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2017年7月 ながの東急百貨店での従業員不正 在庫の横流し?

 2017年6月、ジャスダック上場の株式会社ながの東急百貨店は、「第三者委員会の調査報告及び当社の対応について」を公表しました。ながの東急百貨店は、長野県東北信地方を主な地盤とする地方百貨店です。
 問題となったのは、元従業員による貴金属類の商品の不正持ち出し及び転売行為です。
 同社の公表資料によると、本不正の手法は以下の通りです。
 不正実行者は、同社が例年行っているワールドジュエリー&ウォッチフェア(以下、「本フェア」)という特別の拡販策の中で「適正に顧客へ販売したように装って伝票処理を行い、商品を店外に持ち出し他に転売するなどの不正な取引行為」を行っていました。
 要するに、仕入れた時計を顧客に売ったことにして持ち出し、これを他に転売して資金化し、横領するという単純な手法です(いわゆる「ラッピング」といわれる不正の常套手段です)。
 当然、会社経理側では売掛金の入金遅延を認識しますが、不正実行者は自転車操業的に商品転売による資金化を続け、遅延した債権の入金に充当し続けるわけです。当初20万円程度から始まった不正は、次第に多数・多額となっていき、最終的に上記報告書では、取り消されるべき売上取引は65百万円としています。
「なんでこんなことをするのか?いつかはバレるだろうに?」
 それは一般的な発想です。
 不正実行者は「今を何とかしなきゃ」と一生懸命に考えており、「いまバレないように、不正を続けるしかない」と考えてしまうのです。
 しかも不正実行者は、自らの取引集中による嫌疑を避けるべく、他の従業員の名義を使うことで取引を分散していました。これが多額・多数の取引の認識が遅延した原因となったようです。
 内部統制上の問題として注目すべきは、「本フェア」では、通常とは異なり、以下のように例外的な扱いがなされていたことです。

・ 店舗販売が原則だが、商品を持出して営業できる。
・ 現金又はクレジットカードでの販売が原則だが、掛売上(信用販売)ができる。
・ 例外的な掛売上の場合、上司の承認により与信枠を決めるが、与信枠がない。

 このように、拡販のために商品管理及び与信管理・支払期限を緩和していたことが本不正の発生原因と考えられます。
「買上明細で買主名義が変更されている」、「入金名義が変わっている」という不正の兆候に目を光らせていれば早期に発覚したかもしれません。また「商品の受取欄に買主の署名が必要」というルールが形骸化していたことも問題といえるでしょう。
 実は、本不正事例は、「在庫の横流し」と書きたいところなのです。
 しかし、本不正事例は厳密には「在庫の横流し」ではありません。
 というのも、百貨店では原則、「消化仕入(売上仕入)」という慣行があります。これは「顧客に売れるまで仕入れない」ことを意味しますから、販売前の商品は百貨店にとっての在庫ではなく、仕入先の在庫なのです(在庫リスクは仕入業者にあります。)
 つまり、本不正事例では、百貨店の在庫が横流しされたわけではなく、仕入業者の所有する在庫を勝手に資金化したことになるのです。
 小さくて価値のあるモノは不正の対象になり易いですから、管理を徹底化する必要がありますね。Taku
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2016年10月 メーカーでの不適切会計の多発

 忙しさに紛れ、更新が遅れておりました。以下、最近の不適切会計の例を三つ紹介します。

日鍛バルブ株式会社での在庫の水増し
 発動機弁、自動車部品、紡績部品等の製造販売を行う日鍛バルブ株式会社(東証二部)において、下記のとおり在庫の水増しが明らかになりました。
 堀山下工場;加工中の仕掛品を完成品として計上していた。
 本社工場;仕掛品及び完成品の在庫に不適切な計上があった。
 山陽工場;材料等に架空の在庫が含まれていた。
 詳細は現在調査中とのことですが、堀山下工場での不適切会計の判明を受けて、他の工場の調査によって、さらに不適切な会計が明らかなったとのことです。
最終報告では金額が変更する可能性もありますが、上記により棚卸資産が約200百万円過大に計上されていた(その分、利益が過大計上されていた)とのことです。
同社の2016年3月期の売上高42,494百万円、経常利益は3,140百万円(連結)です。過年度の修正タイミングにもよりますが、経常利益に与える影響の比率を乱暴に算出すると、200/3,140=6.3%。一般に税引前当期純利益の5%を重要性の基準値とすることがありますが、果たして「重要性あり」か「重要性なし」か、判断に悩むところでしょうか。

