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2019年3月 大和ハウス工業の関連会社における不正

 大和ハウス工業株式会社(東証一部)は、「中華人民共和国の関連会社における不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 大和ハウスの関連会社である大連大和中盛房地産有限公司(中国大連市)において、預金残高と帳簿に差異があることが発覚し調査したところ、合弁先の大連中盛集団有限公司から派遣されている取締役ならびに出納担当者(計3名)による不正の疑いがあるとのことです。関連会社は不正実行者3名に対して、刑事告訴の手続きに入りました。
 預金残高と帳簿の差異の原因は、不正な会社資金の引き出しであり、現時点で判明しているその差額は234億円(14.15 億元)です。
 当該会社は、大和ハウス工業の持分法適用関連会社であるため、上記の差額が不正流用でありその全額が回収できなかった場合には、約117 億円の持分法投資損失(経常損益)を計上する見込みとのことです。
 同社は、再発防止策として、①第三者委員会の設置(全容解明、再発防止策の検討)、②海外でのリスクマネジメントの強化(海外のグループ会社においても平時のリスクマネジメントに加え、有事の際の危機管理にも対応させる)を掲げています。

 なんとも不幸な事件です。
 これほど単純な不正はありません。
 再発防止策は「預金残高と帳簿残高を定期的に照合する」というコントロール1つで済むかもしれません。しかし、本不正はあまりに金額が大きいため、こうした単純なコントロールのみでは不釣り合いなのでしょうか?
 また、同報告書では「当社は、役員・従業員の派遣や会計監査人による監査を通じて会社の運営状況を確認しておりました。しかしながら、長年にわたる合弁事業において業務執行を合弁先に依存していたことで、このような事態を招いたことから、今後は関連会社の内部統制システムについても、見直しを行っていく方針です。」としてあります。
 
 もしかしたら、会計監査人のによる監査に不備があるかもしれません。
 また、業務執行を合弁先に依存していたとしても、年に一度でも残高証明書等と照合すれば発覚できたのではないでしょうか? それとも、巧妙な隠蔽工作が伴っていたのでしょうか?
 第三者委員会の全容解明が待たれます。Taku

2019年2月 いなげやの従業員不正

 スーパーマーケット事業を営むいなげや(東証一部)が従業員不正を公表しました。
 発覚は内部通報だったようです。
 公表資料では、2015年4月~2018年11月にかけて、従業員3名が、①在庫金額の嵩上げ、②計上時期の変更、③不要な商流の介在により、④社内業績目標達成や、⑤私利を図ることを目的としていたようです。
 このうち、④社内業績目標の達成は、粗利を上げればよいので、①在庫金額の嵩上げや②の在庫の計上時期の変更(計上時期の遅延)といった手法が想定されます。また、⑤の私利を図るには、④社内業績目標の達成による報奨金等の収受も想定されますが、③不要な商流の介在に起因した在庫の横流しか、当該商流の購入に係るインセンティブ等の着服・又は当該商流に係る販売代金の着服といった不正手法が想定されます。
 いずれにしても、①②③を手段として④⑤の目的を達成していたとのことで、それぞれ複合的に関連付けられるのでしょうが、そうした詳細は本報告では不明です。
 ちなみに、スーパーマーケットは、回転期間の著しく速い多品種少量の在庫を多額に保有する特異な業界です。生鮮食品の消費期限切れによる処分と従業員の持ち帰りの峻別の必要性や、従業員・客の万引き、売価還元法という簡便的な在庫金額の算定手法等、特異な管理が必要なケースが多いようです。
 会社は、本不正について、2018年11月に社内の調査委員会にて調査を開始し、2019年2月に社内規則違反を確認、取締役会にて処分を決定しました。

 私は、単純にこうした軽微な不正を公表する必要があるのか疑問を持ちます。
 一般的な公表基準としては、過去に何度か指摘していますが、「上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株検討に関する重要な事実であって、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすものが生じた場合」が該当します。今回の不正は、金額的にもほとんど重要性はなく、投資者の判断に影響を及ぼすことは考えられません。
 この点、会社は、「今回発表を行ったのは、公正な調査を実施するため関係者による隠蔽防止の観点からであります。」としています。つまり、公表を前提とすることで、本調査が厳正に行われることを期待したのでしょう。これも経営判断でしょうし、軽微なものでも開示する姿勢の方が社会的に信頼されるのかもしれません。
 果たして、不正実行者の2名は懲戒解雇、1名は懲戒処分(降職)の処分を受けました。
また、管理監督責任として2019年2月に専務取締役営業統括が辞任しています。
 会社は、本不正についての問題点として、社内チェック・牽制体制に不備があったこと、従業員に対するコンプライアンス教育が不十分であったこと、人事ローテーションの適切な実施がされていなかったことが原因としています。
 なるほど、その通りでしょう。
 
 最近、ファスト・フードやレストラン等の店員による、単に「悪ノリ」とは言えないような見苦しい映像を目にすることがあります。こうした愚かしい店員は、「一般の人がみたらどう思うのか」「自分がやったことが社会に知れるとどうなるか」という想像力が欠如しているのでしょう。
 会社としては、会社の信用を毀損したことについて刑事告訴も辞さない厳正な態度で対峙すべきでしょう。そうした法規を遵守させる雰囲気を経営者が作ることが、会社と店員を守ることにもなるのでしょう。Taku

2019年1月 カルロス・ゴーンと日産と三菱自動車(さてどうなるか?)

 以下、日産自動車の公表した資料からの抜粋です。
 2019年1月11日、元代表取締役会長カルロス・ゴーンは、金融商品取引法違反(2015 年~2018 年の虚偽有価証券報告書提出罪)及び、当社を被害者とする会社法違反(特別背任罪)により起訴されました。また、日産自動車は、カルロス・ゴーンの会社法違反について、東京地方検察庁に対し、刑事告訴をしています。
 告訴にかかる犯罪事実は、カルロス・ゴーンが自己の資産管理会社と銀行の間で締結していたクーポンスワップ契約において多額の評価損が生じたことから、この契約の当事者たる地位を当該資産管理会社から当社に移転させた事実と、サウジアラビア王国所在の法人名義の口座に対し、当社の業務との関係で支払の理由が認められない合計1,470万米ドル(約16億円)を送金させたという、2つの事実からなるものです。
 敢えて会社公表の資料を引用しているのは、マスコミの報道合戦もあってか、種々の情報が錯綜しているためです。カルロス・ゴーンの強気の姿勢もあり、また長期の拘留に対する批判的な見解(我が国の刑事告訴手続への批判等)も相まって、「もしかしたら見解の相違なのでは?」「検察側の勇み足ではなかったのか?」という論調のマスコミも現れてきた感じがします。
 
 マスコミは「真実は何か」という視点を重視すべきですが、報道機関によっては「どう報道したら面白いか」という悪い癖を出します。また、マスコミは平易に報道することを重視する余り、細かく伝えない限り正確に表現できない事実を、安易に総括して自ら誤解しつつも堂々と報道することがあります。
 これらの点には十分に気を付けながら、新聞なり、ニュースなりを読まなければなりません(決して「新聞に書いてあったから」と鵜呑みにする姿勢は厳に慎まなければならいません)。

 一方、三菱自動車は、「当社取締役前会長による不正行為に関する内部調査結果について」を公表し、ゴーン氏が日産自動車と同様の不正行為が行われていないか、内部調査の結果を公表しました。
 それによると、三菱自動車と日産自動車とが折半出資で 2017 年6月に設立したオランダ法人(Nissan-Mitsubishi B. V.)から、ゴーン氏が Managing Director 報酬名目等で不正に金銭の支払を受けていたことが判明したとのことです。
 上記のオランダ法人は、三菱自動車と日産自動車の協業によるシナジー創出の促進を目的として設立され、その目的のため、2018 年 4 月、両社で合わせて約 1,562 万ユーロ(訳21億円)を同社に支払っています。カルロス・ゴーンは、この資金を原資として、782 万ユーロ(約 10 億円)の支払を不正に受けていたとのことです。この支払いの名目は雇用契約による報酬等のようですが、本決済は権限のない者により行われており、手続が適正に行われていないとの指摘もあります。
 三菱自動車としては、日産自動車とも協力して、ゴーン氏に対する責任追及を検討してまいります、としています。
 
 不謹慎ではありますが、心のどこかで日本の企業としての日産を応援しています。
 「やっちゃえ日産」は矢沢永吉のセリフですが、私は素直に「がんばれ日産」と応援しています。
 検察は? 三菱自動車は?
 これらはあまり興味はありません。検察も、三菱自動車も、過去の事件からか、正直、好きな組織ではありません。
 いずれにしても、今後の動向に注目しましょう。Takun

2018年12月 従業員不正 ネクステージとハピネス・アンド・ディ

今年はとても忙しい年でした。ほとんど更新できずに残念でしたが、この暮れに来て、2件の不正が公表されていましたので、紹介しましょう。

 新車・中古車の販売及び修理を手掛ける名古屋市の株式会社ネクステージ(東証一部)は、「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 その資料によると、不正行為を行った元従業員が同社名義で契約を行った結果、同社は「契約を行っていない車両代金の支払いを業者から求められ」ているようです。
 「現時点で判明している不正な契約に関する合計金額は約1億6千万円」とのことです。
 車両は横流しされるリスクが高く、また悪徳業者による取り込み詐欺的な取引が発生することも多いようです。また、販売担当の従業員による不正も多いことから、内部統制の構築には固有の注意を払う必要があります。
なお、同社は20年ほど前に現代表取締役が輸入車販売を目的に資本金300万円で有限会社からスタートした会社です。2017年11月期の売上は1,197億円、経常利益は33億円ですから、同社は一気に業績を拡大してきたのでしょう。同社は11月決算です。今回の不正の影響も決算に織り込むようですが、金額的にも大きな影響は与えないと思われます

