裏金について考える

年の瀬、大晦日に「裏金」について考えてみたいと思います。

<裏金とは>
裏金は、正規のルートで支出される資金ではない金のことを意味します。
おもてだって使うお金は、その調達から使途に至るまで、帳簿に漏れなく記載し、適切な承認過程を経ることが求められます。
それは公の機関だろうと一般企業だろうと同じことです。
不正な支出を防止するためにもお金の動きは十分にチェックする必要があるからです。
しかし、時として組織や個人は自分の自由裁量の幅を持ちたがります。
裏金はそうした正規のルートから離れた、自由裁量の効く金なのです。
<裏金づくり>
裏金の作り方には様々な方法が考えられます。
典型的な方法としては、「経費の水増し請求」が考えられます。
実際には支出すべき金額以上の金額を支払ったことにして、差額を裏金とするのです。
また、取引の仮装によって裏金を作る場合もあります。
実際には存在しない取引先に経費を支払ったように見せかけ、そのお金を裏金にする方法です。
さらにいったん業者に支払って、その一部を割引や返品等を理由として返金して貰い、返金を別の裏金用の口座に振り込んで貰う方法もあります。
こうして蓄えた裏金は、その当事者によって自由に使用されますが、個人的に飛翔されるケースは希で、以下のように複数人又は組織だって裏金が管理されているケースが多いようです。
・実際には出張などしていないのに出張しているかのように装って経費処理したお金を裏金にする。
・実際には少額の経費で済んでいるのに実際よりも多額の経費を支払っているかのように装って裏金を作る。
こうして作った裏金を以下で示すように組織のために利用しようと考えるのです。
<裏金の使い道>
裏金は、毎年恒例の忘年会、新年会、慶弔禍福や昇進祝い、時には正規のルートでは絞られている残業代の支払いに充当される場合もあります。
組織だった裏金事件の場合、その裏金の使い方には一定のルールがあるようです。
組織のためのお金なので、皆が牽制しあって、特定の人のみが恩恵を受けるような仕組みにはしていません。
そのため、警察や会社などで裏金が発覚したとしても、当事者にはあまり罪の意識がない場合が多いようです。
「みんなやってるよ。」「これは必要悪だ」とまで言い切る人もいます。
「別に特定の個人が私腹を肥やしているわけじゃないからいいじゃないか。」
確かにルール違反ではありますが、お金は組織のために使っているのだから、特に大きな問題ではない。
そうした良識を欠如した人達の理屈が、さも当たり前のように扱われているのかも知れません。
<「裏金」は何故悪いのか。>
裏金を必要悪と考える愚かな人達には、理解できないかも知れませんが、裏金は「隠す」という行為自体に大きな問題があります。
裏金づくりは、正規のルートから切り離して、自分たちの自由になるお金を作ろう、とする悪意に満ちた行為です。
特に公の機関で裏金工作が比較的盛んに行われている(またはそのように報道されている)のは、公の機関が予算消化型の組織であることと関連しています。
公の機関では予算を消化しなければ、来年の予算は減額されるのが常です。そのためいったん決められた予算は全て消化することが重要です。
しかしながら、お金のない人にとってはうらやましい限りの話ですが、決められたお金を使い切ることも結構難しいのです。
「予算を消化するにはどうしたらよいか?」
そのための手段が「水増し請求」であり「経費の仮装」なのです。
実際には経費は発生していないのだけれども発生したことにしてお金を出してしまう。一方、そのお金は裏金としてプールしておく。
組織としては予算を消化できますし、また一方で、裏金という自由裁量の効く資金つまり、何かあったときの蓄えを得ることもできます。
組織としては、正に一石二鳥です。
こうした公金を負担している人(納税者)からすれば、本来必要のない資金が特定の組織のためだけに支出されるばかりでなく、本来削減されるべき不要な予算までもが認められることになるわけですから、たまったものではありません。
こうした二重の無駄遣いを綿々と続けるのが「予算消化型組織」の考え方なのかも知れませんが。この理解に基づけば「裏金といったって組織のために使っている」という言い訳はできないはずです。
組織のためにやった行為が、組織の肥大化、税金の無駄遣いに拍車をかけているという事実に気が付くべきでしょう。
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共同ピーアール ワンマン経営の社長と他の取締役 2011年12月