長野計器株式会社の連結子会社での未出荷売上
 圧力計測の専業メーカーである長野計器株式会社(東証一部)の連結子会社である株式会社フクダにおいて、不適切会計が発覚しました。一般に売上高の計上基準は「出荷基準」ですが、この会社では出荷されないまま、売上を前倒しで計上していました。この不適切会計による影響を一括処理する場合、売上高は199百万円、経常利益は77百万円過大であったことになります。
長野計器の連結の売上高は44,949百万円、経常利益は2,077百万円(いずれも2016年3月期)でした。過去、複数年にわたる不適切会計であり、純資産の額18,262百万円と照らしても重要性はないと判断されるかもしれません。

日本カーバイド工業株式会社の連結子会社での売上前倒し計上
 化成品、機能樹脂等の機能製品、電子・高額製品等のメーカーである日本カーバイド工業株式会社(東証一部)の連結子会社であるダイヤモンドエンジニアリング株式会社において、不適切会計が発覚しました。その内容は、完成工事原価を未成工事原価に振り替えることでの費用の繰り延べ、工事進行基準を適用している大型工事案件に係る売上の前倒し計上です。これらの損益に与える影響は累計で700百万円にも及ぶとされます。
同社の2016年3月期の売上高は50,494百万円、経常利益2,423百万円(いずれも連結)、純資産22,034百万円です。この重要性の判断も悩ましいところでしょうか。

 上記はいずれも歴史あるメーカーでの不祥事であって、会社の規模も似ています。
 そのうち2社は子会社での不祥事ですが、子会社における不祥事は多くの不正事例に共通します(「子会社の管理体制をどのようにするか」は、非常に重要な経営課題とされる所以です)。
 もちろん、「不祥事があった会社はけしからん」と考えるのが通常でしょう。
 しかし「よくぞこの程度の金額で早期に不祥事を発見できたものだ」と見方を変えることが適切な場合もあるでしょう。
 不正事例を見る場合、「不正が発覚されなかった期間」、「損益に与える影響」、「不正が発覚したきっかけ」、「不正が発覚されなかった原因」などに着目すると、その不正の悪質さのみでなく、その会社の内部統制の不備の程度を知る勘所になると思います。
 参考まで。Taku

2015年10月 マツモトキヨシ子会社不正

 マツモトキヨシホールディングスの連結子会社である株式会社イタヤマ・メディコにて、在庫の水増し(約4億円)による不正が発覚しました。
 同社は、平成27年10月1日に、マツモトキヨシの連結子会社であるマツモトキヨシ甲信越販売に吸収合併されています。合併した途端にその子会社で不正が発覚したことになります。
「なんとも不幸なことだ」と思うのか、又は「合併に当たって十分に調査したのか?」と思うのかは、情報の受け手次第でしょうか。
 会社の公表資料では、「現在、不正な会計操作の内容の詳細、影響金額を含め、真相解明のため鋭意調査中」とのことですが、現時点で判明している事実が公表されているので、以下で紹介します。

 「イタヤマ・メディコとマツモトキヨシ甲信越販売との統合処理の過程において、イタヤマ・メディコ社長の指示により、同社において、過去の営業損失発生の事実を隠蔽する目的で、複数年にわたり、在庫水増し処理により架空棚卸資産を計上するという不正な会計操作が行われていた可能性があることが発覚いたしました。」

 上記のうちキーワードは「統合処理の過程」「社長の指示」「損失発生の事実を隠蔽~在庫水増し処理」でしょう。以下、それぞれ簡単に解説します。

「統合処理の過程」
 合併した場合、会計単位が統合されます。今までは別々の会社であったのが、一つの会社になったわけですから、会計処理方法等について統一化を図る必要があるのです。そのため取引や勘定、開示等について、詳細な調査を行うことになります。昨今では会計ソフトを利用して処理することが通常でしょうから、これらのデータの移行も「統合化」の作業に含まれることでしょう。しかし、合併が決まってから会計処理の詳細な調査が初めて行われるわけではありません。合併の条件を検討する上でも、決算書の適否を検証しているはずなのです。下記で示すとおり、この疑問こそが今回の不正事例を大きなポイントでしょう。