 ブランドショップの展開を手掛ける株式会社ハピネス・アンド・ディ(JASDAQ)は、「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。その資料によると、店舗の店長であった従業員が高額商品の着服を行っていたようです。現在判明している範囲での被害総額は約 55,000 千円とのことです。
 同社の2018年8月期の売上高は203億円、経常利益は4億9千万円ですから、やや影響額は大きそうな額です。
 同社は「記念品を演出する「Happiness」、贈る人の「ときめき」を伝えます」をキャッチフレーズとしており、誕生日や結婚記念日、入学、就職等の人生の節目に送るプレゼントを手掛けています。取り扱う商品の中には、ブランド品のバックや時計、宝飾品等の高額なも含まれているでしょうから、やはり不正に流用される可能性が高く、内部統制の構築に際して注意が必要とされます。

 車にしてもブランド品にしても、不正の対象になりやすい商品を扱っている会社は、不正の防止のために種々の工夫をしているようです(実は私も今年の11月から12月にかけて、とある宝飾品を扱う会社の不正調査に関与しました。その会社での不正は、上記の「従業員不正」とは異なり、「経営者不正」でした。この事例の詳細を紹介するのは、また別の機会にしたいと思います)。
 この年の暮れに2件の同様な不正が公表されていたのは、単なる偶然なのでしょうが、いずれも具体的な調査結果を踏まえて、再発防止策が公表されることでしょう。こうした商品を扱う会社は参考にする必要がありそうです。

 今年も良い年となりました。来年はもっと良い年にしたいと思います。良いお年をお迎えください。Taku

2018年10月 マツモトキヨシ医薬品の窃取~適時開示情報とすべきか?

 2018年9月、マツモトキヨシホールディングスは、連結子会社の「ぱぱす」の元従業員が、医療用医薬品の窃盗を行っていたと開示しました。
 開示書類によると、ぱぱすの調剤業務管理者であった元従業員が営業時間外に店舗に侵入し、医療用医薬品を窃取し、現金問屋に転売していたものです。本不正行為を行った元従業員は、既に懲戒解雇としており、今後、刑事事件を含め、その責任を追及するとのことです。被害額は軽微で、今後調剤室の監視体制を強化等の再発防止策に取り組むようです。
 この開示情報を読んで考えたことは2つです。
 まず、「はたして、開示する必要があるのか?」です。
 この点、開示資料は「医療用医薬品を取り扱う調剤事業の管理者である者が行った不正行為であることを鑑み、お知らせする」とあります。ということは、盗難品が「医療用医薬品」でない場合や、不正実行者が「管理者」でなければ開示しなかったことになるのでしょう。
 次に、「なぜ、1年も前の窃盗事件をいま、開示するのか?」です。
 この点、開示資料は、「慎重な調査…厳格かつ綿密な再発防止策の策定及びその実施…警察への捜査協力」を公表までに一定の期間を要した理由としています。ということは、1年もの間、この軽微な窃盗事件ついて、調査、再発防止、捜査協力をしていたというのでしょう。
 確かに「ぱぱす」は日用雑貨品なども販売していますし、パートやバイトの他、お客も含めれば、万引き等の窃盗は日常茶飯事でしょう。それらを逐一、適時開示するのは煩雑に過ぎますし、警察の捜査には長い時間が掛かるのが通常ですから、開示のタイミングを考えることも必要です。

 しかし、1年も前の軽微な窃盗事件を適時開示情報とすることへの違和感は拭い切れません。むしろ私は、本件を適時開示情報とすべきではなかったと考えます。
 というのも、適時開示情報は金融商品市場において投資者にとって有用な最新の投資関連情報を迅速、正確かつ公平に提供するものです。当然、軽微な情報(例;業務遂行の過程で生じた損害については損害額/純資産<3%の場合)については、開示不要とされます(単純にこの量的基準に照らして開示の要否を判断するのでなく、実質的に判断すべきことはいうまでもありません)。
  「開示した方が無難だろう」という判断が、「開示しなかったとの非難を避けたい」という意識から生じたものであれば問題です。なぜなら投資関連情報として全く不要な情報があたかも重要な情報のように取り扱われてしまうからです。
 「日常茶飯事に生じる万引きは適時開示情報として適切ではない」という判断も、実はとても重要な開示上の判断なのです。
 何でも開示すればよいと言うわけではなく、経営陣が責任を持って「これは投資情報として重要である」と判断する必要があるのです。Taku

2018年8月 AIの進歩が会計専門家の業務に与える影響

 先日、「プロフェッショナルジャーナル」という雑誌に表題の記事を寄稿しました。
「不正事例研究会」の趣旨とはズレますが、掲載します。参考まで。

1 AIの目覚ましい進歩
 最近の下記の事象を見ると、AIの進歩は目覚ましいことがわかります。
・囲碁の世界チャンピオンや将棋の名人がAIに負けました。
・放射線画像診断では、AIは人間の認識力を超越しています。
・人間の手を借りつつも、AIが「星新一賞」の一次審査に合格しました。
・東大合格は無理でも、AIは中堅の大学の合格レベルだそうです。
 こうしたことから「シンギュラリティ(この用語は、一般にAIが人知を超える状況として使用されています)の到来」を予言する方もいるようです。しかし、下記の2を理由として、「ここ数十年の間は、シンギュラリティは到来しない」というのが専門家の大方の意見のようです。

2 AIの限界
 AIによる小説や絵画は、多くのデータから見出された規則性に基づく「模倣」であって、創造的なものではありません。画像認識や碁将棋についてもビッグデータを利用した限定した作業に特化した力であって、汎用性があるわけではありません。
またAIには、
・「読む」(文書を読解して筆者の意図を把握すること)
・「書く」(自らの考えを他人に適切に伝えるために、文章にまとめること)
・「聞く」(人の話を聞いて、その人の考えを理解すること)
・「話す」(人に理解してもらうように話すこと)
 というコミュニケーション力に限界があります。「Siri」や「りんな」、「シャオアイス(Xiaoice)」といったAIを利用した技術は、そのアルゴリズムによって会話が成立しているように見えるだけで、実際に人間の気持ちが通じているわけではありません。
 さらにAIは、法的に責任主体にはなれません。仮にAIが人間の理解を超える作業をできるとしても、その責任はAI自身ではなく、そのAIを利用した人間が負うことになります。

3 会計・税務・監査とAI
 一般に会計は「領収書・請求書」などの証憑書類に基づいて、これを仕訳として起票し、それらが集計して試算表を作成する業務です。また、税務では決算数値に基づいて課税所得・税額を算出し申告書を作成します。さらに監査では、重要な虚偽表示の有無の検証を通じて、一般に公表される財務諸表の適正性について意見を表明します。
 こうした専門業務の中で、例えば、証憑を画像認識して自動で仕訳を起票することや、申告書の作成、不規則な入力の有無のチェック・異常な増減の把握等の作業は、既にAIの利用により格段に効率化されています。
 一方で、例えば「タクシーの領収書」の入力作業であっても、単純に「交通費」となることもあれば、接待交際のためのタクシーであれば「交際費」とすべきこともあります。また画像を取り込んで自動起票された仕訳であっても、その入力の適切性の検証のためのチェックが必要です。
 申告書の作成もある程度の自動化は可能ですが、特例の適用の可否など、機械的に特定の処理を選定できない場合も少なくありません。さらに監査では、経営者の主張が適切に財務諸表に反映されているかを実質的な見地から判断することが求められることもありますから、答が1つに絞られないような厄介な判断を伴うことも想定されます。

4 会計専門家の魅力とAIの限界 
 筆者は、「税理士」という資格は、経営者の右腕として、経営者に助言・勧告する役割を担った「参謀」だと考えます。孤高の経営者が特に「お金に関する問題」について、心を許して相談できる専門家こそが税理士の理想像だと考えます。
 また、公認会計士は「保証人」です。「皆さん、ご安心ください。この経営者が財務諸表上で主張していることは正しいですから。」という保証です。この保証を行うには、公認会計士と経営者との間に強い信頼関係が必要です(監査人を騙そうとする経営者の主張の保証など、できるわけはないのです)。
 「参謀」にしても「保証人」にしても、その役割を全うするには、経営者との密接なコミュニケーションが必要です。その結果、専門家としての判断について責任を負うことがその専門家の仕事であって、その対価として報酬が支払われるのです。
コミュニケーション力に限界があって、かつ責任主体にもなれないAIは、残念ながらこうした役割を担うことはできないのです。

5 AIの進化と会計専門家
 「AIが進化すれば会計専門家はいらない」と考える人は、「会計を単純な作業にすぎない」と捉えているのかもしれません。高い報酬を払わずとも「決算書は機械的に作成できる」「申告書なんて誰が作っても同じだ」「監査判断は画一的だ」と考えれば、「AIが全部やってくれるから会計専門家は不要だ」と考えることもできるのでしょう。
 もちろん、作業の効率化の観点から、AIが会計専門家の業務に大きな影響を与えることは必至です。
 しかし、AIの限界からすれば、AIが会計専門家に完全に代替することはありえません。むしろ、AIが発達すればするほど、「AIに代替できない力」を有する会計専門家の優位性が際立っていくと筆者は考えています。
 AIの進化は「作業の効率化」という意味で興味がありますが、それ以上に、「今後、AIの進化によって、会計専門家としていかなる能力が必要となるのか」を自問自答する良い機会とすべきだと考えます。Taku

2018年7月 不祥事の公表の要否について(その2)