 ワンマン経営そのものが問題なのではなく、ワンマン経営してはならない人がワンマン経営をしていることが問題なのでしょう。
 JASDAQ上場の共同ピーアールは、2011年12月26日、「取締役会への内部調査報告書の提出について」を公表し、「長きにわたって・・・社長が代表取締役の座にあった弊害・・・コンプライアンス軽視、体制の欠如は、そのまま社長の意思・・・、社長にモノ申すことが憚られる企業風土」を問題視して、元社長の不正を明らかにしています。
 この社長は、会社の業務以外にいろいろと投資や借金をしていたようで、個人的に資金捻出に窮し、「どこからか借りては借金を返す」ことを繰り返していました。会社のお金を個人的に流用したとされる本不正事例は、公私混同そのものであり、上場会社の社長としてはあるまじき行為です。
 この社長の不正にはS氏とK氏という取締役が荷担していました。この報告書ではS氏とK氏は社長の指示を断るべきであったとして、両氏の対応を問題視しています。
会社から引きだされた資金は、一度に15百万円~120百万円で、2009年12月から2011年10月までの間で433百万円に上ります。そのうち、直ちに返済されたものもありますが、返済されれば良いという問題ではなく、会社のお金を個人的に流用したこと自体が問題視されなければなりません。
この報告書の公表の翌日、この社長と不正に荷担したとされるS氏とK氏は取締役を辞任していますが、最後にこの不正に絡んだ疑問を示します。
 S氏とK氏の辞任理由は、「一身上の都合」とされ、「不正に荷担した責任」をとったとされていないのです。なぜか分かりません。また、辞任しなかった取締役の中で、S氏とK氏の立場にいたとしたら社長の指示を断固として断ることができた人物がいたのか、これもまた定かではありません。
辞任しなかった取締役は辞任した取締役に対して何を思うのでしょうか。
逆に、辞任した取締役は辞任しなかった取締役に対して何を思うのでしょうか。
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2011年11月 京王ズホールディングスの代表者不正

