沖電気海外連結子会社の不適切な会計処理に関する調査報告書についての感想(続き)



3.観点が違う
OSIB社には問題ガあることを沖電気工業㈱(以下、「OKI」と記載します。)が認識した時点は、OKIの理事であり、欧州販社統括本部のトップが、同社の副社長及び常務が出席した会談の場で次の事項を報告した2011年6月3日であると、報告書は認定しています。
・売上債権の回収期間が長期化していること
・ディストリビューターに対するる売上債権が実質的には資金支援目的の貸付金となっていること
・ファクタリングが実質的に長期固定化理入れとなっていること
・ディストリビューターにおける在庫の約3割が再販不可の可能性があること
・テレビ事業で、販売代理店であるQ社に対する債権の回収可能性に懸念があること

これに関し、OKIの副社長らが不適切な会計処理につながるとの認識を欠き、報告は信用できないものと判断し、、事件の当事者である会社(OSIB社)のトップからの報告の方を受け入れたのは、適切な判断とは評価できない、と報告書は指摘しています。さらに、その後の調査報告により2011年12月までには100%子会社でありプリンタ事業を司る沖データ㈱の社長が問題の深さを認識していたことを指摘しています。
ところが、内部統制の要素である情報と伝達に関する役員との関係での問題は、監査役とのコミュニケーションの迅速性の欠如にあると言うのにどまるのです。
OKIの副社長や沖データの社長、さらには経理部長、財務部長の誰一人として問題をOKIの社長に報告しないことについて、報告書はまったく触れていません。まして、取締役会の議題として取り上げられなかったことに言及があるはずもありません。
悪い情報ほど迅速にトップに伝わる体制、取締役会で審議する体制あるいは風土があることが、情報と伝達の要諦です。トップは悪い話には耳を傾けないタイプであったのか、単に副社長などの関係者が漫然と放置したのか、報告書での言及はありません。

さらに報告書は隠蔽は意図していなかったとして故意ではなかったことを認める一方、認識の不十分性や対応の不適切性など、関係者の過失を指摘していますが、責任追求にまでには至っていません。2012年8月8日までに何ら情報を得られないために株式を購入した投資家への配慮が見られません。2011年3月1日の終値87円から株価は上昇し、3月30日には125円となり、4月26日は8月8日までの最高値138円を記録しています。2012年3月期の決算短信が発表された5月9日後の最高値は131円です。迅速な調査と報告がなかったことにより、損害を被った投資家がいるのです。会社役員として投資家に負っている責務の観点から、取締役会等が機能しているかは、大事な観点です。報告書に言及がないのは残念でなりません。

4.発想が違う
内部監査について報告書は、事件を起こしたOSIB社には内部監査室がなく、沖データ㈱の内部監査室が2008年7月に初めての監査を実施したが、往査期間は2日間と短く、実施手続はヒアリングが中心であり、特段の問題を認識することなく監査を終了し、これ以降内部監査は実施されていない、と指摘しています。これを受け、内部監査室の人員数が著しく不足していること、リスク・ベース・アプローチに基づき監査対象会社を選定するなど、実効性のある内部監査体制を構築する必要がある、と提言しています。
内部監査を実施するに当たっては事前の計画が重要なことは論を待ちません。まして初めて行く会社についてはどのような目的で何を調査するのかを検討し、限られた時間の中で目標を達成するためにはどのような方法で行うかを決定した上で監査を行うのが、一般的方法です。インタビューを中心に行ったという記述からは、どのような目的・計画のもとに行われた監査であるのかが、わかりません。計画については、本委員会の調査対象外であり、事実を知らないままに検討するのは避けたいのですが、それでも現行の監査室の水準に問題を感じます。このような状況では、いたずらに人員を増やしても問題解決にはなりません。会社は財務諸表への影響額を指摘の通り受け入れたように、ただ指摘を受け入れることはないと思いますが、必要性を十分吟味した人員配置を考えるよう期待します。

