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2018年2月 JA秋田おばこ赤字56億円

 ようやく産経新聞が取り上げました(2018年2月1日の産経新聞の朝刊です)。
 いままで地元の秋田魁新報が取り上げていたのは注目していましたが、今回はJA秋田おばこで明らかになった標記の問題を取り上げます。事実関係を簡単に整理します。

① JAが組合員からコメを買い取ります。
② JAは買い取った代金を組合員に対して支払います。仮払いです。
③ JAは買い取ったコメを卸業者へ販売します。
④ コメ卸業者から支払われる販売代金をJAが回収します。
⑤ ②と④の差額を精算します(④<②であれば、生じた余剰金を組合員に対して追加で支払いますが、②>④であれば、生じた損失を埋め合わせるのに組合員から徴収が必要となります。)

 JA秋田おばこで問題になっているのは、②>④となっている状況です。つまり④の販売代金が②の購入代金を下回っているため、組合員に対してコメ代金を過大に支払った状況が継続し、長年にわたって赤字が続いているのです。
 「高く仕入れて、安く売れば、損失になる」という、とても単純な話です。
 なぜそんなことをするのでしょうか?
 「販売量日本一のプライドがある」という理由もあるようです。要は「コメを集めるため②の仮払金を多額に設定している」というのです。残念ながら、実際はそれほどの販売力などないにもかかわらず・・・です。
 また、見方によっては利益相反の可能性も考えられます。自分の家族が米を作っていれば自らの利益のため、または蜜月の関係にある農家の利益のため、「JAが損をしても構わない」と考えて、多額に仕入れたのであれば、これは立派な違法行為です。

 いずれにしても注目すべきは、「高く仕入れて安く売ることでJAに損失が累積していった」という事実です。私には、JA役員らが問題を直視できず、ただなし崩し的に問題を放置してきた、としか見えません。
 にもかかわらず、産経新聞の記事では、本件の累積赤字について、代表理事長の以下のコメントが掲載されています。

 「事務経理が手薄になっていた。深く反省している。」

 私には、問題をすり替えているようにみえるのですが、どうでしょうか?
 ゲスの勘ぐりかもしれませんが、累積損失は把握しつつも、「きっといつか何とかなる」「いや、なんとかしなきゃいけない」と悩み続けた問題じゃぁないんですか?
 果たして、JA秋田おばこの理事会では、理事33名の報酬を4カ月にわたって50%減額することを決めたそうです(その減額した総額だけでも公表してほしいものですが・・・)。
 その金額がJAの損失を補填するほどに十分な額なのか、または「焼け石に水」程度の金額なのか、想像に任せる他ありません。
 農協法の理事の責任は、会社法の取締役の規定を準用しており、株式会社の役員が株主代表訴訟によって巨額の賠償責任を負う事例と同様に、JAの役員も厳格な責任を負っています。
 JA役員には、JAおばこが被った損害を補填する責任があるのです。
 このことは、きっとJA役員本人の皆様は自覚していると思います。
 直接的な利害関係のある組合員の出方次第ですが・・・、JA役員の大きな責任問題となる可能性が高いでしょう。

 次回は、少し古い話になりますが、やはり同様な問題が秋田県で発生したことを扱おうと思います。
 とっても根深い問題なのかもしれません。Takun
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2014年4月 インサイトとチッソ

 インサイトといえば、ホンダの車名?チッソといえば、水俣病問題の会社?
 両者に全く共通点はなさそうですが、実はいずれも「2014年4月に公表された架空発注に関する不正事例に関連する会社」という意味で共通します。
 まずはインサイトの不正事例。
 札幌証券取引所アンビシャスに上場する株式会社インサイトは、北海道の総合広告会社で、企画、制作、プロモーションを手がける会社です。同社は2014年4月に「当社元従業員の不正行為に関するお知らせ」を公表しています。
 どうしても「不正の公表」というと会社の不祥事ということで、マイナスイメージが拭えませんが、今回の上記の不正の公表は、個人的には、かなり好感度が高いと考えています(厳密にはマイナスイメージが少なかったといった方が良いかも知れません)。
 というのも、この不正は2014年2月~3月に、不正実行者が複数の仕入先を利用して架空の発注を行い、納品されたパソコン等を売却して得た資金を横領していたというものです。不正の額は11百万円。仕入先からの3月末日予定の支払がない旨の指摘があったことをきっかけとして、不正行為が発覚しています。
 不正の実行期間は2ヶ月で短く、被害総額も11百万で少額です。公表のタイミングも不正実行期間の終了後、1ヶ月です。これだけ短期間に金額も多額にならずに、しかも迅速に公表しているケースは、多くの不正事例を紹介している中では稀です(その意味で違和感さえ覚えます)。
 不正実行者は「すぐにバレる」と知らずに実行したのでしょうか?
 こうしたキッチリとして組織であれば、不正は実行しにくいでしょうし、再発する可能性も低いでしょうし、さらに万が一不正が発生したとしても、早期に発見できることが期待できるといって良いと思います。

 一方で、チッソの事例です。
 グリーンシート銘柄のチッソは、「あの水俣病の会社」です。
 同社は2014年4月「当社孫会社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 チッソは2011年3月10日の取締役会決議により、中核子会社であるJNCに主要な事業を譲渡することを決定し、持株会社として子会社の管理と、水俣病患者への補償を行うことに特化しています(2011年3月10日といえば、「あの」2011年3月11日の前日です。あまり関係はないのでしょうけど。)。
 今回の不正は、その事業譲渡されたJNCとその子会社(チッソからすれば孫会社)であるJNCファイバースで行われました。その孫会社の元従業員が不正実行者として、架空の納品書を偽造して、あたかも荷造り梱包材等が納品されたように見せかけ、上記の子会社及び孫会社に対して製品代金を振り込ませ、これを詐取していたとされます(不正実行の期間、金額等の詳細は現時点では公表されていません)。

 上記いずれも架空発注・支払代金の詐取という不正事例です。
 こうした不正には、一般的に発注時の承認や納品時の検収作業の分掌化、現品管理の強化(入出庫記録や定期的な棚卸等)、請求書や支払依頼書といった支払に関する書類の承認といった個別的なコントロールも有用です。
 また、補完的な統制ではありますが、無駄な支出がないかどうか十分に吟味した上で予算を編成し、これと実績との対比を通じて、異常な増減を検討することも有用です。当初想定した費用と比較して、異常に増加している支出があれば、「パソコンの購入費用が多い」「荷造り梱包材の費消が多い」等の変動を認識しやすくなるでしょう。その原因究明の結果、不正が明らかになることもあるのです。
 いずれにしても、業務実行者を野放しにせず、相当のコントロールの元で業務が遂行されていることを実感させ、「何か悪さしてもどうせ見つかってしまうよ」と思わせることが肝要なのでしょう。
 インサイトとチッソ。業種や業態、規模その他、全く異なる会社ですが、起きうる不正は共通するのです。Taku

2014年3月 日本フェンシング協会 続報

 領収書のねつ造により助成金を詐取したとされる日本フェンシング協会では、全員の理事20名が辞職しました。不正の概要は前回「2014年2月日本フェンシング協会 滞在費の水増し請求」で扱いましたが、どうしても腑に落ちないことがあり、もう少し調べてみました。
 前回の記事でも指摘しましたが、協会が公表した報告書には、以下の記述があります。
「理事は無償で労務を提供し、又別の理事は1年で1億5千万円を拠出していた」
「国庫の助成も検討されるべき」
 また、上記に加えて、個人的な以下の疑問があります。
「何も全員が辞任する必要はなかったのではないか?」
「その後のフェンシング協会の活動に支障を来すのではないか?」
 確かに「詐欺」といわれてもやむを得ない不正を行ったことは事実なのですが、その不正の問題の程度との「理事全員辞職」のバランスが合っていないような気がするのです。加えて、せっかく強い選手が出てきて、注目の浴びているスポーツとなったにも関わらず、本事件で台無しになってしまうのではないでしょうか?
 