京王ズホールディングスは、東北地盤の携帯販売代理店で、保険販売やソーシャルゲームの他、介護事業にも進出する企業グループです。
平成23年11月、同社は第三者調査委員会による最終報告書を公表しました。この報告書によると、以下で示すような①利益の過大計上と②社長への資金流出といった問題があったようです。
① 利益の過大計上について
同社では、「売上が少ないから売上の架空計上する」、「利益を捻出するために経費を先送りする」といった典型的な粉飾手法がとられていました。もう少し具体的に示すと、以下の通りです。
・広告告宣伝費等15百万円を当期に計上すべきところ翌期に計上した。
・メーカーからの協賛金を偽装して67百万円の売上を架空計上した。
・焼き肉屋の店舗売上24百万円を架空計上した。
・不採算店舗を売却すると偽って固定資産売却益159百万円計上した。
・経費として計上すべき34百万円をソフトウェアに計上した。
・水増し計上した経費12百万円を裏金とした。
 こうした数多くの不正経理の内容を見ていくと、「赤字になりそうだから売上を架空計上し、利益が想定外に多いから経費を架空計上する」というように、経営者は思いのままに決算数値を操作していたように見受けられます。
「果たして監査法人は見つけられなかったのか?」と疑問を抱かざるを得ませんが、報告書を読む限り、これらの不正経理は種々の証憑書類の偽装が伴っていたようです。監査法人としても金額的に重要な取引は検証対象にしているはずですし、会社が行っている会計処理と請求書や納品書、社内の報告書や売買契約書といった取引の裏付けとなる資料とを照合してチェックしているはずです。
しかし、これらの取引の裏付けとなる資料が、経営者の指示の下で入念に偽装されている場合には、監査人はこの不正経理を見逃す可能性もあるのです。
② 社長への資金流出 
上記①はいわゆる粉飾ですが、②は資産の流用の問題です。②の資産の流用の結果、架空の資産が計上され、結果として①の粉飾と同様に、決算書に重要な虚偽表示がもたらされることがありますが、一般に不正は①粉飾と②資産の流用の隠蔽と二つのタイプに分類されます。
同報告書では、社長による資金流出を以下のように示しています。
敷金、建設協力金名目で197百万円の資金流出があり、そのうち33百万円が返金されています。結果として、差額の164百万円が社外に流出したことになります。
また帳簿外での資金流出が766百万円にのぼり、そのうち692百万円が返金されています。結果として、差額の74百万円が社外に流出したことになります。ここで強調したいのは、上記の資金流出と返金が、おびただしい数の取引によって行われている点です。
「自分の会社からお金を借りて何が悪い。」
「すぐに返すからいいだろ。」
非公開会社であれば、やむを得ない意識なのかも知れませんが、上場して多数の株主、債権者等がいる会社では、こうした意識は許されません。
なるほど、返さないよりも返した方がいいに決まっていますが、無断で会社の金を個人的に使うこと自体が問題視されなければなりません。
上記の他、この資金流出について注目すべき点は以下の通りです。
・預り証等の証憑を偽造して監査法人に証拠として提出した。
・不正に支出した資金は簿外の借入金の返済に充当した。
・建設会社からの返金を装っているが、実際は社長が振込手続を行った。
・実在しない人物との架空の不動産売買契約し、仮装の土地購入代金を不正支出した。
・資金流出の表面化を防ぐため高金利業者から借入を行い、決算期末(10月末時点)の預金の帳尻を合わせていた。
 この社長は非常にどん欲な方だったのでしょうか。
 目的を果たすためには手段を選ばない姿勢が伺えます。
 確かにビジネスで成功する人はどん欲な方が多いようですが、証憑書類を入念に偽装する等、大きく方向感を失ったこのどん欲さには、驚きを感じます。Taku 
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カードの無断作成 2011年12月26日

 アテクト(JASDAQ)は、社内で管理職不正があったことを公表しました。この不正の手口は、会社名義のカードを会社に無断で作成するという単純なものです。公表資料からは詳細な不正の手口は不明ですが、多数の口座やカードを作り、その代金決済を繰り返し続けていたとしたら、多額の私的流用が行われる可能性はあります。会社側は「発見は困難」としていますが、確かにそうでしょう。
 なにしろ業務を管理する側の人間が不正を行ったわけで、誰も知らないところでカードが作られて、勝手に使用されていたわけですから、会社側はその不正を知る由もないでしょう。
 こうした管理職不正は、どのように防止・派遣する仕組みを作るか、なかなか悩ましいモノです。
 管理職といっても、ある程度の配置換えや強制的な長期休暇等の不正防止ないし不正発見策を講ずる必要があるのでしょうね。


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ミネルヴァ・ホールディングス連結子会社での在庫横流し 2011年12月

ミネルヴァ・ホールディングス(JASDAQ)の連結子会社(ナチュラム・イーコマース株式会社)で社員による在庫の横流しについての開示がありました。

「在庫の横流し」は、会社の財産である棚卸商品を会社に無断で販売して、その売却代金を横領する典型的な不正の手口です。取り扱う商品が小型で持ち運び容易な場合や、簡単に資金化ができる場合に生じやすい不正です。

この事件では、ロッド(竿)やリールといった釣り具が不正の対象となったようです。
釣り具にはかなり高額なモノがあります。
不正実行者は、これらを会社から窃取して、自ら販売して金儲けをしていたようです。
同社の公表した資料によると、不正実行者は2006年1月~2011年8月の間で、153百万円相当の商品を搾取したとされています。
棚卸商品の不正防止のためには、入庫時や出庫時の数量管理の他、保管されている商品の現品視察(棚卸)といった管理体制を構築することが一般的です。また、棚卸商品は通常数量が多いため、ITシステムを利用して数量や単価の管理を行います。