5.公認会計士として
報告書を読んで得た監査手続における具体的教訓は次の通りです。いずれも基本的監査手続に過ぎませんが、監査目的を明瞭に意識し、手続に不備があれば、大事件になりかねないことを意識して監査に当たらなければ、とつくづく思います。
ア.銀行への確認状は監査人自らが直接受け取る形で、100%回収すること
イ.売上取消などの通常とは異なる取引については、内容を十分吟味すること
ウ.外部倉庫にある棚卸資産を販売する取引にあっては、名義手数料、倉庫保管料、在庫、売等の関連勘定が整合しているかを調査すること
エ.今回では会計伝票と手形の同時発行が行われないなどの内部統制上の欠陥がある場合には、手形の帳簿記入への連番チェックを行うこと。
オ.取引業者のコード入力について、実在性が確保されていることに留意すること
カ.外部倉庫に保管されている在庫については在庫証明書の入手にとどまらず、重要性に応じて実地棚卸に立ち会うこと

6.その他
・上場会社において、現金及び預金の帳簿残高が実際と異なるなどということは、あってはならないことです。これを報告書は決算・開示に関するプロセスに関する内部統制として、取り扱っていないようですが、現金及び預金残高の実在性、正確性は決算プロセスにおいてもチェックしなければならない事項だと、思います。
・不正防止に携わる者として、調査報告書から知りたいことは不正の具体的手口です。この辺りは犯罪方法を公にすることになるからか、ほとんどの調査報告書で記載されていません。不正の具体的手口は特殊なものでなく、一般にも知られている方法で行われたものとして、対策を考えるしかないのが、ちょっと残念です。

                                   Tetsu



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沖電気海外連結子会社の不適切な会計処理に関する調査報告書についての感想



9月26日に紹介した沖電気の海外子会社に係る適切な会処理に関する外部調査委員会調査報告書を読んでの感想です。要約版であるせいか、理解に苦しむ点が多々ありました。

1.わからないこと
まず、わからなかったのが、調査報告書での純資産への影響額マイナス153億円の大半を占める売上・売掛金の取消による125億円のマイナスです。本文ではこれを売掛金の回収期限の延長の問題として取り上げています。売上を取消し、新たにインボイスを発行して売上を計上するわけですから、利益への影響はないはずという思いこみが強く、これを実体が伴わない売上・売掛金というだけの理由で取り消してしまうのかが、なかなか理解できませんでした。報告書には本売掛金リストを入手し、次の手続を行って、影響額を算定したとあります。
ア. 本売掛金リストの取引残高から20%程度を抽出し、出荷や入金を示す証憑類が存在しないことを検証
イ.帳簿に計上されている売掛金のうち、本売掛金リストに記録されている取引残高を除いた売掛金の20%程度を抽出し、出荷又は入金を示す証憑類が存在することを検証
ウ.本売掛金リストに含まれていない売上・売掛金の取消の特定

手続から察するに「本売掛金リスト」とは、出荷や入金事実のない売掛金の一覧表であり、本文で指摘している「実体を伴わない売掛金」を帳簿から抽出したもののようです。
結局のところ、この取消・売上の計上を繰り返したことで当初のインボイスがわからず、請求不能と判断したことにより、実体を伴わない売上・売掛金を取り消すのだろうと、推測しました。しかし、なぜ売上・売掛金だけを取消し、売上原価は取り消さないのか、また20%程度による検証の信頼度係数はいかほどなのか、と疑問はつきません。