 (その1)では、発生した不祥事を公表するか否かの判断に当たっては、(1)被害の発生・拡大の防止と(2)取引先等との信頼関係の維持・回復という、不祥事を公表の目的に照らして判断すべきことを紹介しました。
 本稿では、その続きとして「公表する方法」を紹介します。

4.公表する方法
 (その1)で示した1~3の検討の結果、仮に「公表する必要がある」と判断した場合には、下記の(1)~(4)の検討を通じて、どのように公表するかを決定することになります。
(1) 公表相手
 公表相手(対象)として、適時開示やマスコミ等の一般的な公表の他、官公庁、取引先、従業員、地域住民、株主等への個別的な伝達等が考えられます。
(2)公表(伝達)する内容
 公表する内容として、不正の概要(5W1H;誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)と発覚までの経緯、被害の影響(被害者、範囲、損害額、他に与える影響等)、暫定的な対応策、調査体制、今後の調査結果の報告時期等が考えられます。
 ただし、企業の機密情報や個人情報等、プライバシーに関する事項が含まれることが多いので、公表に適さない情報の取扱いについては注意を要します。
(3)公表する時期と情報の正確性
 食中毒等の緊急な対応が求められる場合には一刻も早期に公表するべきですが、不確かな情報の公表はかえって混乱を与える可能性もあります。そのため、拙速な公表を避けつつも、十分な調査と迅速な公表が必要とされます。
なお、社会一般への公表や取引先への連絡、または公官庁への届出等、複数の連絡が必要な場合、それらのタイミングについての整合性(適時性・同時性)を保つ必要があります。さらに、不祥事の緊急性や公表する事実の詳細度に応じて、複数回に分けて公表することも考えられます。
(4)公表手段 
 公表手段としては、記者会見、ホームページでの開示、新聞・テレビ・ラジオ等でのお詫びの社告、適時開示、臨時報告書、リコール情報サイト(国民生活センター等)への連絡、個別の電話・はがき・メール等での連絡等が考えられます。この点も不祥事の緊急性や重要性に応じて、いかなる手段によるかは個別に判断する必要があります。

 具体的に公表すべきかどうかの判断は、経営者の善管注意義務を履行しているかどうかの判断、ひいては経営判断の原則の適用の可否という、法的な問題につながりますので、法律の専門家に判断を仰ぐことが必要でしょう。
 単純に「会社にとって不利だから公表しない」という利己的な判断は許されないことは言うまでもありません。Taku

2018年6月 不祥事を公表するか否か(その1)

 社内で発生した不正を公表するかどうかは悩ましいところです。
 そこで、本稿では、一般的に不正公表の要否についての知見をまとめてみました。参考にしてください。

1.不祥事の公表について
 一般に会社は社会的責任を全うするため、不祥事を積極的に公表して、説明責任を果たすことが求められており、これを隠蔽した場合、社会的信用を毀損するケースが多いと考えられます。逆に重要性のない不祥事を含め、社内に発生したすべての問題を公表する場合、徒に会社の評判を落とし、不当に不利な扱いをされる可能性がありますから、「公表しない」との経営判断に合理性が認められること考えられます。
 そのため、必ずしもすべての不祥事を公表しなければならないわけではありません。
 この点、下記2.「公表する義務が法令等で規定されている場合」を除き、不祥事を公表するか否かについての一般的な基準は存在しません。したがって、不祥事が発生した場合には、「公表するか否か」を判断する必要がありますが、この判断に際しては、下記3.「不祥事を公表する目的・必要性」に留意する必要があります。

2.公表する義務が法令等で規定されている場合
 例えば、法令上の開示義務として、独占禁止法、金融商品取引法、有価証券上場規程等に抵触する場合や、法令上の回収措置や当局への届出義務が規定されている場合(食品衛生法、薬事法(廃棄、回収等の実施義務)、道路運送車両法、毒物及び劇物取締法等)には、これらの法令等の規定に従い、開示(又は届出)を行う必要があります。
これは下記3.(1)の被害の拡大を抑止する観点から規定されている義務と考えられます。
 そのため、不祥事を認識した場合には、まずはこれらの法令等に抵触するかどうかについて慎重に検討する必要があります。

3.不祥事を公表する目的・必要性
 一般に不祥事の公表は、下記の2点を目的としていると考えられます。
(1) 被害の発生・拡大の防止
 不祥事の内容によっては、被害が継続して発生し、さらにその被害が拡大するおそれがありますから、そうした事態を防止するため不祥事を公表する必要があります。逆に考えれば、被害の継続的発生や拡大が想定されない場合には、公表を不要とすることの合理性が認められる場合も考えられます。
(2)取引先等との信頼関係の維持・回復
 既述のとおり、不祥事を公表しない場合には、その会社の社会的信用を毀損する可能性があり、不祥事の公表により、取引先等との信頼関係の維持・回復に寄与すると考えられます。一方で、重要でない不祥事をすべて公表する場合、却って社会に混乱を与える可能性や、会社が不当な不利益を被る可能性も考えられます。

 なかなか難しい判断ですが、次回は上記の議論を踏まえて、公表の要否と具体的な公表方法についてまとめます。Taku


2018年4月 財務諸表監査の実務第3版 発売

 「財務諸表監査の実務第3版」が出版されました。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 初版発行から3年が経過しました。
 おかげさまで一定の評価が得られたのか、初版の増版、2年前の第2版の刊行を経て、今回の第3版を刊行することになりました。こうして版を重ねることができたことは、大変うれしく、ありがたいことです。
 本書は、「財務諸表監査をは具体的にどのように実施されるか?」という問いに答えることを主眼として作成しており、その内容はわが国の監査実務の指針となっている「監査基準委員会報告書」の解説に重点を置いています。

 上記は本書冒頭の「第三版の刊行にあたって」の引用です。
 アマゾンで購入の方は、こちらへ。

 なお、takuya@nakazato-cpa.comにメールをくだされば、1割引き・送料当方負担にて発送します。お問い合わせください。Taku

 

2018年3月 プロデュース粉飾事件で東陽監査法人に賠償責任6億円

 ポンコツ会計士による粉飾の指南により、上場してしまったプロデュースは既に破産しており、またその役員らも破産している以上、「本件で損害賠償責任を負える財力のある者は監査法人しかいない」と被害者たちは考えていました。しかし、そのことを理由として、裁判官が監査法人に賠償責任があると判断したならば、不合理と言わざるを得ません。というのも「誰が悪いのか?」と「誰が責任を負えるのか?」とは別問題だからです。

 この点、日経新聞は下記のように報じています。
 「新潟県長岡市の工作機械メーカー「プロデュース」(破産)の粉飾決算で株価が下落し、損害を受けたのは監査法人に責任があるとして、株主が、粉飾時の監査法人を吸収合併した東陽監査法人(東京)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は20日までに、請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、約6億1760万円の支払いを命じた。高裁の野山宏裁判長は有価証券報告書などの重要事項について虚偽記載があったと判断し、吸収後の監査法人の免責を認める余地はないと結論付けた。東陽監査法人の姿勢を「証券市場の透明性確保の一翼を担う使命感が感じられない」と批判した。東陽監査法人は「主張が認められず誠に遺憾だ。判決内容を精査し、方針を検討する」とのコメントを出した。」

 誰が悪いのか?
 これはハッキリしています。既に破産したプロデュースの役員に加え、粉飾を主導してきたポンコツ会計士が悪いのです。
 今回賠償責任を負うこととされた監査法人は、そのポンコツ会計士が代表を務めていた東都監査法人を吸収合併した法人であって、東陽監査法人自体がプロデュースの監査業務を行っていたわけではありません。
 その合併後に今回の訴訟が提起されたわけですから、「東陽監査法人はポンコツ会計士の尻拭いをしなければならない」と裁判官は判断したことになるのです。
 会計士業界は監査の質の向上のために事業再編が急速に進んでいます。その中で、本件は合併によるリスクが顕在化したことを意味します。そのため、今後の業界の事業再編に大きな影響を与えることは必至でしょう。

 果たして裁判官の中にも、ツイッターで不届きなコメントを開示するなど、その使命感を感じられないような輩もいることは確かですし、人が判断する以上、その判断に誤り生じることも当然あることです。
 もしかしたら東陽監査法人の経営陣は、「我々が責任を負うことなどありえないだろう」と考えていたのかもしれません。
 そうした姿勢がこの裁判官には無責任に映った可能性があると思います。
 上記裁判官の監査法人に対する「証券市場の透明性確保の一翼を担う使命感が感じられない」というコメントが気になります。
 断じて、そんなことはないと信じるとともに、裁判の恐ろしさをヒシヒシと感じます。
 受け入れがたい判決です。Takun

2017年12月 代表取締役による不正の資金流出160百万円

 店舗運営事業のサポート等のシステム事業を行うINEST株式会社(JASDAQ)は、「不正行為に関する再発防止策等に関するお知らせ」を公表しました。
 不正実行者である同社の元代表取締役は、取引先を経由させて社外流出させた資金を横領していました。不正実行期間の6年間累計の資金流出額は160百万円とされます(そのうち125百万円は不正実行者からの担保差し入れを受けており、差額の35百万円が未回収の資金流出額になるとのことです)。
 以下の記述は、平成29年11月に同社が公表した「内部調査委員会の調査報告書受領等に関するお知らせ」からの引用ですが、それぞれコメントします。