 そこで、いろいろ考え直した結果、謎が解けました(ような気がしました)。私の憶測も含みますが、以下で説明します。

 協会の活動には「先立つもの=お金」が必要です。フェンシング協会では、年間、数億円にも及ぶ活動資金が必要です、会費だけでは「焼け石に水」の状態です。つまり誰か活動資金を負担しなければなりません。
 これを支出していたのが、いわゆる「旦那衆」です。
 相撲界でもそうですが、強い力士には後援会があります。後援会の会長は、地場の経済界のトップの人が「名誉職」のように就任するケースが多いと聞きます。この旦那衆は何故お金を出すのか?その理由は人それぞれなのでしょうが、ほぼ間違えなく言えることは以下の三つです。

①お金と時間に余裕があること
 生活に苦しんでいる人は、他人の生活の面倒は見ることはできません。時間も同様です。
 会社を興して成功した人には経済的な余裕があります。これが「お金を出す」重要な前提条件です。
②様々な人と繋がりがあること
 商売を成功させた人は人との繋がりを重視する人がほとんどです。その人の繋がりのために、「自分のお金が役に立てば良い」と考えているのです。「つきあいだから出そう」「その代わり頑張ってくれ」という感覚があったはずです。
③プライド・名誉職
 お金と時間をかけた選手がオリンピックでメダルを取れば旦那衆は大喜びです。選手も感謝してくれますから、旦那衆は胸を張って選手を連れ歩くことになるでしょう。このためにお金と時間を出していると言っても過言ではないかもしれません。

「主要な理事が、自ら経営する会社やその伝をつかって、協賛金や寄付金等を集めていた。」
 報告書の中の一節です。
 日本フェンシング協会の会長・副会長職の方々は、有名な企業の会長も含まれています。その旦那衆が「フェンシングの振興のため」に一肌脱いで頑張っていた構造が目に浮かびます。
そうであるが故に、今回の不正の発覚で「理事全員が辞任」につながるわけです。
 せっかく頑張って時間と金を使ってきたのに、逆に不名誉な扱いなどされたら、だれでも「やってられない」と思うはずなのです(もちろん、責任意識の強い方が多いでしょうから、「一度仕切り直しで、全員やめよう」という「けじめ」の現れも含まれるでしょうが)。

 前回も書きましたが、今回の不正で最も重要なことは、人員不足も含めて管理体制が不十分だったことです。報告書を読めば、数億円もの金が動いている体制としては、かなり貧弱だったことが理解できます。
 この点、旦那衆=経営者である以上、経理・総務等の事務系の体制が整備されていない限り、事業は絶対にうまくいかないことは、身をもって経験している方もいたはずでしょうし、内部統制の重要性は認識していたはずです(もとより、自分の興した会社ではありませんから、管理体制に対する意識は低かったかもしれませんが)。
 その意味で事務を任されていた事務局長(税理士の有資格者)の責任は重いでしょう。
 補助金を申請する以上、ちょっとした間違いでも役所から五月蠅く指摘されるのは、分かっていたはずでしょう。また一方で、旦那衆も「税理士に任せてあるから大丈夫」と考えていたかもしれません(もしかしたら選手に金をかける前に、事務局に金をかけるべきだったのかもしれません)。

 今回の事件は、日本のフェンシングという一つのスポーツの将来に大きな影を与えています。旦那衆がお金を出さなくなれば、強い選手が生まれなくなるでしょう。その意味で、国が支援する必要が、より強くなるはずです。公費を使うのであれば、役所に説明がつくような資料作りが必要になりますから、管理体制の強化は必須です。決して、旦那衆がポケットマネーで支援してくれることと、同様に考えてはいけません。
 今後の東京オリンピックの開催を前にして、同様の事件によりスポーツの振興に大きなブレーキがかかるようなことがあってはなりません。
 各スポーツ関連団体は、これを機に、自らの管理体制が十分かどうかを検証する必要があるでしょう。また、スポーツ振興を謳う公の団体も、単に寄付や助成を行うだけでなく、管理体制が十分かどうかについての検証を行うことも必要でしょう。
 いずれにしても、スポーツ関連団体の管理体制強化が進むことを期待しましょう。Taku

2014年2月 日本フェンシング協会の「滞在費」の水増し請求

 2014年2月、公益社団法人である日本フェンシング協会は、「JSC委託金不適切な会計処理に関する第三者委員会による最終報告書」を公表しました。
 フェンシングと言えば2008年の北京五輪で銀メダル、2012年のロンドンオリンピックで団体銀メダルは記憶の新しいところです。一方で、相撲界や柔道界をはじめとした暴力事件等、スポーツ界での様々な不祥事が世間を騒がしていることも事実です。
 今回のフェンシング協会の不祥事では、理事20名全員が辞職するという異例の事態となりました。上記報告書を見ると、その不祥事の背景を垣間見ることができます。
 以下、個人的な見解を交えつつ、上記報告書の内容を紹介します。

 「日本人がメダルを取って欲しい。」という期待から、税金を使って選手を強化する仕組みとして「メダルポテンシャルアスリート(MPA)育成システム」ができました。その名のとおり、「メダル獲得の潜在力を有するアスリート」を育成する仕組みです。
 今回の不祥事はこの仕組みを利用したものです。
 不正の手法はいたって単純です。
 実際には支払っていない宿泊費を支払ったことにして、一律20,000円/日の領収書を選手等に作成させ、これを滞在費として支出した証拠資料として利用していたのです。
 当然に1日8,000円のホテルに泊まれば、その差額の12,000円(=20,000円-8,000円)は実際に払っていないわけですから、詐取する形となります。
 以下、概算ですが、上記の不正の結果、実際は3百万円の滞在費を12百万円と偽り、9百万円が過大請求となりました。同協会は、その不正請求額を返還しています。

 フェンシングという競技は多額の資金が必要と言われます。
 国際大会はほとんどが欧米で行われますから旅費等の滞在費がかかります。また機材やコーチの招聘等にも多額の資金が必要です。素人目にも強い選手を育成するには、巨額の資金が必要であることは理解できます。しかし、だからといって領収書のねつ造まで行って資金を捻出することは許されるはずもありません。

 私が気になった点の一つは、こうした単純な不正に関する以下の報告書の記述です。
 「領収書を書いた選手及び書かせたコーチらも『@20,000円×宿泊日数』の領収書に関して、不正な処理に荷担しているという認識はなかった。」
 この点はやや疑問が残ります。
 領収書がどのような意味を持つか、一般的な常識人であれば理解できるはずでしょう。
 実際に支給されていない20,000円の領収書にサインをすることの不自然さ・不正の可能性は、専門家でなければ察知できないような複雑な問題ではありません。通常の大人なら「気がつくはずの問題」と思いますが、どうでしょうか?
意地悪な人の中には「スポーツばかりしていた人だから、一般的な常識はないんだ」という方もいるかもしれません。しかし、私は絶対にそうは思いません。
 むしろ逆に、国際大会で活躍するレベルのスポーツ選手であれば、スポーツ精神に則り、正々堂々と、曲がったことが大嫌いで、不正を許さない人が多いことを信じて疑いません。その証拠に報告書の中では「実際に受領した金額と異なる金額の領収書を作成することについて、疑問を感じたことがあると述べる者が少なからず存した」との記述もあります。
要するに、「怪しい」と気付いている人が多くいたわけです。
 にもかかわらず、「不正に荷担している」という認識に至らなかったのは、残念と言うほかありません。選手等も「結果的に不正に荷担していた」とう事実を重く受け止める必要があります(しかし、不正の存在に気付いても良かったのではないでしょうか?)。
 加えて、本不正の首謀者には、「他の事業資金として用いているのであるから法的な問題はない」との認識があり、また「役員や事務局長の個人的な目的のために流用された形跡はなかった」とあります。逆に言えば「他の遠征費用等の事業資金として用いられた証拠があるのか?」ということが問題となるのですが、このあたりの不正首謀者の問題認識力にも大きな欠陥があると言わざるを得ません。
 この点、報告書では、「自転車操業的な処理(入金されても他の事業のために直ちに支払われる状況)」にあったことが示され、他の事業のために支払われている間接的な証拠の存在を示唆する記述もあります。
 しかし、問題の本質は、そうした証拠もない「杜撰な管理状況だった」ということであり、これを放置したことなのです。「ねずみ小僧」でもあるまいし、「詐取したお金でも、正しく使っているから問題はない」ということには断じてならないのです。
 杜撰な管理体制であれば、例えば悪意のある旅行会社やホテル等の取引者からの不当な請求にも応じて支払を行っていた可能性もあるわけです。残念ながら、そうした詐害行為等の被害に遭っていなかったと立証する術も、この組織にはないのです。