「社長の指示」
 不正事例研究会でも幾度も扱っている事例ですが、「社長の指示」は統制できません。会社の管理プロセスの総称である「内部統制」は、社長の責任の下で構築されます。とすれば、社長の指示でこれを無効化することは容易に行いうるわけです。損失の計上を「かっこうわるい」と考えた社長の指示で粉飾(お化粧)をしていたことになります。化粧品を販売するだけでなく、その化粧を実行して事実を隠蔽するとは・・・。お化粧は身だしなみとしても、決算書のお化粧は図々しい限りでしょう。

「損失発生の事実を隠蔽~在庫水増し処理」
 売上総利益(粗利)は、売上高から売上原価を差し引いて算出されます。この売上原価は、①期首棚卸資産に②当期仕入高を加えて、③期末棚卸資産を差し引くことで算出されます。ということは、③の期末棚卸資産を水増しすればするほど、売上原価は過小に算出されることになります。この結果、在庫水増し→利益計上(損失隠蔽)となります。こうした粉飾手法は、金額が増加していく傾向があります。「複数年」とあるのは、次第に粉飾金額が増加していったことが想定されるのです。いずれにしても、在庫の水増しは、粉飾決算の伝統的かつ基本的な手法といえるでしょう。

 合併や買収をする際には、その企業価値を適切に評価するためにデューデリジェンスを行うことが通常であり、その中で不適切な会計処理が明らかになることが一般的です。
 特に上場しておらず、会計監査を受けたことのない会社の場合、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に準拠して会計処理を修正すると、数多くの修正が必要となることが実状です。通常、監査を受けていない決算書は、信頼性の乏しいものと考えられているのです。
 それだけに、あくまで一般論として述べれば、非上場企業を吸収合併する場合には、相応に慎重にデューデリジェンスを行うはずなのです。今回の合併直後の子会社の不正発覚は、M&Aを進める企業にとって大きなリスクであることが改めて実感されたと思います。
 果たして事前にこうした粉飾が明らかにならなかったのか?とても大きな疑問ですが、イタヤマ・メディコについて、もう少し調査してみようと思います。いずれにしても今後の調査結果の報告を待ちたいと思います。Taku

2015年9月 大学・企業での研修会にて【不正事例】

 大変有難いことに、9月に入って研修の仕事が立て続けに入りました。
 一つは沖縄の大学にて。
 4日間の集中講義でしたが、学生に向けて不正事例を紹介してきました。
 また今日は、一部上場企業の企業研修がありました。かなり大きな会場で数百人を前に話しましたが、研修後でも気分が高揚して、かなり興奮気味です。いい緊張感を味わうことができました。

 さて、以下は、上記の研修会で紹介した不正事例の一部です。良くありそうな不正事例とそのコントロール策です。

1.ポンタカード・ティーポイントカード不正
【不正事例】
 お客さんのポイントを自分のポイントにしてしまう不正が考えられる。
【コントロール】
 「ポンタカードお持ちですか?」とお客に尋ねることで、自分のポンタカードの使用を牽制する効果がある。「ポンタカードお持ちですか?」と尋ねておきながら、自分のポンタカードを使用しようとすれば、客は不審に思うためである。

2.レジ打ち省略による売上高代金の着服
【不正事例】
 飲食店等でのレジ打ちを省略し、売上を過少とし、その売上代金を横領する不正である。店長やオーナーが脱税のために行う場合もあれば、アルバイトが店の売上代金を着服する場合も考えられる。
【コントロール】
 店長やオーナーによる不正は防止が困難であるが、例えばレジの前に「当店ではレシートをお客様にお渡ししております。」と掲示することで、レジに入力してレシートを渡さないと客が不審に思うことから、一定の牽制となる。