報告書に指摘されたことをもって、影響額として会社は全額計上していますが、会社としてなすべきは、第一に本来のインボイスを明らかにし、回収を図り、損失をできる限り削減することです。また、取消すのであれば売却した商品を取り戻し、販売に供しなければなりません。
報告書での指摘は単に「不適切でないことを積極的に証明する証拠がない売掛金」(報告書の文言です)につき全額債権放棄せよと言うのに等しく、回収はあきらめてしまっているようです。また、会社も調査する気はないようです。繰り返しますが、本来これらの売掛金は備忘価額で帳簿に残した上で、回収を図らなければならないものです。調査で判明・回収できる金額より、調査費用の方が高い等の回収を図らない合理的理由があればまだしも、ただ「実体を伴わない売上・売掛金」を全額取消して影響額として発表することは、株主・投資家への説明不足としか言いようがありません。

2.株価について考えてみた
本件は8月8日の引け後に発表されました。当日の終値は122円、発表翌日9日は最安値がストップ安の72円、その後盛り返して終値は81円でした。その後、終値ベースで公表日の9月11日には100円にまで回復し、公表した翌日の終値は89円と下がった後、26日の株価は91円と90円辺りで推移しています。
純資産が4割近く減少したことにほぼ見合った価格形成といえます。当期見込み利益が変更はなく、キャッシュ・フローへの影響は少なかったことをみると、株価のキャッシュフローとの連動性は高くないと考えられます。企業価値は金の卵を産むガチョウの値段と同じく、将来生み出すキャッシュフローによる、というのが通説ですが、1株当たり純資産やPBR(株価純資産倍率)も大きな影響をもつ、ということを物語っているのでしょう。
Tetsu
 感想はまだ続きます
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沖電気海外連結子会社の不適切な会計処理の詳細


8月9日に紹介しました沖電気のスペインにある子会社(OSIB社)の不適切な会計処理について、同社は9月11日に外部委員会の調査報告書を発表しました。また、14日には第1四半期報告書と過年度の訂正有価証券報告書を提出し、上場廃止を免れました。
この事件による当期純利益の過年度累計影響額は308億円のマイナス、2012年3月期の純資産は訂正前675億円に対し262億円(対訂正前比38.9%)減の412億円となりました。また、現金及び預金が訂正前460億円に対し890百万円減少しています。ちなみに営業キャッシュフローへの影響額は2011年3月期が3百万円のプラス、2012年3月期が966百万円のマイナスで累計963百万円のマイナスとなっています。

不適切な会計処理の内容を報告書をもとに紹介します。

1.プリンタ及び関連消耗品の押込販売と対販売先への資金援助
・収益目標を達成するため、ディストリビューター(卸売業者)に対し小売業者への販売を超える過度なプリンタ及びトナー等の消耗品を販売(いわゆる押込販売)した。
・ディストリビューターには支払能力がないことから、未回収の売上債権が大幅に増加した。
・この未回収売上債権について、滞留債権としてのモニタリングを回避しながら、ディストリビューターによる支払いを猶予するため、期日到来前に支払猶予相当額の売上を取消し、新たにインボイス(売上請求書)を発行して売上を計上した。この売上取消と新たなインボイスの発行はOSIB社の社内処理のみで、インボイスがディストリビューターに送付されることはなかった。また新インボイスは当初顧客、当初金額と異なることもあった。さらに物流担当者によって架空のディストリビューター・コードを登録して発行することもあった。この処理は会計システム上、売上と在庫移動・売上原価計上が連動していないことから、容易に行うことができた。
・ディストリビューターからの手形を割り引いた資金で、手形決済不能のディストリビューターに対し、貸付を行い、これを売掛金として処理した。
・売掛金のファクタリングによる資金調達に際し、架空のインボイスを作成し、ファクタリングの対象としていた。、
・外部倉庫にある商品はディストリビューターへの名義変更手続きにて、出荷及び売上を計上していた。倉庫保管料はOSIB社が引き続き負担しており、実質的に売上とは認められないものであった。