 一方で、注目すべきコメントが同報告書の「おわりに」にありました。
「何人かの理事は、無償で、年間延べ数百時間の労務を提供し、また、別の理事等は1年間で合計1億5千万円程度の資金を拠出することにより、何とか決算上の数字のつじつまを合わせていた」
 フェンシングの普及のために労力の提供も惜しまず、身銭を切ってまで日本フェンシング協会を支えていた理事がいたのです。また、同報告書は「運営経費が圧倒的に不足している現況・・・国庫の助成も検討されるべき」としています。要するに「もっと国がお金を出してあげれば良い」ということです。
 こうした第三者委員会の報告書でのコメントは異例です。
 これは、単なる不正請求の話では終わりそうもなさそうです。
 改めて検討する場を設けたいと思います。Taku

2014年1月 NEC関連子会社 経理担当者横領15億円

 今朝の日経新聞の社会面でも取り上げられていましたが、ネッツエスアイ東洋株式会社の経理担当者による資金横領が発覚しました。同社は、紙幣識別装置等のマネーハンドリング機器の製造販売を行う会社で、NECネッツエスアイ株式会社の子会社です。
 同社は、もともと「東洋通信機株式会社」として、社歴のかなり古い独立事業系の会社でしたが、平成17年に事業分離により、NECネッツエスアイ株式会社(日本電気株式会社(NEC)の連結子会社(51.42%の株被所有))の資本参加の結果、同社の100%子会社となっています(そのためネッツエスアイ東洋株式会社は、NECの孫会社に該当することになります)。

 今回の事例で個人的に驚いた点は2点です。
 一つは不正の金額です。
 「15億円」というのは、この類いの不正では相当に多額です。
 感覚的な話ですが、マスコミが取り上げる重要性の指標は「1億円」と思います。1億円以上の横領があると新聞記事に取り上げられることが多いのです。また税務の調査でも1億以上の脱税の場合、刑事告訴されるケースが多いように見受けます。過去の不正事例を見るにつけ、組織的な不正は別として、個人的な不正の場合には、せいぜい1億円~2億円で露見するケースが多いように思うのです。それは、不正実行者が隠しきれないほどの金額、又は行き詰まって身動きがとれなくなる金額なのかもしれません。
 しかし、今回の不正は平成17年~平成25年までの間で15億円にまで膨らんでいます。もう少し早く発見できなかったのか?大きな疑問を抱きます。

 また、今ひとつ驚いたのが、不正の手法です。
 もともと個人的な不正は、管理体制の不備を突いた単純な手法が多いことは事実です。今回の不正も「小切手の二重振出・不正な裏書きによる現金化」という単純極まりない手法です。これほどに単純で金額も多額である不正の場合、単純な検証方法(残高証明書と帳簿との照合や小切手の振出控えや当座照合表との照合の他、銀行勘定調整表と上記関連資料との照合等)でも、比較的容易に不正が発覚したはずなのです。
 なるほど会社の指摘の通り、「残高証明書などの偽造」や「不正仕訳」により不正の隠蔽工作が行われていたことは理解します。しかし、それ以上に「不正実行者に経理業務を長年にわたり任せきりにしていた」ということが問題視されるべきでしょう。

 過去の不正事例では、印刷業者に依頼して当座照合表を「巧妙に」偽造する不正事例もありました。つまり不正実行者は「不正隠蔽のためには何でもする」と考えて間違いないのです。そのため、不正を防止発見する立場にある者は、不正が発覚した場合、不正隠蔽工作の悪質さを強調して自らの責任を回避しようとするのではなく、不正を防止・発見するための体制作りを長年にわたって採用しなかったことを反省するべきでしょう。
 特に上記のような単純な不正である以上、経理担当者のローテーションや強制休暇制度、内部監査部門による定期的な預金残高確認等の一般的な手法が確立していれば、十分に不正の防止・発見に寄与するでしょうから、不正実行者に「不正を行っても見つかってしまう」という心理的な牽制を与えることができたと思うのです。
 ちなみに、横領した資金をどのように使おうが、不正事例の研究には寄与しないため、あまり興味はないのですが、この不正実行者は15億円もの資金を競馬に使い込んでいたようです。
 なんとも愚かしい。
 せめて少額でも的中して、一部でも返済できたのであれば良いのでしょうが、きっとこうした人は、たとえ的中しても、「外れるまで賭け続ける」でしょうから、期待はできません。
 同社が公認会計士・監査法人の監査を受けていたかどうかは調べていませんが、外部監査が入っていれば、直接金融機関からの確認状を入手するので、本不正は発覚した可能性は高いと思われます。
 できれば同社の決算資料も見たかったのですが、同社のホームページには決算書の開示はありませんでした。機会があれば、改めて検討したいと思います。Taku

2013年11月 テレビ朝日元従業員による不正流用の続報

 今回の不正事例「2013年11月テレビ朝日元社員による不正流用141百万円(以下、「今回の事件」という。)」について、昔、同じような事件がありました。
 「テレ朝、所得隠しで責任者解雇
 これは2006年9月、テレビ朝日が国税局の調査を受けた結果として、架空の制作費を番組制作会社に支払ったことが明るみになった事件(以下、「過去の事件」という。)で、当時の社長が記者会見している写真が掲載されていました。
 過去の事件での架空の制作費による申告漏れ総額は155百万円、追徴税額は重加算税も含めて59百万円になるとしています。
 「国税の調査」で「大物プロデューサー」が「番組制作会社」を利用して「架空の制作費を請求させ」、「旅行や服飾・接待等の奢侈財への費消する」という点で、両者は全く同じパターンです。
 さらに不正発覚後の対応も「懲戒解雇」、「役員の減俸」、「刑事告訴の見送り」、「実名公表せず」という対応に加え、約150百万円の水増し請求で金額的にも酷似しています。
 さらに驚いたのは、不正の開始時期です。
 いずれの不正も2002年~2003年頃から不正を始めているのです。過去の事件は2006年9月に発覚しましたが、今回の事件は、その後も発覚を免れていたことになるわけです。
 過去の事件の発覚時に「他に同様の不正はないか」という調査を徹底的に行っていれば、今回の事件は発覚していたかもしれないのです。なんともお粗末な話です。
 全く同様の不正が起きるということは、「こうした不正は、多少はやむを得ないんだ」という姿勢の現れです。それほどにテレビ会社と制作会社との間の「密接な関係」は根深い問題なのでしょう。

 こうした不正が後を絶たず、テレビ朝日の自浄作用にも頼ることができず、本来の目的とは異なる「国税局の調査」によって、こうした不正が「たまに」発覚するというのも、何とも情けない話です。
 効果的と考えられるコントロールは前回の記事の最後に載せていますが、これを含めて、徹底的なコントロールを構築しない限り、こうした類の不正は無くならないでしょう。
 この不正によって「一体、誰が損をしているのか」を真剣に考えることも重要でしょう。Taku

2013年11月 テレビ朝日元社員による不正流用141百万円

テレビ朝日は、2013年11月、「当社元社員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。不正実行者は「まさか」見つかるとは思わなかったことでしょう。
 本件が明らかになって、「俺もヤバい」と思っている人も少なくないかもしれません。
 「悪事千里」といいますが、現実は、発見に至らない不正も多いのです。
 本件の発覚の発端となったのは「国税局の調査」ですが、この調査がなければ本件は発覚しなかったかもしれません。いや、きっと発覚しなかったでしょう。
 こうした不正は発見が非常に困難なのです。以下、検討します。

1.事件の概要
 本件は、不正実行者(テレビ朝日元社員;懲戒解雇)が「外部の制作協力会社」に実態のない業務の代金や実態より高額の代金を請求させ、この資金を私的に流用した事件です。期間は2003年11月~2013年3月の約10年間の長期にわたり、その回数は100回ほどで、総額は141百万円でした。1回の請求に付き100万円から200万円といったところでしょうか。