 「過年度において費用認識されていた資金流出額は、元役員(不正実行者の元代表取締役)への未収金または適切な科目の債権に振り替えることになりますが、同時に当該未収金または債権の性質を考慮すると同額の貸倒引当金を計上すべきと考えられますので・・・」
 資金流出額が元役員に対する債権として計上されることは当然としても、「同額の貸倒引当金を計上すべきと考えられる」その理由は明示すべきと思われます。というのも、その理由として「元代表取締役の債務返済能力がない」なのか、「もう125百万円も差入れているから、これ以上は勘弁してやろうとしている」なのか等の推察を招くためです。今後の会社としての回収努力やその意向について明示すべきでしょう。

 「仮に過年度決算を訂正した場合にも、段階損益には影響があり得るものの過年度の連結財務諸表に与える影響が軽微であることから、過年度の決算の訂正を行うまでの事由には該当しないと判断致しました。」
 資金流出額が累計で160百万円である一方で、過年度の業績の推移(連結の経常利益;平成29年3月期 101百万円、平成28年3月期125百万円等)と比較すると、たとえ百歩譲って差額の35百万円の問題としても、決して「軽微」といえる額ではないと思います。何をもって「軽微」としているのか、その根拠を伺いたいところです(なによりも上記表現では、「段階損益への影響」の重要性がハッキリしないことが気になります。)。

 上記の記述からは、残念ながら「ほとんど回収しているからいいだろう」とか「差額は大した額ではないだろう」といった会社側の開き直った姿勢が私には見て取れます。
 過去5年分の段階損益に与える影響の内容、元代表取締役の資力及び元代表取締役に対する刑事告訴(特別背任罪)予定について、会社の意向を伺いたいところです。
 税務調査で発覚した本事件は、社内の自浄作用ではさらに長期間見つけることは困難だったことでしょうし、何よりも本不正事例は、代表取締役が行った不正であって、質的にはとても重要なものと考えられるのです。
 果たして、この不正実行者は大晦日に何を思うのでしょうか?
「あの税務調査さえ来なければ見つからなかったのに…。」(これも推察にすぎません。)Takun

2017年11月 OSJBホールディングス連絡子会社での費用の水増し・架空発注

 橋梁事業及び建設事業を主要な事業内容とするOSJBホールディングス株式会社(東証第一部)の主要な連結子会社であるオリエンタル白石株式会社にて、従業員による不適切な取引が判明しました。
 その内容は以下の通りです。
 「・・・複数の従業員が、協力会社に対して外注費の水増し発注を繰り返し、キックバックを受け取り従業員の飲食費として費消するなどした疑い」、「一部の事業所において、協力会社に対して(注)架空発注を行い費用をプールさせたうえで、 他の業務の原価に付け替えていた疑い」です。
 費用の水増しや架空発注は、水増し又は架空により実態より多額に支出された資金を従業員が横領する典型的な不正手法です。しかし、上記の(注;原文のまま)が理解できません。下線部をよく読むと、①架空発注を行ったこと、②費用をプールさせたこと、③(その費用を?)他の業務の原価に付け替えたこと、として理解できますが、②→③の流れについて合点がいきません。
 というのも、②の「費用をプールさせた」というのは、①の架空発注に伴う支出を、②「費用としてプール」、つまり、簿外の預金等として別に保管していたと理解できますが、その費用(架空発注である以上、架空の費用;実態の伴わない費用でしょう)を、③として「他の業務の原価に付け替えた」、としているのです。
 これは協力会社からの架空発注に係る請求をそのまま経費や原価として計上すると、異常な支出として発覚してしまうことから、「③他の業務の原価」に付け替えることで不正発覚の隠蔽工作を意図したものなのでしょうか?それとも、他になにか理由があって付け替えたのでしょうか?または、付け替え自体を問題視する必要があるのでしょうか?どうも理解ができません。(しかし、これは公表された資料に基づく私の解釈なので、私の理解不足に起因した誤解かもしれません。予めご了承ください。)。
 いずれにしても同社は、今後、弁護士等の外部専門家を補助者とする社内調査委員会を設置して、全容の解明及び原因究明ならびに同種の事案の有無について調査を進めるとのことです。

 この会社は3月決算で、第2四半期(平成29年4月1日~同年9月末)の開示予定は平成 29 年 11 月 14 日でしたが、本事件の発覚により、1か月延期するとのことです。
 さて、業績に及ぼす影響は?
 現時点で判明している不適切な取引に係る不正金額は約2億円、当社の最終損益に与える影響としては約 1.5 億円の損失(2億円より減少するのは不正実行者に対する求償権や当該損失に係る税効果を考慮してのことでしょう)を見込んでいます。
 ちなみに同社の平成29年3月期の連結売上高は513億円、経常利益は30億円でした。
 今後も同様の規模で推移するとしたならば、業績に与える影響は「軽微」といえるかどうか?微妙なところでしょうか。Taku

2017年10月 バンダイの元従業員による取引先との共謀

 2017年10月バンダイナムコホールディングスの子会社である株式会社バンダイの元従業員による不正行為が判明しました。
 不正実行者は2013年から2017年の5年間にわたり、取引先と共謀して当該会社から、約2億円(現在判明分)にわたる金員を不正に詐取していました。
 本不正の発覚は、2017年8月に行われた国税当局による税務調査によるものでした(その後、外部弁護士を含めた内部調査委員会による調査が開始されました)。

 不正実行者は同年10月に解雇され、同社では本不正行為に対する監督責任を明確にするため、下記の処分を行っています。
① 親会社の常勤取締役全員(4名)の報酬減額
 ・ 代表取締役:同年10月より月額基本報酬の 30%を3カ月間減額
 ・ 取締役:同年10月より月額基本報酬の 15%を3カ月間減額
② バンダイの常勤取締役全員(7名)の報酬減額
 ・ 代表取締役および担当取締役:同年10月より月額基本報酬の 30%を3カ月間減額
 ・ 取締役:平成 29 年 10 月より月額基本報酬の 15%を3カ月間減額

 事件の発覚から処分まで相当なスピードです。
 この対応の速さには目を見張るものがあります。
 もちろん、はやいに越したことはありませんが、仮に幕引きをはやくする余り、原因の検討が不十分な場合には、再発防止策も不十分になりかねません(特に本件は、社内の自浄作用で発覚したわけでないため、その分、慎重に原因の検討を行う必要があるかもしれません)。
 ちなみに、同社の公表した再発防止策です。
・ コンプライアンス意識のさらなる徹底
(当社では、グループのコンプライアンス憲章を制定し、憲章の掲示やコンプライアンスに関する冊子の配布、eラーニングによる社内教育などの様々な機会を通じてコンプライアンス意識の徹底を行ってまいりましたが、今回の不正行為の発生を厳粛に受け止め、コンプライアンス意識のさらなる徹底をはかる)
・ 業務フローの見直しなど内部統制体制の強化を行い、グループ全体で再発防止に取り組む

 上記の再発防止策が、やや抽象的な記述にとどまっている点が気になります(とはいえ、取引先との共謀がどのように行われたのか、詳細な開示がなされていないので、再発防止策の十分性についてコメントはしかねます)。
 一般的に取引先との共謀による場合、「架空請求」や「水増し請求」が行われることが多いようです。
 こうした不正に対しては、取引実態の把握のため必要な添付資料の見直しや、価格の妥当性の検証、社内での違和感を覚えた者の有無や、そうした違和感を管理部に吸い上げるための情報・伝達のためのコントロールが有効な場合があります。
 本不正の詳細な手法が気になります。Takun 

2017年9月 一般社団法人「企業研究会」での研修会について

 一般社団法人「企業研究会」は1948年(昭和23年)、当時の基幹産業だった旧鉄鋼5社の経営幹部の自主的な勉強会からスタートしました。現在は、異業種企業による約40の研究交流会が活発に運営され、延べ1400社の強力な人材ネットワークを基盤として経営革新を担う多彩な人材が経営の実践視点から交流し、学び合っています。
 私もこの話がくるまでは存じ上げませんでした。ホームページはこちらです

 2017年9月26日(火) 13:00~17:00 麹町厚生会館にて、講師を務めます。
 お題は、「監査人視点からの”不正摘発”と”監査手続”上での留意点」です。
 具体的な不正事例を紹介しながら、監査手続の説明をしようと思っています。
 少々、お値段は張りますが、興味のある方はご参加下さい。Taku
 

2017年8月 子会社の不正相次ぐ(2)

 前回は(1)株式会社ナカヨ「当社子会社の不正取引の疑いに関するお知らせ
(2)東洋炭素株式会社「当社海外子会社における不正行為発覚に関するお知らせ
についてでしたが、今回は下記です。

(3)東武鉄道株式会社「当社子会社元役員による不正行為について」
(4)神栄株式会社「当社連結子会社における不正な取引行為に関するお知らせ」

 東武鉄道株式会社は、「当社子会社元役員による不正行為について」を公表しました。
 連結子会社である東武ホテルマネジメントにおいて経理業務等を担当していた元取締役経理部長による不正です。権限が付与された重役による不正は、なかなか防止・発見が困難とされます。この不正は自己申告で発覚し、被害総額は126百万円です。
 20年間以上の長期に渡り不正出金や着服を繰り返し、パチンコ等の遊興費や消費者金融の返済のために費消していたとのことです。この役員は不正を隠蔽するために、不適切な仕訳の入力や証憑書類の廃棄も行っていたとされます。
 どうやら単独犯によるもので、社内外に共謀者はいなかったそうですが、興味深いのはこの不正の調査を進める過程で、同子会社の東武ホテルマネジメントのマネージャーによる小口現金の着服行為(4.5百万円)も合わせて判明したことです。
 それぞれ別の要因によるものなのでしょう。それぞれ、どのような再発防止策を講ずるべきなのか、興味があります。