2.テレビ事業における債務未計上及び売掛金減少計上
・OKIブランドTVのOEM製造を行うR社から販売代理店Q社への販売間にOSIB社が関与し、Q社から仕入れ、ロイヤリティを上乗せし、Q社に販売を行っていたところ、Q社の資金繰りが悪化した。
・OSIB社はQ社のR社に対する支払を肩代わりするため、三者間合意のもと、手形を発行したが、帳簿計上は行わなかった。
・さらに、これとは別にQ社に対し手形を振り出したが、これを簿外処理した。
・Q社への売上債権について、他社からの回収金にて回収したとして処理する資金の流用や、実在しない未着品と在庫との相殺などにより、Q社の売上債権の減額偽装を行った。

3.同一売掛金を利用したファクタリングと重複ファイナンス
OSIB社は売掛金についてファクタリングを実施する一方で、同時に当該売掛金を手形で回収し、これを割り引くことで同一の売掛金から二重に資金調達を行っていた。

4.リベートの未計上
ディストビューターに対するリベートの負担額を計上しなかった。

                                     Tetsu
                    
 調査報告書についての感想はこちらです。
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2012年9月 花王の子会社経理責任者の業務上横領270,000,000円

 花王といえば有名ですね。日用品大手です。
 こうした有名企業の不正は、他の有名でない企業に比べるとニュースになりやすいようです。
 特に今回は、単に同社名義の口座から自分の口座に資金を振り替えていたのではなく、情報システムに精通した管理職の不正実行者は、同僚になりすまして第三者のチェックを受けたように装って横領していたという手法が注目されました。
 個人的に興味を抱いたのは、会社側が事実を公表したのではなく、愛知県警が発表したことでニュースになったです。通常?(あくまで私の感覚ですが)こうした事件は、公開会社の場合、適時開示情報として開示されるのでは?と思ってしまったわけです。
 花王の適時開示は必要なかったのでしょうか?

 愛知県警によると、2006年2月、1,000万円を会社の口座から自分の口座に振り込み、着服したとして、2012年9月19日、業務上横領の容疑で花王の子会社(愛知県)の情報システム部長を逮捕した。株の購入資金等に使ったとして、不正実行者は容疑を認めているようです。
 この不正は2002年頃から始まり、会社の被害総額は2億7千万円(時効分を除くと1億6500万円)とのことです。
 不正実行者は、保有する株の売却により1億2千万円を返還したものの、残る1億5千万円は返済の見込みがない模様です。
 業務上横領罪の控訴時効は7年。
 2002年頃から始まった長きにわたる横領は、一部、時効により刑事訴追できなくなりました。
 以上が今回の事件の概要ですが、不思議に思ったのは以下です。

「着服容疑発覚後の昨年(2011年)11月、会社は同容疑者を懲戒解雇している。」

 懲戒解雇をするには、単に「横領の疑いがある」という理由では不十分で、その事実を示す証拠ないしは相当な蓋然性が必要とされます。とすれば、会社側は去年の11月に不正の事実を把握しておきながら、適時開示せずに、今回の警察の発表に至って、本事件が一般に開示された、ということです。

 東京証券取引所のHPによると、適時情報の開示が求められる「子会社の発生事実」は以下の通りでした。
1.子会社における災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
2.子会社における訴訟の提起又は判決等
3.子会社における仮処分命令の申立て又は決定等
4.子会社における免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令に基づく処分又は行政庁による令違反に係る告発
5.子会社における破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告
6.子会社における手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分
7.子会社における孫会社に係る破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告
8.子会社における債権の取立不能又は取立遅延
9.子会社における取引先との取引停止
10.子会社における債務免除等の金融支援
11.子会社における資源の発見
12.その他子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実

 あえて言えば12.に該当するかどうかでしょうか?
 最近の適時開示の事例からすると、子会社の不正でも適時開示の対象になっているケースが多い気がしたもので、いろいろと勘繰ってしまいました。
 むしろこうした不正事例は開示していないケースの方が多いのでしょう。考えを改めます。
 花王は本事件を適時開示せずにOKだったのでしょうね。