2.発覚の困難性
 今回の不正で注目すべきは「番組制作費」という「漠然とした支出」が不正対象となっている点です。素人目にみても、番組の制作に際しては様々な支出が必要になることは想像できます。番組制作に当たっては、様々な人材・機材が必要でしょうし、旅費交通費、食費その他、およそ関連づけようと思えば「何でも経費」になりそうです。
 加えて注目すべきは、「テレビ朝日」と「制作協力会社」との関係です。
 当然に、制作協力会社は、立場的に「テレビ朝日」には頭が上がらないはずです。
 テレビ朝日の担当者に逆らえば、制作会社は自らの仕事を失いかねませんから「何でも言うことを聞く」状況は容易に想像できるでしょう。制作協力会社は、テレビ朝日の元社員の言われるがママに、架空請求や水増し請求を続けたことでしょう。
 さらに言えば「業界の慣習」もあるでしょう。私の偏見かもしれませんが、芸能・テレビ関係のいわゆる「業界」は、比較的ノリも軽く、安易に不正の片棒を担がせようという雰囲気があったかもしれません。「○○ちゃん、頼んだよ~」という軽いノリならば、「みんなやっていることだ」という正当化が働いてしまう虞があります。
 上記はあくまで仮の話ですが、上記のとおり「何でも経費になる」「相手は言われるがママ」「軽いノリ」であるならば、今回の不正実行者に限らず、他の真面目な社員であっても、同様の不正を行ってしまうかもしれません。

3.なぜ発覚したのか
 「国税局の調査だから」といっても過言ではないでしょう。税務調査では、「反面調査」という強力な手段を採ることがあります。「怪しい」と思った取引について、相手方の会計処理を調査しに行くのです。
 これも想像の域を超えませんが、本件で言えば、調査対象であるテレビ朝日の「仕入、経費が架空でないかどうか」という問題意識を国税局はもっていたはずです。そのため取引の相手方である外部制作会社側を調査対象として、テレビ朝日側の仕入、経費に該当する「売上、収入」があるかどうかを調べたはずです(こうした取引の相手方の処理から裏付ける調査方法を反面調査といいます。)
 テレビ朝日が支払っているはずの制作費について、番組制作会社側で売上・収入として計上されていない場合、「仕入、経費が架空である」すなわち「テレビ朝日は税金をもっと払え」という理屈が成り立ちます。
 税務調査は「正義のために、不正を発見して悪を挫くこと」を目的としていません。
 あくまで「課税の公正性」の観点から、課税所得の過少申告の有無を調査しています。
 その税務調査の副産物として、「誰かがその制作費を不正に取得している」という疑いが明らかになったわけですから、不正実行者としては「税務調査さえなければ見つからなかった」「不運にも見つかってしまった」と考えているかもしれません。

4.テレビ朝日が公表した再発防止策について
 同社は今後の再発防止策を三つ掲げています。
 「①制作費監査チームの新設」及び「②予算執行の詳細に把握する監督者の設置」は、ある程度の不正の抑止力となるでしょう。こうしたコントロールは、下記の③も含めて、明示的にも黙示的に「君たち(社員)は見張られているんだ」というメッセージになりますから、牽制効果が期待できます(しかし予算と実績との整合性を合わせるような予算消化型の水増し請求については機能しない可能性があります)。
 一方で、下記の「③コンプライアンス誓約書を新設」はどうでしょうか?
 「『制作協力会社』から、架空請求書を発行するなどして、当社社員の不適切な予算執行に協力しないよう、誓約書を提出していただきます。」
 いや、矛先を向ける順序が違いませんか?
 まずは、テレビ朝日の社員(番組制作に係る者)から「不適切な予算執行はしない」という誓約書をもらうのが「先」でしょう。その上で、制作協力会社からも誓約書を入手するのは理解できます。しかし、番組制作会社からのみ誓約書を入手するということは、もしかしたら「今回の不正の原因は、テレビ朝日の社員ではなくて、外部の番組制作会社にある」と考えているのかもしれません。また、それほどに番組制作会社の立場は弱いことの現れなのかもしれません。
 むしろ番組制作会社に対する誓約書の提出も含め、なんでも言うことを聞かせることができるのであれば、以下のようなコントロールも考えられます。例えば、番組制作会社の決算日をテレビ朝日と一致させ、制作会社から収入の一覧を含む決算書を提出させ、当該資料とテレビ朝日側の「番組制作費」と照合するコントロールです。直接的でしょうが、やりすぎでしょうか。
 
 最後に、不正を実行するかもしれない社員から、「私は不正を実行しません」と予め一筆取る方法は、非常に地味な方法と思うかもしれません。しかし、実際は非常に有効な方法なのです。「予め」サインしたことが、その人の心理的な牽制となって、不正の実効を抑止したという有力な実験結果もあるのです。
 可能であれば毎年(番組制作会社からではなく)社員から誓約書を取るのはどうでしょうか?Taku

2013年9月 那須電機鉄工の元従業員不正。領収書偽造で約2億円横領

 鉄塔メーカーの那須電機鉄工株式会社(東証2部)は「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 不正実行者は、八千代工場に勤務していた事務担当者で、消耗工器具備品の購入に関して領収書を偽造して会社資金を着服し、2006年10月~2013年8月までの約7年間での着服総額は約2億円です。
 「社内・社外を含め共犯者はいない」とすれば、不正実行者は、相当大胆に不正を繰り返していたことでしょう。しかし「領収書の偽造」という非常に単純な手口で、長年気がつかなかった理由が気になります。加えて、なぜ、今回発覚したのか、という点も気になります。
 今回発覚した理由に、早期発見のためのヒントがあると思います。
 今後は「社内調査委員会を設置し、外部専門家の協力を得て調査して」いくようですが、その調査結果の公表を待ちましょう。

 さて、本件とは無関係ですが、領収書偽造による不正の話です。
 領収書を経理に持参して、立替えた経費を精算するプロセスはあります。
 仮に「10,000円」の領収書を「70,000円」と改竄して、収入印紙も忘れずに貼付して、消印を適当に押して経理に持って行くとどうなるか?
 ウルサイ経理ならば「高いわね」と怒られそうですが、事情の知らない担当者であれば、問題なく精算されそうです。この場合、自分は10,000円しか立て替えていないのに、会社から70,000円貰うことになります。
 誰もが思いつく単純な、しかし悪質な不正です。
 一般的に領収書は「複写式」になっています。
 お客が受け取るのは「複写された側」ですから、これを改竄するには、そのためのカーボン紙等の不正用具を持つ必要があります。これとは別に聞いた領収書の偽造の事件では、不正実行者は、様々な領収書に対応できるように、様々な種類のカーボン紙を机の中に忍ばせていたようです。
 大きく水増しするとバレるでしょうが、少額な不正であり続ければ、永遠に気がつかないかもしれません。また、業務プロセスが末端になればなるほど、役員等の上層部からは目が届きにくくなります。

 しかし、本件では7年間で2億円もの不正です。
 不正の実行方法は上記と異なるかもしれませんが、巧妙に領収書を偽造していたとしても、「そうした不正が起こるかもしれない」という問題意識があれば、事前に防止又はもう少し早期に発見できたかもしれません。
 例えば、少額な精算はやむを得ないにしても、一定額以上(一定期間内との制約も併せた方が良い)の精算は、稟議を含む事前申請とした方が良いでしょうし、事後的にでも承認を求めることも考えられます。また予算と実績との慎重な比較や、そもそも予算に不正額が織り込まれている可能性にも配慮して、慣習的になされている相対的に多額の支出について、無駄な支出がないかどうかを予算策定時に注意することも有効です。
 ちなみに同社の2013年3月期の連結ベースでの財務数値は、売上は21,281百万円、税前利益が224百万円、当期純利益は73百万円でした。純資産が13,538百万円ですから、200百万円は重要性ないと判断したのでしょう。
遡及修正は行わないこととしており、2014年3月期に与える影響も軽微なようです。
 なるほど遡及修正したとすれば、200百万円の不正支出は7年の各期に分散されますから、各期における重要性は乏しくなるでしょう(旧態の開示方法では「前期損益修正損」となり、200百万円が一気に特別損失となる可能性もあり、なかなか「重要性なし」で逃げられないような気もしてきます)。
 加えて、他に同様の不正がなかったかどうかの検証は、なかなか困難を極めるかもしれません。
 なにしろ「領収書の偽造」ですから、領収書の綴りを一つずつ見ていく作業も必要になるかもしれません。考えただけでも気が遠くなる作業です。
 いずれにしても、会社にとっては、金額では計り知れない痛恨の不正だったことでしょう。