この営業部長職の不正実行者は、こうした管理に対して、以下のような隠蔽工作を講ずることで不正発覚を免れていました。
① システムを不正操作して在庫数量のつじつま合わせをしていた。
② 商品の現物がないままに虚偽の入荷処理を行っていた。


まず①について、不正実行者は商品を会社に無断で処分しているのですから、商品の現現品が減少していることになります。そこで不正実行者は、棚卸の際に不正が発覚しないよう、システム上の帳簿数量を操作していました。

 特に竿やリールは組み合わせて販売することが多いようで、その組合せや解放(組合せをやめて個々の竿やリールとして管理し直すこと)の際に、数量を誤魔化していたようです。本来であれば扱う商品の特徴に応じた在庫管理方法が望まれるところですが、システム上の弱点をつかれた形になりました。

 一方②について、仕入先から送付された商品を不正実行者が無断で持ち去っている場合には、会社に入荷されるはずの商品が入荷されないことになります。ところで一般の会社では、入荷されていない商品に対して支払いをしない仕組みを構築しています。これは、商品の現物を確認した上で入荷処理(いわゆる検収作業)を行い、その入荷処理済みの商品について仕入先に支払いを行う仕組みです。

 同社でも同様の仕組みがあったようですが、この不正実行者は、社内の者(不正に関与したとの認識はない模様)に対して、窃取した商品の合計金額と合致するよう虚偽の入荷処理を行わせていたようです。

この点が不正発覚を遅らせた原因にもなったようですが、商品の現物がないまま虚偽の入荷処理をすれば、窃取した商品に係る仕入先からの請求金額に対応する入荷記録を作成できますから、「入荷処理した商品について支払いを行う」ことになり、仕入先への商品代金の支払い処理の段階において、不正発覚はできなくなります。

 このように本来不正を防止・発見するために構築した内部統制という仕組みを無機能化することが行われていました。

<なぜ発覚しなかったのか、そして、なぜ発覚したのか>

 本件の興味深いところをもう一つ示します。
 会社側は、本件不正行為が約5年半にわたり発覚しなかったことについて、「巧妙な隠蔽工作」があったことをあげていますが、一方で、発覚に至った原因について、不正実行者が「不正操作の方法を変更したこと」をあげています。
 こうした説明を逆手に取ると、「不正実行者が不正操作の方法を変更しなければ、不正の発覚はさらに遅れていた」ことになります。
要するに不正実行者が「馬脚を現した」ということでしょうか。

 不正実行者は、当初「実際に販売されることはない・・・商品名を付けたセット商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。この場合、当該セット商品の在庫が増加しても、不要な入荷であるとして不審を抱くような事態は起こり得なかったとされています。

 一方、変更後の手法では、「実際に・・・仕入れを行っている商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。その結果、「なんでこんなに高額な商品を仕入れているのだ」「顧客からの需要を大きく越える入荷がなされているぞ」という社内の担当者の不審が社発覚の原因のようです。

 要するに、商品名の名称の問題のように見受けられます。 

 それでは、なぜ不正操作の方法を変更したのか?
 この点は、不正実行者は曖昧な回答に終始しているようです。

不正は隠蔽工作を伴うことが一般的です。隠蔽工作は数値の意図的な変更や偏向を招きます。それらが不正の兆候となるのです。
「何でこれが増えているの?」「もっと安くても良いんじゃない?」「異常に高額だな?」
そうした「気づき」が不正発覚の糸口になるのかも知れません。
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2011年12月 ナノ・メディアにおける会社資金の不正支出

外注先に架空の発注を行い、仮装した請求に基づいて代金を支払い、役員個人の口座に環流させる手口は、不正の典型的なパターンです。

 ナノ・メディアの元取締役は、自らが決裁して外注を発注し、一部外注の事実のない支出(総額30百万円)を行いました。この不正支出は元取締役の口座に環流していました。

 この種の不正は「一人の不届き者」が問題とされ、組織的な犯罪とは一線を画します。

役員クラスまで登りつめた方が、なぜこうした不正に手を染めてしまったのか。

やや理解に苦しむところですが、この事件で着目される点は、国税局の調査を発端としてこの不正が発覚したことです。

通常、税務調査というと会社は抵抗感を抱きますが、本件は会社からすれば大変ありがたい税務調査になったことでしょう。この国税局の調査で発見されなければ、不正による被害額がさらに多額になっていたかも知れないからです。