3.割引券の不正使用
【不正事例】
 レストラン等の飲食店にて、販売促進用の「100円割引券」「10%割引券」を、お客が持参していないにもかかわらず、お客が持参したかのようにして、その割引額の詐取する不正が考えられる。
【コントロール】
 会計直前の割引券の使用を禁止し、飲食前に割引券を提示してもらい、店長その他の店員にお客が割引券を提示したことを確認させる。または、高額な割引券の場合には、お客の住所、氏名の記入を求めることで、店員の一存で割引券を使用することを牽制する。

4.廃棄食品の持ち帰り
【不正事例】
 ファストフード店にて、一定時間を経過した食品を廃棄するルールを悪用して、販売見込みのないまま食品を製造して、意図的に廃棄する食品を増加させ、これを詐取する不正が考えられる。
【コントロール】
 曜日、天候、時間帯等によって販売予測を行い、製造量を予め決めておく。また廃棄する場合には、廃棄した食品の種別、量、時間、担当者を継続的に記録させ、これを責任者が査閲し、特定の者に偏って廃棄が生じていないか監視する。

 いずれも地味な不正事例ですが、やはり適切なコントロールにより、不正を防止・発見する仕組みが必要であることは言うまでもありません。皆さんも身近に不正事例があると思います。もし可能であれば、その防止・発見策を検討する上での参考となりますので、ご教授賜れれば幸いです。メールは以下へ 
 takuya@nakazato-cpa.com
 もちろん、会社名等、守秘義務は厳守します。Taku

2013年12月 グリーンクロス在庫の横流し

 2013年12月、工事現場で使用する安全機材用品等の販売・レンタルを行う株式会社グリーンクロス(福証)は「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 同社の2013年4月決算数値は、売上7,971百万円、経常利益665百万円、当期純利益365百万円であり、数値面でかなり健全な会社に見えますが、工事現場で使用する多くの種類の棚卸資産を保有しており、その棚卸対象外商品が不正の対象となったようです。
 不正実行者である元従業員は、7年間にわたり仕入れた商品を不正に転売し、その売却代金40百万円を着服していたようです。
 発覚の経緯は「商品の仕入れに対応する売上が計上されていないこと」が明らかになったためです。当たり前の話ですが、仕入だけが計上されて、売上が計上されなければ「おかしいな?」と気がつくわけですが、今回の不正は長年にわたり不正に気がつきませんでした。その理由として上記の報告書だけでは十分に把握できませんが、あくまで一般論としてこうした不正防止・発見策を考えてみましょう。
 
 第一に実地棚卸の重要性です。
 一般に棚卸資産は下記の三種に区分します。
A 定期的に実地棚卸を行うとともに継続的に受け払い記録も行う。
 この管理方法では「あるべき在庫数量」が常に把握されますから、棚卸による「実際の在庫数量」との差額は棚卸減耗として認識されます。棚卸の頻度を増やせばより厳密な管理体制となります。
B 定期的に実地棚卸を行うが継続的に受け払い記録は行わない。
 やや簡易な管理方法ですが、「前回の棚卸数量+仕入数量-今回の棚卸数量」を払い出し量とみなす方法で、棚卸減耗があったとしても払い出し数量に含まれてしまいます。Aほどに重要でない在庫に適用する方法です。
C 実地棚卸対象にもしないし継続的に受け払い記録も行わない。
 重要性の乏しい消耗品等の管理ではこれで十分です。購入した時点で「全部使った」として処理する方法です。
 重要なことは、自社が取り扱っている商品を「どのように管理するべきか」を責任者が意思決定することです。レアメタル等の稀少品であれば必然的にAで管理するでしょうし、ボールペンやコピー用紙等の少額・多量のものはCで管理するでしょう。
 報告書によると、今回の不正の対象となった商品は「棚卸管理外の一部の商品」でした。
 果たして、実地棚卸管理する必要がなかったのか?疑問が残るところです。