 全然関係ありませんが、私は東西線をよく使います。東葉高速鉄道もよく使います。
 南砂町、八千代緑が丘。よく使います。
 そういえば、NASUのロゴもよく見かけます。Taku

2013年6月 増田製粉所子会社の典型的な従業員不正

 既報の通り、株式会社増田製粉所の連結子会社において、元従業員による不正行為が発覚しました。本不正事例の社会一般に与える影響は必ずしも大きくはないのでしょうが、いわゆる中小企業において発生しうる不正を防止する観点から、本不正事例を題材にして「少なくとも保持すべき管理体制」を検討しましょう。
 なんといっても本不正事例の特徴は、「常勤役員3名、従業員12名」という小規模な組織ということです。小規模である以上、構成員一人一人に課されている役割は多岐にわたることから「兼務の増加→牽制不十分」となり、不正が発生しやすくなります。
 しかし「小規模企業での不正はやむを得ない」と匙を投げるのではなく、下記の点に注意をして、相応の不正防止策を構築することこそが重要と考えます。
 以下の「ちょっとした工夫」で不正が発生しにくい状況になり得るのです。以下の工夫が、貴社の管理体制の構築方法を見直すきっかけにしてもらえたら幸いです。

・現金出納や小切手の振出について、担当者が単独で処理することを禁止する。
 不正対象になるケースが多いのは、現金か現金同等物など換金が容易な資産です。
 棚卸資産については下記の「実地棚卸」をご覧いただくとして、少なくとも現金や小切手の振出等の「不正が発生しやすい」作業は、従業員一人に任せっきりにするのは問題があります。
 小規模会社の場合には、現金出納業務を「思い切って」従業員全員で行うようにすることが考えられます。大企業では考えにくいですが、小口の現金支払いについては、備えられた財布(役員等が定期的に残高を確認して適宜補充する)から、各従業員が領収書等の提出を条件として各自に精算させるわけです。その精算ごとに各自が現金残高を確認して、押印することにすれば、現金過不足があった時点で、「あれ、あってないゾ!」「前に精算した人誰だ?」との指摘となり、直ちに現金過不足が明らかになります。
 また、小切手の振り出しについては、未使用の小切手用紙や小切手振出控え、印鑑の保管場所やチェックライターの使用場所等、一定のルールを定めて、そのルールに従うことを厳しく求める必要があります。「小切手関連の作業は、とてもやかましい」という印象を従業員に受け付けてしまえば、相当な牽制効果が期待できます。特に印鑑の管理は重要です。少なくとも、役員以外の人が黙って使えるような状況にしないことが肝要でしょう。

・月に一度は関連資料の一致の確かめる。
 販売管理システムと会計システムのデータ、現金出納帳の残高と現金の実際有り高、預金残高と預金元帳の残高などなど、「両者は一致するはず」という相互の数値に何らかの理由で「ズレ」が生じることは一般的です。
 「両者は一致するはず」であるが故に「一致を確かめる必要はない」と考えるのか、であればこそ「その一致を確かめることが肝要」と考えるのか、経営者の内部統制に関する意識の問題でしょう。
 小規模な組織であれば照合する数値も限られますから、月に一度の小一時間くらいの作業の場合も多いはずです。できれば部長や役員クラスの人が行った方が良いでしょうが、税理士等の外部の人に依頼してもかまいません。月次でチェックしていれば、適時に原因が明らかになって、たいした問題にはならなくても、年次でチェックすると原因がはっきりせず、累積的に大きな数値の相違を招くことも希ではありません。

・実地棚卸
 在庫に重要性がない場合は別ですが、できれば半年に一度、最低でも年に一度は実地棚卸を行う必要があります。その際「すべての在庫を棚卸しよう!」という極端な発想は禁物です。あくまで「重要性に応じて」実地棚卸の要否を検討するべきです。
A;棚卸資産の入出庫を記録しておいて、その継続記録の検証のために定期的に実地棚卸をする。これが最も厳密な管理方法です。
B;棚卸資産の入出庫記録はしないものの、定期的に実地棚卸を行い、「期首棚卸数量+当期仕入数量-期末棚卸数量」の算式で、当期の使用量を間接的に算出する。これが中間的な管理方法です。
C;棚卸資産の入出庫記録もせず、また実地棚卸も行わずに、購入した時点ですべて使用したとみなす方法です。重要性がなければ管理は不要なのです。
 重要なことは、自社の取扱商品・材料について、ABCいずれで管理すればよいかを検討することなのです(「こうでなければならない」というルールはありません。一般には重要性が高いものはA、管理不要なものはC、その中間にあるものがBというように分けてみるとよいでしょう)。

・怪しいと思ったときの初動対応が重要
 不正には兆候が見られます。不正実行者の日常生活・態度・帳簿間の相違等、不正発覚前に「何か怪しい」と思われることが多いのです。
 「まさか?」「いやいや、彼に限ってそんなはずはない」という安易な納得は、発覚後「やはり、怪しいと思っていたのに」という後悔に繋がります。
 一方で「あの人は怪しい」という疑いは「おいおい、滅多なことをいうんじゃないぞ」という戒めに繋がることも多いので、せっかくの不正の兆候を見過ごすことも少なくないようです。
 多くの不正事例で感じることですが、「怪しい」と思ったときの初動対応がなにより重要です。初動対応では、不正の事実が発覚していない以上、不正実行者の態度は横柄なことがあります。
 「私を疑っているのですか?」
 「それでは、仕事になりません」
 という抵抗を示しながら、不正を隠蔽しようとすることが多いのです。
 調査側は、不正実行者の「しっぽ」をつかんでいるわけではないので、あくまで冷静に、「別に疑うつもりはないんだが、先日『不正事例研究会のセミナー』を受けて、ちょっと感化されちゃってね」などと言い訳をしながら、チェックすることが必要でしょう。さもなけば、不正の兆候がある以上、ばっさりと「担当者替え」を提案しても、決して不自然なことはありません。
 これらについて、担当者が異常なほどの抵抗を示すことがあれば、それこそが不正の兆候になると思うのです。こうした一時的な混乱は、不正が放置された結果の多額の損害が明らかになることに比べれば、たいした問題ではないのです。不正を早めに発見するには、その割り切りが重要と思います。
 他にも、いろいろと「最低限守るべきルール」の構築と遵守を提案したいのですが、近い将来、書籍としてまとめたいと思っています。また機会を改めて。Taku

2013年6月 増田製粉所の子会社従業員による不正

株式会社増田製粉所(大証2部)は、「当社連結子会社元従業員による不正行為に関する調査結果について」において、連結子会社の元従業員による現金の着服に係る不正行為の概要、再発防止策等を公表しました。
株式会社増田製粉所グループ全体からすれば、業績に与える影響は軽微であり、組織的な不正でもありませんから、社会一般的には大きな問題として扱われないでしょう。
しかし不正事例研究会では、本不正事例は中小企業にとって「教科書的な事例」として注目します。
本事例は、どこの中小企業でも発生しうる「よくある話」であって、注目すべきは「実際に不正が発生するかどうか」ではなく、「いかなる状況にあると不正が発生しやすいのか」ということです。
不正を「対岸の火事」と考える中小企業の社長さんには是非ともご一考いただきたい事例といえるでしょう。

