監査人の連携」について
 不正実行者と取引先等の外部者とに通謀がある場合には、現状の監査手続ではその摘発に限界があります。例えば、外部の第三者に対して確認を行う監査実務は、不正実行者と確認先である第三者との通謀により無機能化されるばかりか、逆に外部の第三者からの回答が不正不存在の強力な証拠として採用されかねません。
 この点、今回導入が議論された「取引先企業の監査人の連携」は、被監査会社の取引先から提供された証拠の信頼性の検証に有用であり、特に循環取引等、個々の会社に対する監査のみでは実態の解明が困難な取引の全体像を把握する上で、効果的な手法として注目されていました。
 しかし、監査人が監査業務を遂行する際に遵守すべき義務として、守秘義務の問題があります。たとえ不正摘発に有用であっても、監査契約の締結先ではない企業の監査人に情報を提供することには慎重であるべきでしょう。
また、取引先企業の監査人と連携を行わなかった場合の責任関係や被監査会社及び取引先への協力義務等、実際に こうした「新たな監査人の役割」を導入するためには、様々な課題を解決しなければなりません。
そのため、同公開草案では、「検討された「取引先企業の監査人との連携」は、被監査企業と取引先企業の通謀が疑われる場合の一つの監査手続であると考えられるものの、解決すべき論点が多いことから、今回の公開草案には含め」ずに、その導入を見送っています。

2.新たな基準が監査人に求める役割
 上記1.から、今回の不正リスク対応基準は、監査人に新たな役割を課したわけではなく、既にある監査実務上の手続を明文化ないしは整理したことにその意義があると思います。
 というのも、今回の基準新設の三つの注目点(①職業的懐疑心の強調、②不正リスクに対応した監査の実施、③不正リスクに対応した監査事務所の品質管理)は、現行の監査基準や監査基準委員会報告書において、既にその詳細が規定されています。そのため、今回の基準新設の目的は、既にある実務を整理し、新たな基準として明文化することで、実務家に対する注意喚起と社会的な役割期待への対応を図ることにあったと考えられるのです。

3.新基準が金融商品取引法監査に限定される意味
 公開草案では、今回の新設される不正リスク対応基準は、金融商品取引法監査に限定するものとされています。これは大きな疑問があります。不正リスク対応基準が一般に公正妥当と認められる監査の基準に含まれる以上、会社法監査であってもその遵守が求められることに変わりありません。
もちろん上記1の「取引先企業の監査人との連携」という特殊な役割を監査人に課すのであれば、金融商品取引法監査に限定することの意味はあったのでしょうが、今回の基準新設が単に現行の監査実務を明文化したに過ぎないのであれば、これを金融商品取引法監査に限定する意義は乏しいはずです。
むしろ、そうした適用範囲の限定が、監査の水準に相違があるかのような誤解を招きかねないことから、新基準はすべての監査に適用されることを明記するべきです。

4.「三 監査基準の改訂について『1.審査』」について
 我が国の保証業務の実務では、監査よりも保証水準の低いとされるレビューであっても例外なく審査が求められています。これに対して、今回の監査基準の改正では、監査であっても「審査を受けないことができること」を明記するものです。
 監査業務の多様化に鑑みれば、確かに審査を受けない監査があり得ることを否定するつもりはないのですが、現時点では極めて稀な状況と考えられますし、審査を含めた品質管理の実務が漸く浸透してきた現時点において、かえって品質管理の水準の低下の要因となるかのような規定をあえて設ける必要性は乏しいと思われます。
 また、審査に代わる他の方法に関する議論も不十分なままに、監査の規範の中心に位置付けられる監査基準において「審査不要な監査があり得る」と先行して明示することは、品質管理における審査の重要性が強調されるほどに、監査の質の合理的な確保が危惧され、結果として監査に対する社会的信頼を損なう要因ともなりかねません。
以上から、審査不要な監査があり得ることを監査基準に明示することは時期尚早と考えます。今後、公開草案がどのように変更されるか、注目です。Taku
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2012年12月 三菱電機の水増し請求返還額の報道(続報)

