山陽特殊製鋼事件 1965年

古い話ではありますが、山陽特殊製鋼事件は歴史に名を残す戦後最大の粉飾事件ですので取り上げました。

1965年、山陽特殊製鋼は、会社更生法を申請し、上場廃止となります。
この事件は、当時としては最大の負債総額500億円の大型倒産としてマスコミでも大きく取り上げられ、社会問題になった有名な事件です(また、この事件は「華麗なる一族」(山崎豊子作1974年、2007年の2度ドラマ化)のモデルになりました。)。
1965年(昭和40年)は、オリンピック後の第一次高度成長の終わりの時期で、戦後最大の不況と呼ばれた時代です。その前の年にサンウェーブ工業の粉飾倒産事件もあり、大型の粉飾事件が発生した時期でもあります。
同事件による影響もあって、当時の監査実務は大きな変革期にありました。
組織的監査を行うこと目的とした監査法人制度が導入されたのが1966年(昭和41年)ですし、売掛金の確認や棚卸資産の立会が通常の監査手続として位置づけられたのもこの時期です。
また、昭和40年代の子会社を利用した粉飾事件の多発を受けて、1975年(昭和50年)に「連結財務諸表原則」の公表により、上場会社等に連結財務諸表の開示が義務づけられました。さらに1974年に当時の商法が改正され、非上場会社であっても大会社については公認会計士又は監査法人による会計監査が義務づけられました。
山陽特殊製鋼事件は、こうした法規制強化の遠因として位置づけられているのです。

この事件の粉飾の手法は多岐にわたりますが、基本的に資産の架空計上や負債の簿外処理、架空の子会社に対する売上計上等による利益の嵩上げが主な手法だったようです。
 具体的な粉飾手法を仕訳で見てみましょう。
粉飾の具体的な手法を仕訳で見ると、架空売上であれば、
(借)売掛金×× (貸)売上高××
となります。また、実際には出荷していない在庫を払い出したことにするため、
(借)売上原価××(貸)棚卸資産××
という仕訳が必要になります。
上記仕訳は、とても自然なのですが、この粉飾事例では「とても異様な仕訳」も起票されています。ある程度、会計を勉強されている方であれば、以下の仕訳の異様さが理解できるでしょう。
(1)(借)借入金××  (貸)売掛金××
(2)(借)買掛金××  (貸)売上高××
(3)(借)固定資産×× (貸)支払利息××
上記仕訳は実態を示しているわけではなく、あくまで粉飾を意図したものですから、仕訳だけを見ても一体、何が起きているのかハッキリしません。上記仕訳の意図は以下の通りです。
(1) 架空計上した売掛金を消去するとともに、実在する借入金を簿外化する。
(2) 売上を架空計上するとともに、買掛金を簿外化する
(3) 営業外費用として計上するべき支払利息を有形固定資産に計上する
 このように資産の架空計上、負債の簿外化により、利益を嵩上げしたのです。
 当時の修正貸借対照表によると、同社の資産の過大計上は98億円(①売掛金過大計上39億円、②有形固定資産過大計上69億円、③棚卸資産過少計上11億円)、負債の過小計上は20億円、その結果、純資産の過大計上は118億円にのぼります。
 ちなみに修正仕訳を示すと以下のようになります。
(借) 純資産 118億円   (貸)資産 98億円(架空計上資産の取り消し)
                  負債 20億円(簿外処理負債の計上)
 なお、資産の過大計上98億円のうち、①は架空の売上計上に伴うもので、②は支払利息の有形固定資産計上や減価償却の過小計上、③は棚卸資産として計上すべき在庫を売上計上したものが主です。
粉飾事件で問題となった会社は、少なからず破産して世の中から消滅してしまうものですが、同社はその後、1973年に会社更正手続を終結し、1985年に東証一部再上場を果たします。
2011年3月期の同社の連結売上高1,595億円、経常利益133億円、従業員数2,858人です。Taku
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