 第二に、売上管理・利益管理にも問題があった可能性があります。
 商品別の売上高及び利益率を把握していれば、「仕入だけ計上されて売上が計上されない」という状況は「直ちに」把握できたはずです。「どんぶり勘定」での利益管理は、他の商品の利益と相殺されて、どうしても細かい異常に気がつかないことが多いのです。
 特に多品種の商品を販売している場合には、どのレベル(商品別・商品群別・グループ別等)で利益管理を行うかについても重要な決めごとなのです(その際、利益管理の意思決定という問題意識だけでなく、不正の防止の観点も考慮する必要があるでしょう)。
 調査報告書で会社が指摘するように「発注した商品と受注との連動性」や「発注、検収、代金支払いに係る業務プロセスの再点検」も必要でしょうが、資産の保全のための「棚卸」と、利益管理のための「商品別利益管理」を徹底すれば、今回の不正は、ある程度、防止できるはずだと思います。
 特に業績の良い会社の場合、利益管理が「いい加減」となり、コスト面で「もっと無駄を省くことはできないか」という意識が乏しいことがあります。
 他に同様の不正が生じていないか、気になるところです。Taku

在庫の横流し 冷凍パン

 食品生産機械の開発、製造、販売を手がけるレオン自動機株式会社で、子会社における製品の不正流出と見られる事案が発生しました。公表資料によると、アメリカのカリフォルニア州「オレンジベーカリー」という連結子会社で製造した冷凍パンの一部を社員が不正に流出させていた可能性が示されています。
 金額は200万ドル(80円/ドル換算で1億6千万円)ですが、この不正は12年(1999年4月~2011年3月)の長きにわたり行われていたようです(こうした長い不正は、「なぜ発覚したのか」が注目されるのですが、公表資料では明らかになっていません)。
 
 同社グループの2011年3月期の売上高は172億円、経常利益が8億8千万円ですから、決算に与える影響について重要性はないと判断される可能性がありますが、会社は再発防止策を下記のように示していますが、解説を交えます。

(1)権限を一人に集中させないよう、組織の変更と権限の分散を実施
非常に基本的なことですが、一定の業務を一人に委ねると不正の発生可能性が高まる一方でその発見可能性が低くなります。不正が生じやすい可能性に応じて、組織、権限分散のあり方を考えることが内部統制構築の基礎です。

(2)受注、生産、在庫、材料発注のシステムでの管理の徹底をするよう改めチェック機能の強化を図る
「冷凍パンの一部を社員が不正流出」したというのは、いわゆる在庫の横流しで、会社に無断で同業者に販売して、その資金を横領するケースが想定されます。こうした不正を防止するには、材料の購入、生産、在庫等、モノの動きを管理する仕組みを強化することも重要ですが、標準的な材料の消費量を把握しておき、それと実際の生産量や販売量とが整合するかどうかチェックするといった監視も、時として有効な場合があります。特に、不正実行者が「もしかしたら見つかってしまうかも知れない」と思わせるようなチェック機能を工夫することが重要です。

(3)コンプライアンスに対する社員教育の徹底を図る
 社員教育は従業員のレベル向上に有効です。効果的な教育方法については検討が必要でしょうが、「不正を許さない雰囲気」を作り上げることが重要です。そのためには、管理者がちょっとした不正も許さない姿勢を示し、厳格な態度で不正に対峙することが重要です。

<表示の問題>
 在庫の横流しの場合、実際になくなった在庫は実地棚卸の対象にはならないため、棚卸減耗として売上原価に含まれて計上されることが一般的です。本事例でも被害金相当額は1999年4月から2011年3月期までの過年度決算において売上原価に計上されていることが示されています。
 ただ厳密には、この開示資料に示されているとおり、売上原価として計上されるのは適切ではなく、従業員の不正による損失として営業外費用に計上することが適切と思われます。一方で、金額的な重要性の判断如何によっては、特に問題視されるレベルにはないのかも知れません。

在庫の横流し 冷凍パンの一部の流出

ミネルヴァ・ホールディングス連結子会社での在庫横流し 2011年12月

ミネルヴァ・ホールディングス(JASDAQ)の連結子会社(ナチュラム・イーコマース株式会社)で社員による在庫の横流しについての開示がありました。

「在庫の横流し」は、会社の財産である棚卸商品を会社に無断で販売して、その売却代金を横領する典型的な不正の手口です。取り扱う商品が小型で持ち運び容易な場合や、簡単に資金化ができる場合に生じやすい不正です。