 神栄株式会社は、「当社連結子会社における不正な取引行為に関するお知らせ」を公表しました。こちらは中国上海の子会社です。
 同子会社では、2015年以降、取引拡大中であった取引先との間に発生した滞留債権を隠蔽するために、同取引先及びその関連先と仕入及び売上の架空計上を繰り返す不正な取引行為が行われました。
  「滞留債権の隠蔽」と「架空の仕入・売上の計上」との関連性が不明確ですが、不正な取引に関与したとみられる取引先に対する当社グループの平成29年6月末時点の債権総額は約330百万円、また当該取引先から仕入れた在庫は約50百万円とされ、債権については回収可能性、在庫については実在性等を調査しているとのことです。
 この不正、どうも具体的な手法が思い浮かびませんが、こちらも今後の調査に注目したいと思います。

 いずれにしても、子会社での不正、特に役職者による不正が頻発しています。
 「うちは大丈夫」という根拠のない自信は持たない方がよいでしょう。気をつけたいものです。Taku
 


2017年8月 子会社の不正相次ぐ

 今年はとても忙しい夏でしたが、ようやく落ち着いてきました。今日から夏休みです(とはいえ、事務所にてこの原稿を書いていますが)。
 表題のとおり、子会社の不正が相次いでいます。以下、紹介します。

(1)株式会社ナカヨ「当社子会社の不正取引の疑いに関するお知らせ
(2)東洋炭素株式会社「当社海外子会社における不正行為発覚に関するお知らせ
(3)東武鉄道株式会社「当社子会社元役員による不正行為について
(4)神栄株式会社「当社連結子会社における不正な取引行為に関するお知らせ

 すべて東証一部の上場企業であって、しかも子会社での不正です。
 親会社はシッカリしていても子会社で不正が起きれば、親会社を含めたグループ全体のイメージ悪化につながります。
 出来の悪い子供は、親として頭の痛いところですが、内部統制はあくまで連結全体で構築すべきプロセスです。
 「子会社にて不正が発生するリスク」については、十分なコントロールが必要です。

 さて、今回は上記の(1)(2)について、次回は(3)(4)について、気が付いた点を示します。
 まず(1)の株式会社ナカヨの件です。
 この公表資料の「1.不正取引の疑いの概要」には、下記の記述があります(一部、省略しています)。
「本件は、電子サービス(子会社)の役員において、かねてより電子サービスとの取引のあったA社からの借入申入れの要求に応えるため、・・・A社系列のB社より開発依頼を受け、・・・社内稟議を経ずに契約を交わし、29百万円が未回収となっております。その後、B社からの・・・入金がなく、A社への返金を要求するも入金されない状況」とのことです。
 本文を記述した方には失礼極まりないとは思いますが、一文目が長すぎです。文章が長くて、とても解りにくいのです(もう少しイイタイコトを整理して記述した方が良いかもしれません)。
 そもそも書き出しの「本件は、電子サービスの役員において」という書き出し自体が不明瞭です。その役員が不正取引の疑いの対象者であれば「電子サービス(子会社)の役員が・・・」と主語とした方が良いかもしれません。「役員において・・・」という表現は、かなり曖昧な書き出しになってしまっているのが残念です。
 また、本件は要するに、「所定の承認を経ずに支出した29百万円が未回収になった」ということなのでしょうが、そのことと書き出しに続く冒頭の「A社からの借入の要求に応えるため」との関連がハッキリしません。「借入の要求」と「開発依頼を受けたこと」とはどのような関係があるのでしょうか?
 いずれにしても、今後の調査結果待ちですが、もう少し解りやすい文面にしていただきたいと思いました。
 なお、この結果、同社は平成29年6月末を期末日とする平成30年3月期第1四半期報告書の提出期限を延長するとのことです。

 次に、(2)東洋炭素株式会社ですが、こちらはフランスの子会社での不正です。概要は以下の通りです。
 2011年6月~2017年4月にかけて、財務経理責任者であった元従業員が、付加価値税の還付金を不正申告し、その還付金を元従業員の口座に送金することで、横領していたとのことです。フランス税務当局による税務調査によって発覚しました。
 175万ユーロ(日本金換算で約200百万円)だそうです。
 不正を行った従業員は6月に解雇、刑事告訴と平行して民事事件として責任追及を行い、被害金額の回収に努めるとのことです。財務経理責任者による不正は、その権限が集中している関係もあり、なかなか防止・発見に困難が伴うことが多いようです。本件も社内の調査ではなく、社外である税務調査により発覚している当たり、内部統制の限界を感じさせます。
 しかし、全く兆候がなかったのでしょうか?不正実行者による挙動不審な行動はなかったのでしょうか?
 残念ながら、これらは実際に不正の行われている現場でしか感じ取ることはできませんね。Taku


2017年5月 監査論セレクト30題第5版発行のお知らせ

 「監査論セレクト30題」は、公認会計士試験の論文式試験対策の書籍です。
 2013年7月の初版発行以来、版を重ねて、この度「第5版」を発行することになりました。
 ついては、感謝の気持ちとして、下記の要領で「無料配布キャンペーン」を行います。
 
 無料配布部数10冊です。
 下記のメールアドレスに、「監査論セレクト30題第5版希望」の旨と、郵送先の住所、氏名を送信してください。
 メールアドレス; takuya@nakazato-cpa.com
 締切は平成29年5月末です。
 応募多数の場合には抽選とさせていただきますが、応募少数の場合は応募を継続します。

 書店等での販売は6月中旬以降になると思います。
 よろしくお願いします。 公認会計士 中里拓哉

【追記情報】
上記の応募は締め切りました。ご応募頂きました方には、お礼申し上げます。有り難うございました。
なお、発行が遅れているようです。申し訳ございません。
6月中旬までには発送できると思います。何卒、ご容赦願います。2017.6.8 中里

  
 

2017年5月 昭和40年前後までの粉飾決算と監査人の役割

 当時の粉飾決算は、現代と比べて、どうも様子が異なるようです。
 財務諸表監査も今ほど有効に機能していない時代だったそうです。
 下記は当時の景気の波です(「粉飾決算」並木俊守著(昭和40年7月)実業之日本社)。
・ 昭和24年~昭和28年 朝鮮動乱ブームの後、昭和29年は不況に。
・ 昭和30年~昭和32年 在庫投資ブームの後、昭和33年は不況に。
・ 昭和34年~昭和37年 設備投資ブームの後、昭和38年は不況に。
 この「4年間の好景気のあとに1年間の不況が来る」という波の中で、昭和34年からの経済成長は、「年々二十パーセントを超える高度経済成長」と言われていますから驚きます。
 強気の経営者がガンガン設備投資を進めていったことも理解できます。
 この過剰な設備を抱えたまま、昭和37年の不況に入るわけですが、「また1年我慢すれば、好景気に戻るだろう」との楽観視もあって、下記で示すように「粉飾多発時代」が到来します(当時は今と異なり、有価証券の発行形態としては額面発行による株主割当が主流であって、株式市場もこれを前提とした価格形成がなされ、投資判断として財務諸表を利用する必要性が乏しいことに加え、経営者も「利益平準化」、「安定配当」のため、「粉飾もやむなし(必要悪)」という考え方が主流だったのです)。

 果たして、昭和37年の東急くろがね工業に始まり、大王製紙、カワサキ目黒製作所など6社が、また昭和38年には山口自転車、日本製紙など4社が、昭和39年には日満興業、日本特殊製鋼、サンウェーブ興業、富士車輌など16社が、さらに昭和40年には有名な山陽特殊製鋼、日本繊維工業、大阪土木などが相次いで倒産し、その中には巨額の粉飾決算を行っていた会社もありました。
 さらに当時の大蔵省は、粉飾の多さを憂慮して企業に対して「自主訂正」を促しますが、その結果、昭和41年以降、一部上場で21社が自主訂正を行い、その後17社が大蔵省からの訂正命令を受けました(これほど多くの企業が粉飾を吐露した時代というのも驚きます)。
 一方、財務諸表監査は、まだまだ未熟な制度でした。
 ある経営者は監査人に対して「まさか、本当に帳簿を見るなんてことはあるまいに」や「他人の作成した帳簿を調べることは恥ずべき行為であって、帳簿を見ずに黙って印を押す先生こそが「大物」である。」との意見もあったそうですから驚きます(公認会計士制度25年史・日本公認会計士協会25年史編さん委員会;近畿会編(昭和50年))。
 
 当時は粉飾を見逃した監査人の責任問題も社会問題にならなかったそうです。
 その後、粉飾の多発時代を超え、昭和40年、41年に監査基準も強化されるとともに、監査法人制度もスタートし、監査人も「本気で」監査をするようになってきた時代となり、マスコミも大きく取り上げるようになっていったようです。
今では到底考えられないのですが、当時の考え方はずいぶんと異なっていたのでしょう。
 
 また、機会を改めて、当時の具体的な粉飾事例を紹介したいと思います。Taku

2017年5月 東芝の「監査人交代」の意向

 2017年4月、東芝が監査法人の変更を検討しているとの報道がありました。
 新日本が退任した後を引き継いだPwCあらたは第1Q、第2Q、第3Qを結論不表明としています。
 そこで東芝は「監査人との溝が埋まらない」という理由で監査人を交代するというのです。
 東芝の経営陣は、何か根本的に勘違いをしているのかもしれません。
 自己の都合の悪い監査意見を嫌って、自己の都合の良い監査意見を貰おうとすることを「オピニオン・ショッピング」といい、財務諸表利用者の信頼を大きく損なう行為です。 
 仮に監査人の候補者(準大手の監査法人の名前が挙がっているようですが)がいるとしても、オピニオン・ショッピングの可能性に加えて、このタイミングでは監査手続を十分に行う時間がありませんから、ほぼ間違いなく、東芝の監査を引き受けることはないと思われます(よしんば引き継ぐ監査法人が現れたとしても、金融庁が上記の問題からストップをかける可能性も高いです)。
 上記は、財務諸表監査の世界では常識といっても、過言ではないと思うのです。
 