まずは、状況説明からしましょう。
 常勤役員3名、従業員12名。
「よくある」中小規模の会社です。親会社が上場会社である関係でこうした不正が公表されることになりましたが、そうでなければ社会一般に明らかにならないレベルの不正でしょう。
 不正実行者の立場は「総務部次長(部長不在)、総務経理課長、損害保険課長の他、営業部次長、営業2課次長を兼務」し、また「経理課内では、現金出納、小切手の振出、銀行口座管理、受取手形管理、買掛金の計上・支払及び期末の棚卸の調整から会計ソフトの入力までを兼務」していました。
 「兼務」が「不正の温床」であることは一般論ですが、それにしてもかなりの兼務の状況です。経理と営業、現金出納からソフト入力、棚卸の調整まで。何でも1人でやらなければならない、大変忙しい状況でしょう。
それだけに様々な不正の方法が考えられるわけです。

 次に公表された資料において整理された6つのタイプの不正を紹介します。

不正タイプA(小切手の過大振出)8,632千円
ある支払のために小切手を振り出す際、必要額以上の金額を小切手に記入して現金化し、差額を着服する不正です。着服した差額分だけ、当座預金に相違が生じることになりますが、他の勘定を操作してこれを隠蔽します。

不正タイプB(現金着服)20,730千円
 現金回収された売上代金を預金に預け入れる際に一部を着服する不正です。これも着服した差額分の預金残高に相違が生じることになりますが、やはり他の勘定を操作して発覚を免れていました。

不正タイプC(簿外出金)650千円
 小切手を不正に振り出して現金を着服する不正で、もっとも単純です。帳簿上は出金記録はなされずに簿外であったとされますから、帳簿の当座預金残高と銀行側の発行する当座照合表との間には相違が生じていたはずです。

不正タイプD(経費仮装)140千円
 帳簿上、福利厚生費という名目で経費計上して、実際は現金を着服する不正です。経費が過大計上となります。福利厚生に係る領収書等の証憑を偽造しない限り、「不明朗な支出」として目を付けられることになりますが、これも金額は些少です。
 
不正タイプE(立替・仮払回収金着服)134千円
 経費の立替や仮払として概算額(例えば30,000円)を担当者に渡し、その後の精算の際に残額(領収書等が添付された実際使用額を26,000円とすれば残額は4,000円)を着服する不正です。着服差額は、適当な科目で経費処理してしまうことで、経費が過大計上となります。これも金額は些少です。

不正タイプF(積立金着服)254千円
 従業員の給与から天引きされる従業員の親睦や冠婚葬祭目的の積立金を着服する不正です。この不正実行者は、こうした積立金の管理も任されていました。もはや不幸と言うほかありません。金額は大きくありませんが、本当にこの不正実行者は手癖が悪いようです。
 
 上記から分かるように、本不正事例の大部分は、不正タイプA(8,632千円)と不正タイプB(20,730千円)から構成されます。しかし、C~Fも「よくある不正」の例なので、A~Fのそれぞれの不正について、次回、不正防止策・発見策を検討したいと思います。
 確かに手癖が悪いといっても、不正の実行を思いとどまらせるような仕組みを構築していれば、ここまで大胆な不正は実行できなかったはずなんですよね。Taku

2013年4月 JXホールディングス子会社の経理担当者不正

JXホールディングスは、「当社子会社元従業員の不正行為に関するお知らせ」において、子会社の経理担当者を電子計算機使用詐欺の容疑で警視庁愛宕警察署に刑事告発したと公表しました。
 開示資料や報道からは、不正の方法は単純なようです。
 不正実行者が経理処理用の端末機を操作し、取引先への支払名目で元従業員名義の銀行口座に不正に送金し、着服が発覚しないように出金の勘定科目を振り返るなどして書類を偽装していた、とされます。
 同容疑者は容疑を認めており、大半を競馬に使ったとの報道もあります。何と愚かな・・・。
 社内調査でこの不正が発覚したのは2013年1月。
 その後、警察への被害申告や警察当局による捜査に協力した上で、今般、社内調査が完了したため、正式に刑事告発したとしています。
 新聞報道では「総額11億円か」とされていますが、どうもハッキリしません。
 公表資料にも「告発した被害金額は129百万円ですが、今後の捜査の進展により増える可能性があります」としています。
 このコメントが個人的には、かなり疑問です。
 不正の全貌把握を含めた社内調査が十分に終わっていれば、今後の警察や検察の捜査の進展により被害金額は増える可能性は低いはずです。
 会社側としては不本意な受け止め方に見えるかも知れませんが、今般の公表資料を見る限り、「社内調査は終わったけど、あとは警察・検察に委せている」といった他人任せ的な雰囲気を感じ取れます。
会社の被害の全体像が判明しない限り、社内調査は完了しないと思われるのですが、どうなのでしょうか?社内調査は何をもって完了したのでしょうか?
 もしかしたら、刑事告発を行うことのみを目的として社内調査を行ったのでしょうか?
 仮にそうならば、その社内調査は「会社が被害者である」ことのみを意識している点で問題があります。もちろん、会社が被害者であることは自明ですが、一方で会社は不正を事前に防止し、また適時に発見し、事後的に検証する義務があります。その義務に着目すれば、不正による被害の全貌把握を他人任せにするのではなく、「自ら」調査する必要があるはずなのです。
 会社側の再発防止についてのコメントは以下のとおりです。
 「当社は、かねて「JXグループ行動指針」および「JX日鉱日石金属グループ企業行動規範」の周知徹底を図ってきましたが、今般、このような不正行為が発生したことを厳粛に受け止め、当社グループの経理・会計をはじめとする内部統制体制の強化等により、グループを挙げて再発防止に取り組んでまいります。」
 くどいかも知れませんが、本当に社内調査は完了したのでしょうか?
 いや、「社内調査が完了した」との判断は適切だったのでしょうか?
 仮に、社内調査が不十分であるならば、それに基づいて策定されるだろう再発防止策も不十分なものになりかねません。Taku

2013年3月 ネットワンシステムズの続報~不正のトライアングル(2)

既報のネットワンシステムズの元社員による不正行為の調査結果が2013年3月に公表されていました。
当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ
 本不正行為は「優秀な営業マン」として評価が高かった不正首謀者(以下、A)が、約7年間にわたり取引先との共謀により、架空の外注費を計上し、789百万円(前回の報道よりも40百万円ほど増加しています。)もの金員を流出させ、それを詐取し続けた事件です。
 これだけ長期にわたる不正であり、また金額も大きいですから、当然に事前に社内で問題になっていることが想定されましたが、上記報告書によると、やはり内部監査担当者が当該不正の兆候を把握していることが示されています。内部監査担当者は、あと一歩で不正を発覚するところでしたが、残念ながら検証が不十分なまま調査は終了しており、結果的には、Aの説明を「鵜呑み」にしていたようです。(架空の外注先の本店が商店街の一角のアパートであることを突きとめながら・・・なんとも残念でした。)
 また、今回の不正発覚の発端は国税庁の調査(架空の外注費計上の否認等)でしたが、通常、税務調査の対応は経理部等の税務申告を管掌する部署が行うところ、本件では「本社が主導すべき国税調査対応をAが牛耳っていた」とされます。
 この時点で、国税庁の人だけでなく、社内のほとんどの人間が「これは何かあるな?」と気ついたはずです。国税庁に対して営業マンのAしか説明できない状況がある、ということ自体が「あり得ない」からです(実際に社内では、独自に外部弁護士を交えて調査を始めたようです。)。
 要するに「Aは特別な存在で、何をしてもお咎め無し」という社内の環境ができあがっていたわけです。ただ、Aの残念なところは、内部の者はねじ伏せることはできても、外部の人間には、儚くも無力だったことです。
 当然のことですが、Aは「嘘」をついているわけですから、その回答に矛盾が生じるはずです。やはり国税調査でも不審な外注費が問題となりますが、Aは内部監査とは異なる説明をし、国税庁にその矛盾を憑かれます。しかしAはその矛盾を解消するべく、内部監査の監査記録を加筆するよう内部監査担当者に依頼したのです。内部監査室はその要求に応じてしまいますが、調査報告書では、「A の要求にしたがって安易に監査記録に加筆する行為は、内部監査室の独立性に反する行為であるといわざるを得ない。」としています。
 確かにその通りですが、私が最も気になるのは『内部監査担当者は独断で監査記録に加筆したのか?』ということです。換言すれば、「内部監査部門長が指示を仰ぐべき最高経営責任者等は、何も知らされないままだったのか?」ということです(もしそうであれば、内部監査部門長の責任は、かなり重いはずです)。
 Aは無名の従業員ではなく、社内の評価が高い「やり手」です。
 上層部も一目置く有名人でしょう。
 社内の内部監査部門の評価にも左右しますが、内部監査部門長としては、「あのAと対峙している」ということについてプレッシャーを感じつつ、「もはや独断で責任の負える案件ではない」、と考えていたかも知れません。
 少なくとも私が内部監査担当者ならば、そのように考えますし、「Aがまた問題になっています」と上層部に連絡を入れるでしょう(この辺りは、改善提案等を含めて、調査報告書に直接的な記述はありません。できれば内部監査部門長の本件に関するコメントを聞きたいところです。)
 