 やはり昨日の日経新聞がスクープだったのですね。
 本日12月21日、三菱電機株式会社が「防衛省、内閣衛星情報センター、宇宙空港研究開発機構及び情報通信研究機構との契約における費用の過大請求に関する返納金の引当計上の見込みについて」及び「費用の過大計上・過大請求事案の社内調査結果と再発防止策について」を公表しました。
 資料によると2013年3月期第3四半期の連結決算において、過大請求額及び関連する違約金・延滞利息の見積額773億円を営業外費用に引当計上することが見込まれ、その結果、2013年の当期純利益見込みは1,200億円から500億円に減少することのことで、防衛庁への返納金では過去最高になる模様です。
 本資料を読んで、個人的に目に止まったキーワードは以下の通りです。
 これらの用語の意味するところを理解すれば、今回の不正事例の背景や動機、不正に対する意識等が理解できると思います。
「工数の付け替え」
~実際の工数が目標工数に合致しない場合、別の工事に計上するか、または計上しない~
「原価監査付契約」
~実際にかかった費用が契約にて認められた原価よりも少なかった場合に契約金額の減少や超過利益の返納が発生する契約~
「上位者の関与」
~工数の付け替えは「目標工数を遵守する」立場の課長を中心として行われ、部長以上の・・・幹部が・・・積極的に関与していた事実は認められませんでした~
「直接作業率の維持」
~計上工数を就業時間で除したもので、工数を付け替えて直接作業率を維持することで人員の削除を回避~
「工数修正端末」
~顧客の制度調査に対し、・・・工数の付け替えが発覚するのを恐れ・・・工数付替用の端末の存在も秘匿していた~

 次回は「ニュース」ではなく、「不正事例」で、これらを詳しく検討しようと思います。taku

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2012年12月 三菱電機の水増し請求に係る報道

 今日(2012年12月20日)の日経の朝刊の一面記事です。
 「三菱電機、500億円返納へ」
 以前にも不正事例研究会で扱いました「2012年10月三菱電機の過大計上に思う(再)」の続報です。
 40年近くも水増し請求が続いていたと報道されたのが約2ヶ月前です。今回の記事では、「水増し分と違約金を合計した返納額が500億円規模になることが19日、分かった。同省への1社での返納金としては最大になる見通し。三菱電機は2013年3月決算で返納金を損失に計上する。現在1,200億円を予想している連結純利益は、ほぼ半減する可能性が高い」とあります。
 最も気になるのはその算定方法です。
 どれくらい水増しがあったのか?
 どれくらいの期間遡及したのか?
(皮肉を交えれば、今後どれくらいの期間をかけて、その返納金相当額を、「また」三菱電機に戻すことになるのか?(そんなことはないでしょうか?))
 その当たりをよく知りたかったのですが、「関連記事」もないので、この記事には欲求不満でした。この点、三菱電機のHPを見ると「本日、当社の防衛・宇宙事業における返納金に関する一部報道がありましたが、当社が発表したものではありません。」とあります。
 情報がどこからか漏れたか?
 日経の記者がすっぱ抜いたのか?
 ガセネタ?まさか。
「現在もお客様の調査に全面的に協力しているところであり、業績への影響等は、状況が明らかになり次第開示いたします。」との発表は、非常に冷静沈着。今回の報道でさらに注目度合いがアップしてしまいました。今後の報道と同社のIR情報が気になります。Taku
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2012年12月 TOW架空売上計上