 東芝の経営陣は、そのリスクを識別できなかったのでしょうか。
 「監査法人なんて、どこでも替わりはいるんだ」と考えていたのかも知れません。これは大きな間違いです。
 今回の東芝の「監査人を交代する」との経営判断は、「著しく不合理」と考えられ、「経営判断の原則」が適用されない可能性があり、しかるに東芝経営陣は、また新たな責任問題を背負い兼ねない状況ともいえるかもしれません。

 ちなみにPwCあらたが結論不表明としている理由を要約すると、以下のとおりです。
 「東芝の監査委員会は、米国WHの一部経営者による不適切なプレッシャーの有無及び会計への影響について調査を実施したが、当監査法人は当該調査の評価を継続中であって、レビュー報告書作成日現在、終了していない。継続評価の対象事項には、・・・損失を認識すべき時期がいつであったかを判断するための調査に対する当監査法人の評価も含まれている。」
 要するに、子会社の過去の業績が水増しされた形跡があり、もっと前から損失が多額に出ていたのではないか?がハッキリしないわけです。このことは「東芝が債務超過に陥ったタイミングがもっと早かったのではないか?」という懸念にもつながるのです。

 監査人の意見がなくても直ちに上場廃止にはなりませんが、上場廃止かどうかは東京証券取引所が判断することになります。
 さぁ、どうなるでしょうか?注目です。Taku

2017年4月 東芝に意見不表明

 四半期財務諸表は、決算日後45日以内に提出する必要があります。
 東芝の第3四半期財務諸表(2016年12月31日;期末日)の提出期限は、期末日から45日ですから2017年2月14日でした。
 その提出期限を特別に延長して、2017年3月中旬としました。
 それでも開示することができず、さらに再延長した期日が昨日の2017年4月11日でした。
 その昨日、東芝が開示した四半期財務諸表は、監査人が意見不表明(厳密には「結論不表明」)のママでの公表となりました。
 報道によると、子会社のWHの経営陣が業績の見込みを実際よりも良くするようゲキを飛ばしていたとされます(親会社の東芝と同様に「チャレンジ!」と業績の嵩上げを強要していたのであれば、子会社での「チャレンジ」なので、「こどもチャレンジ」ということになります)。

 冗談はさておき、監査人が意見不表明とするのは新聞報道にもあるとおり「極めて異例」です。ちなみに、監査を実施する上で遵守しなければならない「監査基準」には、以下の規定があります。
 「監査人は、重要な監査手続が実施できなかったことにより、財務諸表全体に対する意見表明のための基礎を得ることができなかったときには、意見を表明してはならない。」 「意見表明のための基礎」は、監査人が監査手続の結果得られる「確信」です。
 その確信のないママ、「財務諸表は適正と認める」との意見を表明することは禁じられています。
 なるほど、確信のないママに「財務諸表が適正」といわれても、後になって重要な虚偽表示の存在が明らかになれば、それを信じた財務諸表利用者は大損害を被る可能性が高いわけですから、監査人が根拠のない意見を表明すること(ときとして、会社の意向を忖度して意見表明してしまうケースも考えられる)は禁じられているわけです。
 
 今回の問題の焦点は、子会社のWHにおいて「業績の見込みを実際よりも良く見せかけていたこと」が、果たして「いつからだったのか」という点です。
 東芝がいうように2016年4月~12月から業績悪化の問題が生じたとすれば、東芝の会計処理が正しいといえるでしょう。しかし、監査法人は「それよりも前から業績が悪化していたのではないか?」さらに「その業績悪化を隠蔽していたのではないか?」と考えており、要するに、遡及修正の必要性(減損の計上のタイミングの問題)について懸念を抱いていると考えられます。
 仮に監査法人の懸念が事実だとすると、東芝はもっと前から「債務超過だった」可能性が高まります。
 監査法人としては、「原発事業の減損計上のタイミング」に係る調査が不十分であり、「遡及修正の要否について判断ができない(確信が得られない)」ことから、意見表明の基礎が得られず、「意見不表明」としたと考えられます。

 東芝は前任監査人である新日本をずーっと欺き続けました。
 そのため今回、後任監査人のPwCあらたが東芝の主張に疑念を抱くのは当然ともいえるでしょう。
 東芝としては、なんとかしてPwCあらたに信じてもらうよう種々の努力をしたのでしょうが、その溝が埋まらなかったのでしょう。
 報道を見ると、東芝は「監査人の交代」の可能性を示唆しているようです。東芝の監査を引き受けられる国内の監査法人は、規模からして限られるでしょう。加えて独立性の問題もあるでしょうから、必然的に特定されるかもしれません。
 果たして、その監査法人が引き受けるか?また、新日本→PwCあらた→○○といった短期間での監査人の交代は「オピニオン・ショッピング」として問題視される可能性もあります。

 監査人は会社の「保証人」です。
 「この会社の言っていることは正しい」と保証してあげることが監査人の役割であり、その責任は重大なのです。
 そのためには、会社と監査人との間に「信頼関係」が必要です。
 東芝は、監査法人と信頼関係を構築できるのでしょうか?注目です。Taku

2017年3月 「監査人の交代」について

 この度、日本公認会計士協会東京会新宿支部にて、「監査の品質管理」に係る研修会を担当して、「不適切会計の具体例」について講演することになりました(平成29年3月22日開催です)。有難いことです。
 そこで本稿では、その研修会の中で取り上げる「監査人の交代」をテーマとします。
 「監査人の交代」については、監査基準委員会報告書900が実務上の指針を提供していますが、ここでは実際に問題となりうる事例(あくまで例)を紹介します。
【事例】 下記のC監査法人による監査業務の引継について問題点を指摘しなさい。
 A監査法人は、甲社の前期の財務諸表に対して監査報告書を発行したが、その後、監査人の交代により、B監査法人が甲社の監査人となった。
 B監査法人は甲社と監査契約を締結したものの、監査報告書を発行せずに期中交代することとなり、C監査法人が監査人予定者となった。
 そこでC監査法人は、前任監査人であるB監査法人に対して、監査契約締結前に監査人の交代に係る引継の手続を実施したが、甲社の前年度の監査報告書を発行したA監査法人に対しては、監査契約の締結後に監査人の引継の手続を実施した。
【事例の問題点】
 監査業務の引継は監査契約の締結「前」に実施する必要があり、C監査法人はB監査法人のみでなく、A監査法人についても監査契約締結「前」に監査人の交代に係る手続を実施する必要があった。
【事例の解説】
 監査業務の引継の目的には、「監査業務の受嘱の可否」を判断することも含まれます。
 そのため、監査業務の引継は監査業務の受嘱「後」ではなく、監査業務の受嘱「前」に行うこととされます。
 また、監査人予定者である監査法人Cが引継を求める相手である「前任監査人」の範囲も問題となりますが、これは下記の前任監査人の定義が参考になります。
 「前任監査人とは、前年度の財務諸表の監査報告書を提出したか、又は当年度の財務諸表の監査に着手したものの監査報告書を提出していない別の監査事務所に属する監査人のことをいう(監基報900.5)。」
 つまり本事例では、C監査法人にとっての前任監査人はB監査法人のみでなく、前期の監査報告書を発行したA監査法人も含まれるのです(特に本事例では、B監査法人がどれほど甲社の事情に精通していたかは不明です)。

 監査人の交代に関して実際に問題となったケースとして、2002年10月にナスダック・ジャパンに上場した会社の例を挙げましょう。同社は、2003年3月期決算にて巨額の赤字(△9億8千万円)により債務超過となるはずでしたが、その後、その監査法人との契約解除して別の監査人と監査契約を締結することで、監査人が交代します。その結果、2003年3月期の決算数値を黒字(+66百万円)に訂正したのです。
 本事案は、前任の監査法人による監査がほぼ終了した時点での監査人の交代であって、「オピニオン・ショッピング(会社にとって都合の良い意見を買う悪質な行為)」が疑われます。なお、問題となった会計処理は棚卸資産の評価損の減少(当初11億円の損失から、訂正後は2千8百万円の損失)です。この処理を新たな監査人に認めさせることで、債務超過を回避したことになるのでしょう。
 本事案は、その後、循環取引を利用した大がかりな粉飾事件とされ、架空取引指南役(大手商社関連企業社員)への報酬数千万円が支払われていたことでも有名な事件です(同社は2004年5月上場廃止となります)。
 そういえば、この事件は以前に不正事例研究会でも取り上げていましたね。Taku

2017年1月 鳥羽先生退職

 鳥羽至英先生。
 早稲田大学商学部教授。
 一方通行ではあるものの、私が最も影響を受けた学者です。
 鳥羽先生は、公認会計士試験の「監査論」の試験委員でした。
 鳥羽先生の執筆された「監査基準の基礎(第2版)」(白桃書房)は、擦り切れるほど読み込みました。これこそが、私が最も感銘を受けた監査論の本です。
 今になって考えました。
 なぜ、私が鳥羽先生に大きな影響を受けたのか。
 その答えが、2017年1月28日の鳥羽先生の「退職記念最終講演」のレジュメにありました。ここでは、鳥羽先生が最終講義で触れたことを2つ紹介します。