 なるほど、花王の2012年3月期の連結売上1兆2千億、税前利益が1千億円でした。
 今回の不正は、2億7千万円。税前利益との比率は0.27%。金額的な重要性がないことは明らかです(質的な重要性は別の議論ですけど)。

 一応、同社の広報に電話でも確認しました。
 「警察の捜査が進んでいる状況での適時開示は、適切な対応ではないと判断した」とのこと。
 そうでしたか。
 何でもかんでも開示すれ良いと言うわけではなさそうですね。
 本件を契機に情報開示のあり方について、思いを巡らせてみます。Taku
 
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2012年8月 エドウィンの証券取引損失200億円と経理責任者の不審死

「EDWIN」の由来は知りませんでした。「江戸が勝つ」→「EDWIN」
 聞いたとたんに些か恥ずかしくなるような駄洒落ですが、ウィキペディアによるとこれは俗説のようで、「DENIM」(綾織り厚地の綿布;ジーンズ(デニム製の衣類))の「E」と「D」とを入れ替えて、加えて、「NIM」を180度回転させて、「EDWIN」となったようです(果たして、これで「由来」の説明になっているのか定かではありません)。
 なるほど、ジーンズの販売会社であるから、「DENIM」を語源としたことは理解できます。しかし、下記の点が明らかにならない限り、「社名の由来」にはならないでしょう。
 ①何故「E」と「D」を入れ替える必要があったのか。
 ②「NIM」を180度回転させる必然性があったのか。
 いや、①②は意地悪な疑問でしょうか。むしろ、もっと単純に「DENIM」という単語をいろいろ弄ってたら格好良い名前ができた、という方が適切なのかも知れません。

 さて、本題に入ります。
 EDWINの不正事件。本社は東京都荒川区。1969年5月設立。
 2012年1月期の決算データは、資本金50百万円、純資産29,870百万円、総資産48,738百万円(同社HPより)でした。上記から、総資産-純資産=負債総額18,867百万円となります。つまり同社の負債は200億円未満でした。
 会社法では、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社について、会計監査人(公認会計士又は監査法人)の監査を義務付けていますが、EDWINは該当しません。会計監査人監査を受けていない以上、残念ながら、同社の決算書は信頼は得られない内容の可能性が高いと思われます。

 2012年8月の報道内容をまとめると、以下の三点に焦点が絞られます。
①EDWIN社グループにおける証券取引を巡って、巨額の損失(200億円超との報道もある)が生じていること
②損失発生に関連して不適切な会計処理が行われた可能性があること
③2012年8月上旬にEDWINグループの経理責任者が急死したこと。
 EDWINグループでは、証券取引やその会計処理等について事実関係の調査を進めており、2012年9月現在は、第三者委員会(弁護士・会計士)の調査が進んでいる状況にあります。今後、平成24年11月を目処に、第三者委員会の調査結果が公表される見込みです。調査結果を見ない限り、何ともコメントできませんが、個人的には以下の点が気になります。
①について
 200億円の損失がデリバティブ取引から生じたとの報道もありますが、同社が会計監査人監査を受けていないとすれば、従前より同社の決算書は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していない箇所があり、これらを含めて会計処理を見直した場合、300億円近くある純資産がマイナスになる(つまり債務超過となる)可能性があります。そうでなくとも、倒産の危機があることは容易に想像ができます。
②について
 亡くなった経理責任者の他に、社長の他、上層部もこうした損失が生じていることを把握していた可能性があります。このことは組織ぐるみの隠蔽工作なのでしょうか、それとも経理責任者のみが秘密裏に不正を行っていたのでしょうか。通常は、これだけ大きな損失が発生する取引を経理責任者が独断で行うことは考えにくく、社長の他、上層部も把握していた可能性が高いと思われるのですが、③でも示すとおり、経理責任者のみに責任が転嫁されてしまう可能性も気になります。
③について
 経理責任者の急死は自殺なのでしょうか、他殺の可能性はないのでしょうか?
 「死人に口なし」といいます。
 少なくとも経理責任者は、不正を主導した可能性のある者、または不正に荷担した可能性のある者に該当します。その方が亡くなっている状況で、真実が明らかにされるのでしょうか。金の動き、帳簿の動き、議事録や稟議書等の意思決定資料の他、証拠資料などから、真実を紡ぎ出すことができるのでしょうか?
 そしてなによりも、第三者委員会が客観的な立場にたって、調査を行い、報告することができるのでしょうか?
 兎にも角にも、平成24年11月に公表される第三者委員会の調査結果、注目しましょう。Taku
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2012年9月 フジシール パソコンの横流し