 もちろん、調査報告書では、役職者の減俸について明記されてはいますが、その不正の兆候に気付いていながら抑止できなかった責任について、内部監査部門以外の者の責任について、もっとクローズアップしても良かったのではないか、と考えます。(Aに対する調査結果や内部監査の監査調書の加筆について、内部監査部門長が上層部に何ら報告をしていなかった場合にはその旨を明示しても良いでしょう。)

 ちなみに、前回の記事に関連して同社が本事件についての「不正のトライアングル」を示しています。
「(イ)動機
 A は、NOS(ネットワンシステムズの略) の営業幹部として相当額の収入を得ていたが、高級クラブでの飲食、大きな家、高級車、ゴルフ会員権などのためには、NOS からの給与だけでは足りないと思っていた。そして、B(外部共謀者;取引先のX銀行行員)、C(システム会社社員) と共に、強い意思をもって能動的に、詐欺を実行したものである。
(ロ)機会
 NOS における内部統制システム、ガバナンスの脆弱性は、A、B、C らに犯行の機会を提供すると共に、長期間にわたる犯行、さらに大胆な犯行を可能にする機会を提供し続けた。
(ハ)正当化
 NOS に残存している属人的企業風土の中で、「できる営業マン」と周囲から賞賛され、「X銀行案件はA 案件」として他の関係者がA に頼り、思考停止状態にあったことは、「NOSの売上、利益に貢献しているのだから、利益の一部を自分のものにできて当然」という正当化の根拠をA に与え続けた。」

 最後に、調査委員会のヒアリングに対して、A は、以下のコメント残したそうです。
「処分については、これまでのNOS に対する私の功績を考慮してほしい。私は多額の受注、売上、利益で会社を十分儲けさせてきた。」
 これも不正リスク要因の一つとしての「正当化」の例であります。念のため。Taku

2013年2月 ネットワンシステムズ不正請求支払い748百万円

 ICT市場へのネットワークシステム構築等を手がけるネットワンシステムズ(東証一部)は、「不正行為の判明及び平成24年3月期第3四半期報告書の提出遅延ならびに当社株式の監理銘柄(確認中)への指定見込みに関するお知らせ」を公表しました。
 事実関係の詳細は調査中のため、今後、開示されることになりますが、第3四半期(平成24年4月1日~平成24年12月31日)の四半期財務諸表の提出が遅延する事態は、不正による損害そのものよりも、会社にとって大きな痛手かもしれません。
 ちなみに同社の第3四半期の短信は公表済みです(売上108,705百万円(前期比3%減)、経常利益5,981百万円(前期比44%減))。短信は証券取引所の規則に基づいて開示される資料に過ぎず、監査人のレビュー対象ではありません。監査人のレビュー対象は、あくまで四半期財務諸表で、これは45日以内(本件では平成25年2月14日まで)に公表しなければならず、この提出の遅延を受けて、監理銘柄への指定が見込まれているのです。

 さて、現時点で判明している事実は以下のとおりです。
 ネットワンシステムズの社員と外部業者らとが「共謀」して、架空の外注費名目で不正な請求を行わせる手口で金員を騙取していました。外部業者に支払われた金額は、平成17年から平成24年の8年にかけて、総額748百万円に達する可能性があるとのことです。ただし、会社は、財務諸表に与える影響は「軽微」と考えています。

 今回の不正事例については、2つのポイントとして、「発覚の経緯」と「財務諸表に与える影響」を考えてみます。まずは発覚の経緯から。
 社員と外部業者らとが「共謀」し、不正な請求を行わせて、実際には収受していない財・サービスについて支払いをさせる不正は常套手段です。外部業者が絡むことで、請求書や納品書といった外部業者の証憑書類が「むしろ完璧に」社内に整備されますから、書類だけ見ていても不正発覚には至らないケースが多いようです。
 むしろ感覚的に、「この支払いは何だっけか?」とか、「なんでこんな高いんだ?」という動物的な感覚の鋭い人の「素朴な疑問」こそが、こうした不正発覚の発端になりうるのですが、そのような優秀な人は仕事に追われてか、不正発覚の究明作業に手が回らず、不正発覚が遅れるケースも多いようです。
 では何故見つかったのでしょうか?
 よくあるパターンは、不正に行き詰まった不正実行犯の自白や行方不明、関係者の内部告発などがありますが、 今回の発覚の経緯は「税務調査」でした。
 会計士監査の場合でも残高確認といった手法により、取引先に調査協力を依頼することはありますが、これはあくまで会社側からの任意の調査依頼に過ぎません。
 一方で、税務調査では、「なんか怪しいな。取引先の処理も見ておくか。」というように、本件で言えばネットワンシステムズの外注先の会計処理を調査することができるわけです。
 多分に本ケースでは、(あくまで憶測に過ぎません。誤解無きように。)ネットワンシステムズの外注費の不規則・不自然・不合理な動きを察知した「優秀な」税務調査官が、社内の請求書や納品書等の証憑書類のみでは証拠として不十分と考え、請求書の送り手である外注先の会計処理もチェックしたのではないか?と思うのです。
 その結果、ネットワンシステムズで計上している外注費に相当する金額が、発注先で収益計上されていないことが明らかになったのでしょう。
 また、今ひとつのポイントとして、「財務諸表に与える影響」が軽微であるとの公表です。
 748百万円という金額が軽微であるとの指摘は違和感があります。
 しかし、会計処理を考えれば、この748百万円は既に外注費として経費処理済みであって、仮に不当な支払いだったとして、不正実行者に求償することはあるにしても、不正実行者が当該不正で得た金額をそっくり貯蓄していない限り、個人での返済可能性は低いでしょう。
 その結果、仕訳で考えれば、過去に計上した外注費を取り崩して、不正実行者への求償債権として未収入金を計上し、当該未収入金の回収可能性に問題があるから貸倒損失とする、という流れになります。この場合、外注費が取り消されて貸倒損失となるわけですから、損益計算書の段階損益に影響はあるものの、通算された当期純利益に与える影響はないことになります。
 ただし、税務調査の結果、対価のない支払いとして寄付金認定されて申告加算が必要となり、納付税額が過小だったことから追加納付税額が生じます。過去、どれだけ遡及するかによって影響額は代わってくるでしょうが、これは今後の調査結果を注目することにしましょう。Taku

2012年11月 神姫バス子会社社長不正 357百万円

 兵庫県の大手バス会社である神姫バス(大証2部;2012年3月期の連結売上399億円、同当期純利益13億円)のグループ子会社社長(神姫バスの元専務。以下、元専務という。)の不正です。
 その手法は単純明快でした。
 架空工事や代金を水増しした工事を架空の建設業者や協力請負業者に発注して、実際には工事を行っていないにもかかわらず、工事を行ったように見せかけ、その支払額を元専務が取得して私的に流用する手法です。不正支出額の合計は357百万円でした。
 この元専務、平日・休日を問わず場外舟券売場に通い、1日数百万円もの賭けを行っていたようです。親戚、知人、神姫バスグループ内の同僚からの借金も多額にあったようです。こうなると、どうしようもありません。
 こういう人は、お金がいくらあってもなくなるまで博打を打ち続けるのでしょう。
 高級マンションやら高級車など、資産として残るものを購入していれば、それなりに返済手段にもなったのでしょうが、博打でスッテンテンになったのでは話になりません。