 ちなみに同社は、この不正支出が発生した原因について、取締役会の決裁機関としての機能が不十分、稟議書制度の運用の不徹底、取引先の選定等に係る手続上の問題をあげています。

 不正を防止するには「魔が差さないようにすることが重要」と言われますが、不正を防止する仕組みである内部統制を構築するのが役員である以上、その役員の不正の防止には限界があるといわれます。

役員に対する不正防止策を検討する以前の問題として、役員としての資質が問題視されるべきなのかも知れません。
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2011/11/11 大王製紙調査報告書を読む -監査役と監査法人の責務-

大王製紙株式会社元会長への貸付金問題に関する特別調査委員会の調査報告書が10月27日に公表されました(http://www.daio-paper.co.jp/news/2011/pdf/n231020a.pdf)。一読して残念なのは、本件貸付が行われ、かつ早期に発見・防止されなかった原因の分析・評価(コンプライアンス・ガバナンス上の問題の検討を含む)と、目的にうたわれているにもかかわらず、会社の機関がどのような役割を担い、その職務を全うすべきかについての記述が少ない点です。先の目的を達するためには現在の役員の拠るべき善管注意義務の水準を明らかにしない限り、評価のしようがありません。各機関の行動水準をどこに置いているのかが、さっぱりわからず、役員の責務の高度性がつたわってきません。

1.子会社の計算書類について
 子会社の計算書類等が調査対象資料に記載されていません。会社法に規定する計算書類等を適正に作成されているか否かが調査対象となっていません。役員との取引は事業報告書に記載すべき内容ですが、それが適正に作成され、株主に通知されたのか否かがまったくわかりません。子会社のガバナンスの実態、取締役および監査役の責任を先入観なく調査するに当たって、始めの一歩が行われていないのは驚くべきこととしか、言いようがありません。

2.監査役について
 会計監査人が会計監査を担い、監査役が業務監査を担う、と会社法では規定されています。それにもかかわらず、監査役の本件取引への行動については、わずかに「常勤監査役は特段の注意を払わなかった。関連当事者との取引において、本件貸付の事実が記載されていることに注意は及ばなかった」と、記載するのみです。その原因は明らかでなく、その責任も「他の取締役及び監査役」の項で、「本件貸付を防止すべき任務を十分果たしていたとは評価できない役員についても、相応の責任がある」と記載するだけです。結果、改善提言は「社外監査役に適切な情報を届けるべき役割を担う人々が、その役割を果たし、監査役会に問題を報告し、注意を喚起する」こととしており、監査役固有の責任については、言及していません。
取締役の利益相反取引の監視・検証は、会社法上明示された監査役の義務です。監査役は株主総会で監査報告書をもって監査結果を報告します。そこでは「取締役の職務の執行に関する不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められません。」とうたっています。また、旧商法の監査報告書では。取締役の競業取引、取締役と会社間の利益相反取引、会社が行った無償の利益供与、子会社又は株主との通例的でない取引並びに自己株式の取得及び処分等についても取締役の義務違反は認められません。と記載されていたほど、監査役監査の重要な対象です。これをうけ日本監査役協会の監査役監査基準においても取締役の利益相反取引の検証を義務づけています。関連当事者との取引の網羅性、調査手続きの適正性、本人への確認手続き等をチェックすることは、監査役が当然実施しなければならない業務監査項目です。その意味で、この不祥事について第一に責任を担うのは子会社及び親会社の監査役であるはずです。監査役はこれを防止するための期間として設立されているといっても過言ではありません。それにもかかわらず、有価証券報告書に記載されている子会社と役員との取引について、見もしない、ということについて、どのような監査手続を行って、結論に至ったのかについて、まったく触れていないのは、第三者委員会が、監査役の任務を承知していないのか、あるいは誰かにに遠慮をしているのかと、いずれかと思わざるを得ません。