この事件では、ロッド(竿)やリールといった釣り具が不正の対象となったようです。
釣り具にはかなり高額なモノがあります。
不正実行者は、これらを会社から窃取して、自ら販売して金儲けをしていたようです。
同社の公表した資料によると、不正実行者は2006年1月~2011年8月の間で、153百万円相当の商品を搾取したとされています。
棚卸商品の不正防止のためには、入庫時や出庫時の数量管理の他、保管されている商品の現品視察(棚卸)といった管理体制を構築することが一般的です。また、棚卸商品は通常数量が多いため、ITシステムを利用して数量や単価の管理を行います。

この営業部長職の不正実行者は、こうした管理に対して、以下のような隠蔽工作を講ずることで不正発覚を免れていました。
① システムを不正操作して在庫数量のつじつま合わせをしていた。
② 商品の現物がないままに虚偽の入荷処理を行っていた。


まず①について、不正実行者は商品を会社に無断で処分しているのですから、商品の現現品が減少していることになります。そこで不正実行者は、棚卸の際に不正が発覚しないよう、システム上の帳簿数量を操作していました。

 特に竿やリールは組み合わせて販売することが多いようで、その組合せや解放(組合せをやめて個々の竿やリールとして管理し直すこと)の際に、数量を誤魔化していたようです。本来であれば扱う商品の特徴に応じた在庫管理方法が望まれるところですが、システム上の弱点をつかれた形になりました。

 一方②について、仕入先から送付された商品を不正実行者が無断で持ち去っている場合には、会社に入荷されるはずの商品が入荷されないことになります。ところで一般の会社では、入荷されていない商品に対して支払いをしない仕組みを構築しています。これは、商品の現物を確認した上で入荷処理(いわゆる検収作業)を行い、その入荷処理済みの商品について仕入先に支払いを行う仕組みです。

 同社でも同様の仕組みがあったようですが、この不正実行者は、社内の者(不正に関与したとの認識はない模様)に対して、窃取した商品の合計金額と合致するよう虚偽の入荷処理を行わせていたようです。

この点が不正発覚を遅らせた原因にもなったようですが、商品の現物がないまま虚偽の入荷処理をすれば、窃取した商品に係る仕入先からの請求金額に対応する入荷記録を作成できますから、「入荷処理した商品について支払いを行う」ことになり、仕入先への商品代金の支払い処理の段階において、不正発覚はできなくなります。

 このように本来不正を防止・発見するために構築した内部統制という仕組みを無機能化することが行われていました。

<なぜ発覚しなかったのか、そして、なぜ発覚したのか>

 本件の興味深いところをもう一つ示します。
 会社側は、本件不正行為が約5年半にわたり発覚しなかったことについて、「巧妙な隠蔽工作」があったことをあげていますが、一方で、発覚に至った原因について、不正実行者が「不正操作の方法を変更したこと」をあげています。
 こうした説明を逆手に取ると、「不正実行者が不正操作の方法を変更しなければ、不正の発覚はさらに遅れていた」ことになります。
要するに不正実行者が「馬脚を現した」ということでしょうか。

 不正実行者は、当初「実際に販売されることはない・・・商品名を付けたセット商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。この場合、当該セット商品の在庫が増加しても、不要な入荷であるとして不審を抱くような事態は起こり得なかったとされています。

 一方、変更後の手法では、「実際に・・・仕入れを行っている商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。その結果、「なんでこんなに高額な商品を仕入れているのだ」「顧客からの需要を大きく越える入荷がなされているぞ」という社内の担当者の不審が社発覚の原因のようです。

 要するに、商品名の名称の問題のように見受けられます。 

 それでは、なぜ不正操作の方法を変更したのか?
 この点は、不正実行者は曖昧な回答に終始しているようです。

不正は隠蔽工作を伴うことが一般的です。隠蔽工作は数値の意図的な変更や偏向を招きます。それらが不正の兆候となるのです。
「何でこれが増えているの?」「もっと安くても良いんじゃない?」「異常に高額だな?」
そうした「気づき」が不正発覚の糸口になるのかも知れません。

ミネルヴァ 在庫の横流し



ミネルヴァ・ホールディングス(JASDAQ)の連結子会社(ナチュラム・イーコマース株式会社)で社員による在庫の横流しについての開示がありました。

「在庫の横流し」は、会社の財産である棚卸商品を会社に無断で販売して、その売却代金を横領する典型的な不正の手口です。取り扱う商品が小型で持ち運び容易な場合や、簡単に資金化ができる場合に生じやすい不正です。