 ラベルやパウチ等で有名なフジシールインタ-ナショナル(東証一部)のグループ会社である株式会社フジシールにおいて、元従業員(設備部門の技術部長職)による不正行為が発覚しました。
 同社の公表資料によると、不正実行者である元従業員は、平成18年10月から平成22年10月にかけてパソコンを購入し、第三者に転売する手法で現金を着服していたようです。同社では、当該元従業員を刑事告訴することを決定しています。
 不正購入額は約47百万円。
 これは会社の損害額で、これを転売するともう少し安くなるでしょうから、不正実行者が手にした金額は30百万円~40百万円といったところでしょうか。個人的には多額に思われますが、フジシールインターナショナルという企業グループ全体から見れば重要性は乏しいでしょう(ちなみに平成24年3月期の連結売上は880億円、純利益は43億円でした)。
 もとより「重要性はないから問題はない」という訳ではありません。会社側も「業務プロセスの見直しや牽制機能の強化など内部統制システムの見直しを行い、再発防止に取り組んで」いるようです。
 報告書を見る限り、具体的にどのような手口だったかハッキリはしないのですが、4年間という比較的長期間をかけて、かすめ取った資金が47百万円程度となると、年間1千万円超です。パソコンは数十万円でしょうから、不正実行者は、年間、数十台の不正な購入手続を続けていたはずです。
 一般にこうした不正を防止又は発見するには、購入した固定資産の現物と固定資産台帳等の定期的な照合を行うことが必要です。固定資産に計上されずに経費処理されてしまう消耗品や器具備品についても、単価の比較的高いもので数の多いもの(特にパソコンは不正の対象になりやすい)は、何らかの管理資料(現物の一覧表等)を保持しておき、現品と帳簿とを照合できるように現物にシールを貼付しておく必要があります。
 固定資産の現物と帳簿とを定期的に照合しているのであれば、現物の横流しをすれば直ちに発見されるでしょうし、またそうであるならば、不正実行者はそうした不正を行うことに躊躇いを感じることでしょう。
 この会社はシール(というよりもパッケージ的なものですか)の専門会社です。
 お客さんの製品にシールを付ける商売ですが、自分の固定資産にはシールを貼っていなかったのでしょうか?

 余談ですが、本事件を見て、先日リース会社の開催したセミナーを思い出しました。
 有形固定資産の現物管理のソリューションに関するセミナーでしたが、有形固定資産の現物にバーコードのシールを貼付して、ハンディタイプの端末を使ってバーコードを読み込み、有形固定資産台帳と現物とを照合する仕組みです。なかなかの優れもので、効率よく現物管理が行えそうなサービスでした。

 有形固定資産は、金額も多額である一方で、使用期間が長期にわたり、現物の新規購入や廃棄、売却、移動も考えられ、加えて管理担当者の移動も考えられるため、実際には固定資産の現物と帳簿とが一致していないケースが多々あります。あるはずのものがなかったり、帳簿上なくなっているものが何故か存在していたりすることも稀ではありません。
 内部統制監査が導入されて、幾分かは改善されている会社も多いようですが、内部統制監査とは縁のない中小企業ではまだまだ管理不十分な会社が多いはずです。一度、固定資産の現物と帳簿とを照合してみませんか?
 いままで一度もそんなことはしたことはない、という会社では、意外なほどに帳簿と現物との間に相違があることが明らかになることでしょう。
 「何故こんな相違があるのか?」
 原因究明できない「謎」「ミステリー」に直面するかも知れません。Taku
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続報 ソリトンシステムズ 経営管理部長の不正