2.会計監査人について
 「監査法人の業務に~問題があったから、適切な対応をするよう検討すべきである。」とし、その対策として監査役会に問題点を報告することを報告書は、提言してい。
 これも会計監査人固有の責任が何かについて、わかっているのだろうかと、疑問を覚えざるを得ません。金融商品取引法が改正され、いわゆるJーSOX法が適用されて以降は、監査法人が実施する監査に会社の内部統制の有効性が加わりました。ここではまず、会社の全社的内部統制を検証することが求められいます。そしてこの全社的内部統制の検証において、監査役がどのような役割を果たしているか、は基本的な検証項目です。本件取引は監査役の業務監査が有効に機能しているかを判断するにあたり、監査役に対する格好の質問事項です。にもかかわらず、監査法人は本件取引について、質問も行わず、全社統制が有効と判断していたのか、これこそが問われなければならない事項です。ガバナンスにおける監査役の機能を検証せずに、全社的内部統制は判断できないでしょう。この点に触れない報告書はどのようなレベルで会計監査をとらえているのか、まったくわかりません。

 法定事項を実施しているかを調査せず、さりとて各業界が示している水準での意見もなく、この事件が教訓となって通常のレベルでのガバナンスが果たすべきものとは何かが明らかにされなかったのは、はなはなだ残念です。

                                               Tetsu
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2011/11/1オリンパス -アルティス社買収時の株主価値算定報告書と経営責任-

オリンパスの損失隠し事件に関連して、同社が288億円で買収したアルティス社の株主価値算定報告書が2011年10月20日ネット上に公開されました(http://facta.co.jp/blog/archives/images/altis_Japanese.pdf)。
 これで、取締役会がまったく機能していないこと、現役員(取締役と監査役)は全員、善管注意疑義務を果たした経営を行っていないことが明らかになり、全員が退陣を余儀なくされることでしょう。
 企業価値の評価は、金の卵を産むガチョウの評価と同じというのが、現在の定説です。毎年、卵を何個産むか、それはいくらで売れるのか、そこから飼料代等を引いて手元に残るお金はいくらか。これにより金の卵を産むガチョウの評価が決まります。これと同様、企業価値も毎年いくらのキャッシュを生み出すのかによって、評価するのが定番のディスカウント・キャッシュ・フロー評価法(DCF法)です。この評価を決定づける重要な要素は、事業計画と加重資本平均コスト(WACC)です。WACCは技術的側面があるため、専門家の意見が重視される側面がありますが、金の卵を何個産むかについて、すなわち事業計画については、経営陣が十分に検討すべきことです。公開された株主価値算定報告書での事業計画では2008年の売上高631百万円、当期損失5百万円が2012年売上高193億円、当期利益42億円と急激な伸びを示しています。これを実現するための具体的な経営計画(市場、営業戦略、人材等々)についての検証は、買収承認時の取締役会で当然審議するべき事項です。このとき強気・積極的なケースや弱気・保守的なケースを審議し、買収金額の妥当性の金額範囲を決することが取締役会に求められていることです。これを怠れば、善管注意義務を果たしたことにならず、経営判断の原則からも逸脱していることになります。これを怠れば、善管注意義務を果たしたことにならず、経営責任の原則からも逸脱していることになります。
 損失隠しに荷担しなかった取締役と監査役も、買収時に何も検討しなかったことが明らかになった以上、その責任を取ることは不可避となるでしょう。
                                                Tetsu
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ミネルヴァ 在庫の横流し



ミネルヴァ・ホールディングス(JASDAQ)の連結子会社(ナチュラム・イーコマース株式会社)で社員による在庫の横流しについての開示がありました。

「在庫の横流し」は、会社の財産である棚卸商品を会社に無断で販売して、その売却代金を横領する典型的な不正の手口です。取り扱う商品が小型で持ち運び容易な場合や、簡単に資金化ができる場合に生じやすい不正です。