「曲学阿世」
 学問としての真理を歪めて、権力者や世論に気に入られること、を意味します。
 なるほど、学識経験者が陥りやすいワナでしょう。(この言葉を聞いて、「あぁ、あの人こそが『曲学阿世』を地で行っている人だなぁ」とある著名な学者の顔が思い浮かぶほどです)。
 「曲学阿世」には、公認会計士に求められる「独立不羈」に通じる「学者魂」を感じます。逆に言えば、どれほどの多くの人間が(生きるためとはいえ)得意先や顧客に媚びへつらっていることでしょう。また、そうした言動が、どれだけ「格好悪く」見えることでしょう。
 「学問」を職業とした学者であればこそ、または、学者にとって様々な誘惑があればこそ、力強く「曲学阿世」を戒めていらっしゃるのでしょう。この姿勢は、「独立の立場」を貫かなければならない公認会計士も大いに見習うべきだと思うのです。

「一隅を照らす者、国の宝なり」(監査の質に対する責任が大きく、しかし、決して褒められることのない、そしてしばしば経営者に裏切られる公認会計士(監査人)を志す若い諸君に;)
 鳥羽先生が21歳の時に通った会計士補向けの「実務補習」の講師であった東京地方検察庁特別捜査部長検事の河合信太郎氏の言葉だそうです。
 なるほど、監査を行っているとき、ふと不安に思うことがあります。
 果たして今、自分のやっている監査手続がどれだけ意味のあることなのかと。
 この手続の結果、目の前にいる経理担当役員らが、苦虫を嚙み潰したような顔になって反論してくることが予想される中で、果たしてどのように立ち居振る舞うべきなのかと。
 この言葉は、そうした困惑する現場の会計士に、力強くエールを送っているのです。

 何年か前、鳥羽先生と下呂温泉へ、お供したことを思い出しました。
 「学者魂」、「会計士魂」、「職業的懐疑心」、「監査証拠とは」etc.
 「~だぜ」という気さくな語尾。
 二次会でのチェッカーズの「ジュリアにハートブレイク」(最近は、河島英五の「時代遅れ」がお気に入りとか)。
 うまい料理と酒を頂きながら、熱いお話しを伺った時間は、私にとって大変に貴重な時間でした。

 鳥羽先生、またゆっくりお話しできる機会が得られたら、私は最高に幸せです。Taku

2017年1月 療養費不正受給9.5億円~東京新聞

 新聞を持つ手が震えました。「憤り」を超え「諦め」のような感情も伴いました。
 今朝(1/19)の東京新聞です。
「マッサージ、はり・きゅう悪質業者横行」の表題です。
 厚生労働省の公表した資料によると、2008年以降、36都道府県で55,000件、約9億5千万円の不正受給があったとしています。
 厚生労働省は、「不正は(金額、件数とも)請求全体の0.3%」としていますが、施術師の全国団体幹部は「発覚しているのは氷山の一角」と指摘し、元業界の男性のコメントとして「チェックの仕組みが無く、やりたい放題になっている」としています。
 仮に彼らの話が正しければ、一般の企業では考えられないほどのお粗末な話です。
 果たして、厚生労働省の方々は、自分を被害者とでも思っているのでしょうか?
「不正請求をする側が悪いのだ」と考えているのでしょうか?
「チェックの仕組みが無く、やりたい放題になっている状況について、適切に対応していない我々が悪い」とか、「一般の企業ではあり得ないほどの内部統制の重要な不備である。」と考えないのでしょうか?
 不正請求は「詐欺」です。
 たとえ金額、件数ともに0.3%であったとしても、刑事事件として告発する等の断固たる措置を講ずるべきでしょう(1億円を持っている人が30万円騙し取られたときに「0.3%だからいい」とは思いません)。また、今回の調査に見られるように、「不正請求がなされるかもしれない」との性悪説にたてば、必要な管理体制を構築しなければならないことは容易に想定できるはずです。
 やはり今年の1/4の日経新聞の一面では「職員の不正会計・情報漏洩防止」「首長に対策義務付け」という記事が掲載されました。いわば一般企業の内部統制の構築義務が首長に課したともいえるでしょう。
 公務員の組織にも内部統制を構築する義務があるわけです。
 必要な管理体制を構築しなかった結果、巨額の賠償金を支払った一般企業の役員らがいることは事実です。仮に公務員の組織の中で不正が発生し、その防止・発見策を十分に講じていなかった場合には、一般の企業と同様に、その不正によって生じた損害を賠償する義務が生じることとなるのです。

 ときに、最近の就職先として公務員が人気だそうです。
 なるほどリスクを嫌った安定志向の方々に公務員が人気なのはよく解ります。
 「なぜ公務員になりたいのか?」という問いに「一般企業のように利益追求型でなく、お金では計れないような価値を見いだすような組織で仕事をしたいからです。」と答えたエピソードを伺いました。良い答えです。
 しかし、不正請求に応じ、騙されてお金を巻き上げられてしまっては情けない話です。
 利益追求型であろうが無かろうが、自分のお金が取られたら、たとえ0.3%でも許せるはずはありません。人に騙されないように注意するのが普通の人なのです。
 仮に、人に騙されて、食い物にされながら、誰も責任を取ることもない組織だとしたら・・・。普通じゃありません。
 そんな公務員にはなりたくないですよ。誰も。
 なんとも情けない、なんとも残念な話です。Taku

2016年12月 大晦日に思う

 一昨日の12月29日の昼。突然の訃報。
 会計士の大先輩である澤田さんが亡くなった。
 私が所属していた仰星監査法人の元理事長。日本公認会計士協会近畿会の会長。
 日本公認会計士協会の副会長でもあった、偉大な先輩である。
「また春にでも、大阪に遊びに行くつもりだったのに。」
 声が震え、涙腺が緩んだ。
 葬儀のため、東京江戸川から、兵庫三田へ向かう。
 年末の帰省ラッシュ。指定席もグリーン席も満席。
 自由席のチケットを買い、喪服のまま、迷うことなく指定席車両のデッキに座る。
 今朝の新聞を床にひいて。なんてことはない。たかだか2時間30分だ。

 何年前だろうか。澤田さんが大阪から東京にいらっしゃったとき。
「中里、話がある。どこか好きな店でも予約しておけ。ゆっくり話そう。」
 有難い話である。
 人形町の「今半」を予約。高価なすき焼きをご馳走になった上、銀座のなじみの店に連れて行って貰った。
 とても可愛がって貰った。
 強面であるものの、笑顔が印象的だった。
 ただ、会計士業界の将来の話、仰星監査法人の組織に関する議論の際は、「ある意味・・・」「逆に言えば・・・」の口癖とともに、厳しい顔をされていた。
「コミュニケーションこそが重要だ。相手を傷つけないように配慮して話すなんてことは甘い戯れ言だ。一歩も二歩も踏み込んで、相手を傷つけることもおそれずに話せ。本気で話せば、いくら険悪な雰囲気になっても、その後の修復は容易なものだ。」

 熱い方だった。
 自分に厳しい方だった。
 彼が目指したのは、「最大」ではなく、「最強」の監査法人である。
 正に『北斗監査法人』なのである(今は「仰星監査法人」となっている)。

 私は澤田さんが大好きだった。
 以下、澤田さんが最期の力を振り絞って作り上げたものである。

・ 「会計プロフェッショナルの矜持」 清文社 2016年5月
・ 「仰星監査法人25年史」 2015年9月

 もっともっと、澤田さんの話を聞きたかった。
 しかし、もう、それはできない。無念である。
 今年も、もう残すところ、わずかである。
 「ゆく年、くる年」を見ながら、偉大な先輩を思う。Taku

2016年11月 東芝子会社の従業員不正~売上過大計上~

 東芝の100%子会社「東芝EIコントロールシステム株式会社」が「当社従業員による売上過大計上について」を公表しました。同社は福岡を本社とし、監視制御システム、受配電システムの他、大型映像表示システムなどを手掛ける、年商約100億円、従業員数約500名の会社です(先日、京都競馬場に行きましたが、そのオーロラビジョンも手掛けているようです)。
 一般的な非上場会社の場合、このように不正が公表されることは稀ですが、上場会社の子会社の場合は別です。多くの非上場会社での不正は、「親会社が上場会社である」ことに起因して不正が公表されています。
 特に本件は、社会問題としても大きく取り上げられている「東芝粉飾事件」が公表されてからまもない事件であり、新聞でも大きく取り上げられています。
 「また東芝か?」「まだ、あったのか?」
 という社会一般の厳しい視線を感じます。
 同社の公表した資料では、「2003年以降、実際の契約金額を上回る金額で売上計上・・・、将来売上予定の他の案件の注文書・検収書の流用や、注文書・検収書の偽造・・・売上過大計上に伴い滞留債権が発生」としてあります(不正の期間として13年間は、比較的長いですね)。
 また通常、売上の過大計上や架空計上が行われている場合、得意先はその分を支払いませんから、水増し計上された債権の回収は滞留します。この点、同資料では「・・・同担当者から回収可能と報告されていたためこの不正を長期間発見することができませんでした」としてあります。
 この記述は、いかがなモノでしょうか?
 不正実行者が「この債権は、売上の過大計上分であるが故に滞留しています」と告白するでしょうか?
 不正を長期間発見することができなかった理由としては、不正実行者が不正であることを吐露しなかったことは当然として、それよりも「滞留債権の原因の検討が不十分であった」からでしょう。
 「不正実行者の告白を待つ」などという甘いコントロールはありません。
 この辺りの因果関係の記述について、同報告書には緊張感がないように見受けました。
 公表資料にも示されているとおり、不正実行者が注文書・検収書を偽造したり、虚偽の回答を行ったりすることは通常なことです。重要なことは、仮に不正実行者がそうした隠蔽工作を行っていた場合、直ちに発見することは困難としても、ある一定の期間が経過すれば、発見できるような仕組みを構築することなのです。
 13年間も不正が発見できなかった理由の記述としては、不適切と言わざるを得ないでしょう。
 本来であえれば、「滞留債権の検討が不十分であり、担当者の説明を鵜呑みにしていました」という記述が適切でしょう。