 各種イベントやセールスプロモーションなどの企画制作・運営を主たる事業とする株式会社テー・オー・ダブリュー(東証一部上場;以下、TOW)は、売上の前倒し計上、架空売上等の「不適切な会計処理に関する社内調査結果について」を公表しました。
 以下、その概要を示します。
1.不正の手口
 この不正は不正実行者の単独犯とされ、社内ぐるみの粉飾とはされていません。
 具体的には、「注目されたい・大手クライアント担当チームを見返したい」(本人インタビュー)と考えた不正実行者(チームリーダー;2012年12月付で懲戒解雇処分)が、売上の前倒し計上や費用の先送り計上、売上高の架空計上により、不正実行者が担当する案件の業績を良く見せかけていたものです。
2.不正の影響額
 不正が始まった平成2009年6月期における損益に与える影響は21百万円、翌2010年6月期は35百万円となり、さらに2011年6月期には41百万円となります。年度追うごとに不正金額が大きくなっていくことは良くあることです。これが2012年6月期に139百万円と跳ね上がります。これらを合計すると235百万円。税引後の当期純利益では147百万円の影響額です。
 ちなみにTOWの直近(2012年6月期)の連結売上高は14,033百万円、当期純利益は597百万円、純資産は5,340百万円でした。
 同社は本事例に起因して過去の決算を遡及的に訂正するとともに、内部統制報告書を下記の通り訂正しています。
「下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすことになり、開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。したがって、・・・当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました。
 平成24年10月に、当社の管理本部における滞留売掛金調査の過程で、回収できない売掛金が存在することが判明し、これを契機として当該担当者より聴取する等の調査を進めたところ、売上高の過大計上及び売上原価の過少計上といった不適切な会計処理が行われていたことが判明いたしました。・・・後略」

3.不正の発見
 今回の不正事例の発覚が遅れた要因は、不正の対象となった案件が会社にとって新規事業であり、既存の業務と同様の内部統制の取り扱いでは不正が発覚しにくい状況にあったこととされています。
 具体的には、不正対象案件は多品種少量の案件の集合であり、1件当たりの受注金額が小さく個別の原価管理が煩雑となるため、半年分の案件をまとめて管理していたものです。その結果、その中の個々の業務に係る売上を前倒し計上したり、原価を先送り計上したりしても、膨大な取引の中に異常性が紛れてしまい、判別不能な状況だったというのです(逆に、1件当たりの受注金額が相応の金額であれば、個々の案件ごとの売上高や売上原価の対応関係にある異常値に起因して、不正が発覚しやすくなります)。
 この他にも、「不正実行者に本取引に関わる業務を一任していたこと」や「新規業務についての知見が上司になかったこと」といった不正が見過される一般的な要因も指摘されていますが、最も大きな要因は、新規業務(本件では多品種少量の業務の請負)に対する固有の内部統制の検討・構築がなされず、既存の業務と同様の内部統制の取り扱いとしていたことにあったようです。
 それでも不正が発覚したのは、不正実行者の不正の手法が「大胆」になったからです。
売上の早期計上や原価の付け替えは「期ズレ」の問題で、実際に発生している売上や原価の計上時期を操作しているにすぎませんから、営業成績の仮装にも限界があります。
そこで不正実行者は「最後の手段」として「売上高の架空計上」に手を染めるに至ります。不正実行者は注文書を偽造して取引が実在しているかのように装い、また支払確約書を偽造して回収見込みがあるように仮装していました。
 発覚は時間の問題という状況ですが、不正実行者は必死に隠ぺい工作を行っていたことになります。もちろん、架空計上された売掛金は、誰かが代わりに支払ってくれない限り、入金されませんから、最終的には入金遅延が社内で問題視され、不正実行者が不正を自供するに至りました。
4.大きな疑問点
 不正の初期の期ズレ操作の際には、「ちょっと魔が差した」程度の意識だったのかもしれませんし、関係書類を偽造して売上の架空計上までしよう、とは思ってもみなかったはずです。当初から管理体制を充実強化していれば、こうした不幸な事件は未然に防げた?かもしれません。
 しかし、この事件、大きな疑問点が一つ残ります。
 それは振込人の判明しない入金39百万円があることです。
TOWでは「将来において返還請求を申し出た真の振込人に対して返還すべく仮受金として計上する」こととしています。
 振り込み詐欺とは逆に、「どこのだれか知らない人間が振り込んでくれた?」
 そんなはずはないでしょう。
 私も含めて事情の知らない人はそのように考えるのが自然に思えます。むしろ、この振り込みと今回の不正とに、何らかの関連があることは間違いないように思えて仕方ありません。例えば、不正実行者がX社名義で振り込んだ(不正実行者の水増し請求等でプールしておいた資金からの入金(この場合、不正実行者は他にも不正を行っていたことになります。))?とか、当該不正に絡んだ外部の協力者からの入金?とか、いろいろと想像をしてしまいますが、ゲスの勘繰りの域を超えません。本当のところを知りたいですね。Taku
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TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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