この事件では、ロッド(竿)やリールといった釣り具が不正の対象となったようです。

釣り具にはかなり高額なモノがあります。

不正実行者は、これらを会社から窃取して、自ら販売して金儲けをしていたようです。

同社の公表した資料によると、不正実行者は2006年1月~2011年8月の間で、153百万円相当の商品を搾取したとされています。

棚卸商品の不正防止のためには、入庫時や出庫時の数量管理の他、保管されている商品の現品視察(棚卸)といった管理体制を構築することが一般的です。また、棚卸商品は通常数量が多いため、ITシステムを利用して数量や単価の管理を行います。

この営業部長職の不正実行者は、こうした管理に対して、以下のような隠蔽工作を講ずることで不正発覚を免れていました。



① システムを不正操作して在庫数量のつじつま合わせをしていた。

② 商品の現物がないままに虚偽の入荷処理を行っていた。



まず①について、不正実行者は商品を会社に無断で処分しているのですから、商品の現現品が減少していることになります。そこで不正実行者は、棚卸の際に不正が発覚しないよう、システム上の帳簿数量を操作していました。

 特に竿やリールは組み合わせて販売することが多いようで、その組合せや解放(組合せをやめて個々の竿やリールとして管理し直すこと)の際に、数量を誤魔化していたようです。本来であれば扱う商品の特徴に応じた在庫管理方法が望まれるところですが、システム上の弱点をつかれた形になりました。

 一方②について、仕入先から送付された商品を不正実行者が無断で持ち去っている場合には、会社に入荷されるはずの商品が入荷されないことになります。ところで一般の会社では、入荷されていない商品に対して支払いをしない仕組みを構築しています。これは、商品の現物を確認した上で入荷処理(いわゆる検収作業)を行い、その入荷処理済みの商品について仕入先に支払いを行う仕組みです。

 同社でも同様の仕組みがあったようですが、この不正実行者は、社内の者(不正に関与したとの認識はない模様)に対して、窃取した商品の合計金額と合致するよう虚偽の入荷処理を行わせていたようです。

この点が不正発覚を遅らせた原因にもなったようですが、商品の現物がないまま虚偽の入荷処理をすれば、窃取した商品に係る仕入先からの請求金額に対応する入荷記録を作成できますから、「入荷処理した商品について支払いを行う」ことになり、仕入先への商品代金の支払い処理の段階において、不正発覚はできなくなります。

 このように本来不正を防止・発見するために構築した内部統制という仕組みを無機能化することが行われていました。



<なぜ発覚しなかったのか、そして、なぜ発覚したのか>

 本件の興味深いところをもう一つ示します。

 会社側は、本件不正行為が約5年半にわたり発覚しなかったことについて、「巧妙な隠蔽工作」があったことをあげていますが、一方で、発覚に至った原因について、不正実行者が「不正操作の方法を変更したこと」をあげています。

 こうした説明を逆手に取ると、「不正実行者が不正操作の方法を変更しなければ、不正の発覚はさらに遅れていた」ことになります。

要するに不正実行者が「馬脚を現した」ということでしょうか。



 不正実行者は、当初「実際に販売されることはない・・・商品名を付けたセット商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。この場合、当該セット商品の在庫が増加しても、不要な入荷であるとして不審を抱くような事態は起こり得なかったとされています。

 一方、変更後の手法では、「実際に・・・仕入れを行っている商品」で虚偽の入荷処理を指示していたようです。その結果、「なんでこんなに高額な商品を仕入れているのだ」「顧客からの需要を大きく越える入荷がなされているぞ」という社内の担当者の不審が社発覚の原因のようです。

 要するに、商品名の名称の問題のように見受けられます。 

 それでは、なぜ不正操作の方法を変更したのか?

この点は、不正実行者は曖昧な回答に終始しているようです。



不正は隠蔽工作を伴うことが一般的です。隠蔽工作は数値の意図的な変更や偏向を招きます。それらが不正の兆候となるのです。

「何でこれが増えているの?」「もっと安くても良いんじゃない?」「異常に高額だな?」

そうした「気づき」が不正発覚の糸口になるのかも知れません。
プロフィール

TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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