 子会社の不正とはいえ、果たして、東芝は今後、どうなるのでしょうか?
  以前の投稿の繰り返しですが、私は東芝が大好きでした。というのも幼い頃に心に残る宣伝効果があるからでしょう。
・ 東芝日曜劇場の「走る東芝、回る東芝、・・・、東芝のマーク!」
・ サザエさんのエンディングの「エネルギーとエレクトロニクスの東芝がおおくりいたしました。ンガ、ウウン。」
 懐かしいです。心に残っております。
 でも、今は東芝は大嫌いです。失望です。
 当時の代表は、粉飾した刑事責任を負うべきだと、考えます。Taku

2016年9月 不正事例研究会の実績

 不正事例研究会では、基本的に、公表された不正事例の検討・紹介を行っていますが、実際に、不正が発生した会社からの依頼に基づいて調査を行うこともあります。
 ・ 経理担当者による会社資金の使い込み
 ・ 社長秘書(社長の愛人)による横領
 ・ 営業担当者による私消
 ・ 粉飾決算 などなど
 上記は過去において、不正事例研究会が、実際に調査に関与した不正事例です。
 特に昨今、非上場の不正事例の案件が増えています。

 不正調査に関与して、強く思うことは1つです。
 「もっと、早くに見つけてあげれば良かったのに。」
 不正を事前に防止できなかったこと、事後的にも適時に発見できなかったことは、不正実行者をより不幸にするともに、不正が行われた会社をも不幸にします。

 また、不正事例研究会では、企業研修等で「不正事例を紹介して欲しい」という依頼を受けることもあります。
 様々な不正事例の紹介を通じて、自社の管理体制構築のヒントにするケースもあります。
 実際に社内で不正が生じた場合の「体力の消耗度」は計り知れません。他社の不正事例を他山の石とすることが重要なのです。

 不正事例研究会は、不幸な会社を少なくするため、不正の防止策、不正の発見策を提案します。Taku
 
 

2016年8月 非常勤監事の責任~とある理事長の暴走

 この暑い時期、ご先祖様のことに思いを馳せつつも、加えて先の戦争のことを思うと、一層、厳かな気分になります。
 昔の話を蒸し返すようで恐縮ですが、非常勤監事(一般の会社では「非常勤監査役」)の責任の問われた事件を紹介します。
 10年以上も昔の話です。

 とある組織で50億円もの使途不明金が問題となりました。
 公の機関の是正・改善命令にもかかわらず、その組織はこれに応じなかったため、管理命令が発動されて、同組織は破綻しました。
 問題となったのは、ワンマン理事長の暴走です。
 交通事故の当事者である理事長自身に、その共済金の支払事務処理を一任させたり、理事会の承認を経た方法とは異なる方法で、とある施設の建築工事を独断で進めたりした結果、その組織の資産は流出し、破綻します。
 その理事長の業務上横領罪(実刑判決)が確定します。

 当然に、他の理事や監事は、理事長を監視する責任を負っていますから、彼らの責任問題にもなります。
 この事件でも、ワンマン経営の理事長の暴走を抑えられなかったことから、他の常勤の理事、監事も報酬の返還等で責任を負うことになりました。
 問題は、とある「非常勤」の監事の責任です。
 一審、二審では、下記の理由によって、その非常勤監事の責任はないものとしました。
 「同組織では、理事長がほとんどの業務意思決定を自ら行う慣行があって、監事がその業務意思決定について事前差し止め等を行うことが事実上不可能であり、その責任を監事に求めることは酷である。」

 しかし、その後の最高裁判決では、一審、二審の判断を覆し、非常勤監事の責任を認めます。
「理事長の業務執行が慣行に沿ったものであっても、その慣行は不適切であり、当該慣行があったことをもって監事の職責は軽減されない。監事には任務懈怠があった。」
 非常勤の監事(監査役)であっても、「間違っているモノは間違っている」と主張しない限り、理事を監視する責任は全うできません。議事録に反対意見が記載されてはじめて、免責されると思った方が良いでしょう。
 「理事会・幹事会で、余計なことを言ったら煙たがられるだけ」と、「沈黙を金とする」方も多いでしょう。
 しかし、社会的な責任を負う立場にある以上、当事者意識を持って、積極的に発言することが求められているのです。

 その非常勤監査役の支払った賠償額は10,000,000円とされます。決して少額ではありません。Taku

2016年7月 東芝の粉飾「監査人にこう聞かれたら、こう答えろ」という想定問答集

社外秘のメールが掲載されたブログがありました。
目を疑いますが、これだけ具体的に記述されていることカラすれば、かなり信憑性は高いと考えられます。。。

あまり興味本位でシェアするのは気が引けるのですが・・・
でも、あまりの衝撃だったので、思い切って下記を掲載します。みなさんはどう思いますか?Taku

巨弾スクープ! 東芝“チャレンジの温床”社外秘メールを大公開!――社員の“愛社精神”は如何にして歪んだのか
http://tskeightkun.blog.fc2.com/blog-entry-180.html

2016年6月 監査論セレクト30題 第4版 出版予告

 公認会計士試験の論文式試験対策用の書籍である「監査論セレクト30題 第4版」(中央経済社)が近日、出版されます。
 現在、鋭意、校正作業中です。
 先般、短答式試験が終わり、多くの受験生が論文式試験に向けて準備を進めていると思います。本来であれば、5月末のタイミングで出版したかったのですが、諸事情により出版が遅れております(7月20日前後になりそうです。)。
 一部の方から、お問い合わせを頂いており、ご迷惑をおかけしております。

 「出版後、すぐにでも本書を手にしたい」
 という方がいれば、ご一報ください。
 著者割引の20%値引きで、「謹呈」の名前入りの短冊を入れ、「著者からの献本」という形で、可及的速やかに送付します(別途送料)。
 連絡下さった方には別途個別にメールで連絡を取ります。
 その際、名前と住所、電話番号を教えて貰います。書籍の発送の際に、振込金額、振込先をお知らせします。

 現時点(2016年7月8日16:00時点)で、5名の方からご応募いただきました。今後、ご応募される方は、直ちに入手できる書籍の数は限りがありますので、予めご了承ください(早期に連絡を頂いた方を優先して発送します)。
 なお、既報の通り「財務諸表監査の実務(第2版)」も2016年6月以降、好評発売中です。これも著者割引の20%引(送料別)で発送します。同様に下記メールにてお問い合わせ下さい。

 よろしくお願いします。
  中里拓哉 takuya@nakazato-cpa.com





2016年4月 三菱自動車の不正に思う

2016年4月27日、毎日新聞の経済面に、三菱グループ幹部の憤りのコメントが掲載されています。
「どうしようもない会社だ。私が知っている範囲でも5度目くらいではないか。」
 同感です。以下、三菱自動車の過去の不祥事を概観してみましょう。

 1996年4月 米国子会社のセクハラ問題放置で50億円の和解金支払い。
 1997年7月 総会屋の利益供与事件で幹部らが逮捕。社長辞任。
 2000年7月 リコール隠蔽(車両の欠陥を組織的に隠蔽)
 本件は車両の安全面に大きな影響を及ぼす事件でしたから、社会的に強く非難されました。
 2002年10月 クラッチ系統の欠陥による事故で運転手が死亡。
 2004年3月 トレーラーから外れたタイヤによって親子3人の死傷事件が発生。当初、製品欠陥を認めずに、リコールを逃れたことが大きく取り沙汰される。
 2012年12月 2005年に軽自動車のエンジンオイル漏れの不具合を把握しながら、リコールを実施せず。国土交通省の立入検査を受ける。
 そして今回の事件。
 2016年4月 1991年から過去25年間にわたって法令と異なる方法で燃費データの測定を行っていたことを明らかにする(三菱自動車のほとんどの乗用車が該当)。
 実に四半世紀にわたって、燃費データの偽装が「伝承」されてきたのには驚きました。

 なお、今回の発表に当たっては、社内では調査委員会による調査が終わるまで発表を先送りすることを検討してたそうです。しかし、提携先の日産自動車などの反対を受けて発表に踏み切ったとされます。やはり社内の隠蔽体質は、根深いのでしょう。

 過去のリコール隠しで経営危機に陥った三菱自動車は、三菱商事、三菱東京UFJ銀行、三菱重工業の三菱御三家をはじめとしたグループ各社の支援によって、破綻を免れてきました。
 また、乗用車を買う際、トヨタ、日産、ホンダ、マツダといった国産車と比較して、敢えて三菱自動車を選択するのは、「グループ支援」を目的とした、三菱グループの顧客が多かったからではないでしょうか?(パジェロ・デリカは別格としても、敢えて三菱自動車は買わない、と思うのですけど、どうでしょうか?)

 そうしたグループの多層にもわたる支援があったからこそ、三菱自動車は生き残れたはずなのでしょうが、当然のことながらグループ各社の中にも突き放す声も出てきているようです。 
 今度こそ、三菱自動車は経営破綻に追い込まれるかもしれません。

 考え方の根本的な相違かも知れません。
 社内の不正を発見した場合の対応は、以下の二つに分かれるのでしょう。
「これを発表すると大変なことになる」→「発表しない。」(隠蔽体質→問題の先送り)
「これを発表しないとさらに大変なことになる」→「発表する。」(適時開示→問題解決へ)


 ちなみに私は、三菱自動車は大嫌いですが、キリンビールは大好きです。Taku
プロフィール

TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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