この事件では、ロッド(竿)やリールといった釣り具が不正の対象となったようです。

釣り具にはかなり高額なモノがあります。

不正実行者は、これらを会社から窃取して、自ら販売して金儲けをしていたようです。

同社の公表した資料によると、不正実行者は2006年1月~2011年8月の間で、153百万円相当の商品を搾取したとされています。

棚卸商品の不正防止のためには、入庫時や出庫時の数量管理の他、保管されている商品の現品視察(棚卸)といった管理体制を構築することが一般的です。また、棚卸商品は通常数量が多いため、ITシステムを利用して数量や単価の管理を行います。

この営業部長職の不正実行者は、こうした管理に対して、以下のような隠蔽工作を講ずることで不正発覚を免れていました。



① システムを不正操作して在庫数量のつじつま合わせをしていた。

② 商品の現物がないままに虚偽の入荷処理を行っていた。



まず①について、不正実行者は商品を会社に無断で処分しているのですから、商品の現現品が減少していることになります。そこで不正実行者は、棚卸の際に不正が発覚しないよう、システム上の帳簿数量を操作していました。

 特に竿やリールは組み合わせて販売することが多いようで、その組合せや解放(組合せをやめて個々の竿やリールとして管理し直すこと)の際に、数量を誤魔化していたようです。本来であれば扱う商品の特徴に応じた在庫管理方法が望まれるところですが、システム上の弱点をつかれた形になりました。

 一方②について、仕入先から送付された商品を不正実行者が無断で持ち去っている場合には、会社に入荷されるはずの商品が入荷されないことになります。ところで一般の会社では、入荷されていない商品に対して支払いをしない仕組みを構築しています。これは、商品の現物を確認した上で入荷処理(いわゆる検収作業)を行い、その入荷処理済みの商品について仕入先に支払いを行う仕組みです。

 同社でも同様の仕組みがあったようですが、この不正実行者は、社内の者(不正に関与したとの認識はない模様)に対して、窃取した商品の合計金額と合致するよう虚偽の入荷処理を行わせていたようです。

この点が不正発覚を遅らせた原因にもなったようですが、商品の現物がないまま虚偽の入荷処理をすれば、窃取した商品に係る仕入先からの請求金額に対応する入荷記録を作成できますから、「入荷処理した商品について支払いを行う」ことになり、仕入先への商品代金の支払い処理の段階において、不正発覚はできなくなります。

 このように本来不正を防止・発見するために構築した内部統制という仕組みを無機能化することが行われていました。



<なぜ発覚しなかったのか、そして、なぜ発覚したのか>

 本件の興味深いところをもう一つ示します。

 会社側は、本件不正行為が約5年半にわたり発覚しなかったことについて、「巧妙な隠蔽工作」があったことをあげていますが、一方で、発覚に至った原因について、不正実行者が「不正操作の方法を変更したこと」をあげています。

 こうした説明を逆手に取ると、「不正実行者が不正操作の方法を変更しなければ、不正の発覚はさらに遅れていた」ことになります。

要するに不正実行者が「馬脚を現した」ということでしょうか。



 不正実行者は、当初「実際に販売されることはない・・・商品名を付けたセット商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。この場合、当該セット商品の在庫が増加しても、不要な入荷であるとして不審を抱くような事態は起こり得なかったとされています。

 一方、変更後の手法では、「実際に・・・仕入れを行っている商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。その結果、「なんでこんなに高額な商品を仕入れているのだ」「顧客からの需要を大きく越える入荷がなされているぞ」という社内の担当者の不審が社発覚の原因のようです。

 要するに、商品名の名称の問題のように見受けられます。 

 それでは、なぜ不正操作の方法を変更したのか?

この点は、不正実行者は曖昧な回答に終始しているようです。



不正は隠蔽工作を伴うことが一般的です。隠蔽工作は数値の意図的な変更や偏向を招きます。それらが不正の兆候となるのです。

「何でこれが増えているの?」「もっと安くても良いんじゃない?」「異常に高額だな?」

そうした「気づき」が不正発覚の糸口になるのかも知れません。
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 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
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