 ソリトンシステムズの続報です。
 「もしかしたら会社に対する報復的な行為ではないか?」と勘繰ってしまった今回の不正事例ですが、同社の第三者委員会の報告書が公表されていました。個人的に興味を覚えたところを中心に説明しましょう。

 2012年8月9日付の第三者委員会の報告書によると、不正実行者である執行役員経営管理部長は、同年5月15日~6月28日までの間に、同社の小切手帳から、計10枚(合計170百万円)の小切手を作成し、10回にわたり、自ら小切手を銀行窓口に持参して、現金化しています。
 経営管理部長自らが、銀行窓口に小切手を持参するというのは、かなり異例な事態ですから、銀行窓口の人もその使途を訪ねていたようです。しかし、不正実行者は「社長の個人的な用途に使われる」と嘘の回答をしていたとされます。
 不正発覚直前は、立て続けに現金を引き出しています。
 6/25に20百万円(A銀行)、6/27に20百万円(B銀行)、6/28に20百万円(A銀行)。 発覚したのは、6/29の40百万円(B銀行)の引き出しの際です。
 B銀行への小切手持ち込みは、これで2回目でした。
 不審に思ったB銀行の担当者は、「本当に社長の個人的な使途なのかどうか」を会社への問い合わせをしたようです。会社側は当然これを否定しますから、不正実行者から事情を聴取するに至り、本事件が発覚しました。
 余談かも知れませんが、B銀行の窓口の人は2回目の出金で気が付いたことになりますが、A銀行の窓口では8回もの出金をしていました。A銀行側で、もっと早く気が付いていれば・・・。(もはや内部統制の議論ではなくなりますね。)

 この事件で不可思議なのは、不正の動機です。
 通常は、借金の返済やギャンブルその他、具体的な資金使途が明らかになるはずですが、この不正事例では「遊興費に費消」との曖昧な供述のみで、その供述を裏付ける資料等もないため、具体的な使途が明かになっていないのです。
 すでに費消されてしまっているのか、又は現金がどこかに隠匿されているのか、不明なままなのです。
 
 私が個人的に抱いた「不正実行者は会社に恨みを持っていたのでは?」という疑問については、同報告書は以下のように示しています。
 「元社員はソリトンが支払ってきた給与額に不満も漏らした事実はあったが、それ以外に、地位や昇進・昇給等で格別に不利益を受けた事実はない。本件不正行為が執行役員就任から5ヶ月後に行われていること、この間に、例えば、社長に強い叱責を受けた等の元社員をしてソリトンへの報復を動機付けるような事実も報告されていない」
 
 なるほど。特に会社に不満を持っていたわけではなさそうですね。 
 発覚することが解っていながら行った確信犯的な不正。
 その目的も定かでなく、現金の所在も不明な事件。
 なんとも不可解です。

 最後に、今回の不正についての同社が公表した再発防止策を五つ示します。
 ①経理組織の見直し
 ②支払いに関するチェック体制の強化
 ③内部通報制度の改善
 ④内部監査機能の強化
 ⑤従業員教育の拡充
 もともと、キッチリしている会社でこうした不正がおきると、なかなかどうして、その具体的な防止策の検討は難しいことなのかも知れません。なぜなら、「内部統制の限界」を克服する策を議論しているからでしょうか。
個人的には、この不正実行者を経営管理部長に指名したことが問題であって、それ以上にこうした不正の再発防止策を講ずるのは、かえって非効率的な組織になるリスクを孕んでいると考えました。Taku
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プロフィール

TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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