 神姫バスが2012年11月に公表した「当社子会社元役員による不正行為に関する調査結果について」では、今回の不正の原因として、親会社の子会社経営に対する指導、調査、分析が不十分であったとしています。もちろん、親会社の監視も重要なのは当然なのですが、私が個人的に重要と考えることは、それよりも日常的に接触しているはずの他の役員の責任です。
 報告書を見る限り「利益相反取引の承認を得るなど必要な社内手続は行われていましたが、法令や社内手続の遵守を形式的に審査しているだけでは不正行為の防止策として十分ではありませんでした」としています。しかし、形式的とはいえ社内手続が行われていた以上、他の取締役や監査役は元専務の横行を知っていたはずでしょうし、少なくともその不正の兆候は把握していたはずです。
 報告書が指摘するように、今回の不正が元専務の単独犯であったとしても、また不正が発生した子会社内で元専務の意思決定について異を唱えにくい雰囲気があったとしても、会社法の枠組みでは他の取締役や監査役は当然に監視責任を負っているわけです。
 「しょうがない」で済まされる問題ではないでしょう。
 会社は、元専務の刑事告訴及び損害賠償請求を行う予定としています。当然でしょう。しかし、これだけ博打にのめり込んだ元専務から資金を回収できる見込みはほとんどないと考えることが自然です。であれば今回の損害は、誰が責任を負わなければならないのでしょうか?
 同報告書で示されている子会社の役員への処分は、常務取締役を取締役へ降格、取締役の減俸15%~20%(3か月)でした。この処分、重いのでしょうか、又は軽いのでしょうか?相応なのでしょうか?
 加えて、監査役の責任や処分も気になるところです。
  最後に、報告書が示している再発防止策のうち、「(5)コンプライアンス委員会の活動強化」に下記がありました。「本件不正行為当時、・・・社内では結果的に法令順守よりも元代表者(元専務。筆者注)の指示が優先されるようになっておりましたが、その一因として、役職員とりわけ取締役の自らに課せられた善管注意義務に対する理解と認識が不十分であったことが考えられます。」
 そのとおりでしょう。
 その「理解と認識が不十分であった」ことの責任こそが、とりわけ重要なのです。
 本件の再発防止策の要は、他の取締役及び監査役の責任意識の高揚化にあります。
 逆に言えば、取締役や監査役の責任をシッカリ自覚している役員は、意外に少ないのかも知れません。
 皆さんの会社はどうでしょうか?Taku

2012年9月 フジシール パソコンの横流し

 ラベルやパウチ等で有名なフジシールインタ-ナショナル(東証一部)のグループ会社である株式会社フジシールにおいて、元従業員(設備部門の技術部長職)による不正行為が発覚しました。
 同社の公表資料によると、不正実行者である元従業員は、平成18年10月から平成22年10月にかけてパソコンを購入し、第三者に転売する手法で現金を着服していたようです。同社では、当該元従業員を刑事告訴することを決定しています。
 不正購入額は約47百万円。
 これは会社の損害額で、これを転売するともう少し安くなるでしょうから、不正実行者が手にした金額は30百万円~40百万円といったところでしょうか。個人的には多額に思われますが、フジシールインターナショナルという企業グループ全体から見れば重要性は乏しいでしょう(ちなみに平成24年3月期の連結売上は880億円、純利益は43億円でした)。
 もとより「重要性はないから問題はない」という訳ではありません。会社側も「業務プロセスの見直しや牽制機能の強化など内部統制システムの見直しを行い、再発防止に取り組んで」いるようです。
 報告書を見る限り、具体的にどのような手口だったかハッキリはしないのですが、4年間という比較的長期間をかけて、かすめ取った資金が47百万円程度となると、年間1千万円超です。パソコンは数十万円でしょうから、不正実行者は、年間、数十台の不正な購入手続を続けていたはずです。
 一般にこうした不正を防止又は発見するには、購入した固定資産の現物と固定資産台帳等の定期的な照合を行うことが必要です。固定資産に計上されずに経費処理されてしまう消耗品や器具備品についても、単価の比較的高いもので数の多いもの(特にパソコンは不正の対象になりやすい)は、何らかの管理資料(現物の一覧表等)を保持しておき、現品と帳簿とを照合できるように現物にシールを貼付しておく必要があります。
 固定資産の現物と帳簿とを定期的に照合しているのであれば、現物の横流しをすれば直ちに発見されるでしょうし、またそうであるならば、不正実行者はそうした不正を行うことに躊躇いを感じることでしょう。
 この会社はシール(というよりもパッケージ的なものですか)の専門会社です。
 お客さんの製品にシールを付ける商売ですが、自分の固定資産にはシールを貼っていなかったのでしょうか?

 余談ですが、本事件を見て、先日リース会社の開催したセミナーを思い出しました。
 有形固定資産の現物管理のソリューションに関するセミナーでしたが、有形固定資産の現物にバーコードのシールを貼付して、ハンディタイプの端末を使ってバーコードを読み込み、有形固定資産台帳と現物とを照合する仕組みです。なかなかの優れもので、効率よく現物管理が行えそうなサービスでした。

 有形固定資産は、金額も多額である一方で、使用期間が長期にわたり、現物の新規購入や廃棄、売却、移動も考えられ、加えて管理担当者の移動も考えられるため、実際には固定資産の現物と帳簿とが一致していないケースが多々あります。あるはずのものがなかったり、帳簿上なくなっているものが何故か存在していたりすることも稀ではありません。
 内部統制監査が導入されて、幾分かは改善されている会社も多いようですが、内部統制監査とは縁のない中小企業ではまだまだ管理不十分な会社が多いはずです。一度、固定資産の現物と帳簿とを照合してみませんか?
 いままで一度もそんなことはしたことはない、という会社では、意外なほどに帳簿と現物との間に相違があることが明らかになることでしょう。
 「何故こんな相違があるのか?」
 原因究明できない「謎」「ミステリー」に直面するかも知れません。Taku

2012年6月 タダノ子会社役員不正

クレーンで有名なタダノの子会社での役員不正です。

同社が公表した資料はこちらです。

米国販売子会社タダノ・アメリカの法務担当役員である副社長(51歳)が、2010年11月~2012年4月にかけて、法律事務所への支払いを装って900万ドル(80円換算で7億2千万円)の費用(推定)を水増しして横領した疑いがあることが判明しました。
読売新聞の報道によると、子会社の日本人社長が、その不正実行者を問いただしたところ、「ここは裁判所ではない」と言って席を立ち、そのまま行方が分からなくなったようです。妙な話です。
同社では、実際に様々な訴訟費用や調査関連費用の支出が存在したため、これを水増しして経費計上されたとしても見抜けなったといいます。一方で、2012年3月に米子会社から法務予算の大幅な増額要求を受けて、タダノ本社が調査を開始し、その結果、架空の法律事務所への支払いが発覚しました。
タダノ・アメリカは、損害回復のための民事手続を申請する一方で、副社長を刑事告発し、現地では既に家宅捜査が行われ、逮捕状が出たとの情報もあるようです。

会計的に気になるのは、上記公表資料の以下の記述です。
上記の900万ドルのうち「約313万ドルについては既に費用化されており、当社の2010年度及び2011年度経常利益・当期純利益に与える影響はございません。なお、当社の2012年度業績に与える影響につきましては、現在精査中・・・。」
「既に費用化されており・・・」ん?
その費用化されたこと自体が問題なのでしょう。
会社が本来負担すべきでない費用が会社負担になってしまっているから、損害回復のための民事手続するわけでしょう。つまり、不正実行者に対して返済を求め、その返済能力如何によっては、不正実行者に対する未収入金を計上することも考えられます。
結果的に、不正実行者に返済能力がなければ、残念ながら業績に影響はないでしょうが・・・
今後の同社の調査結果の公表が気になります。Taku

富士重工 クリーンロボット部における不正行為 2012年2月

富士重工は、2012年2月、「クリーンロボット部における不正行為について」を公表しました。

 富士重工という大規模企業グループ内にあって、不正が行われたクリーンロボット部(清掃用のロボット事業)は、2010年度売上高217百万円(人員8名)という非常に小規模で、かつ特殊な部署だったようです。
 小規模であるが故に日常的運営を独自に行いうるし、新規事業であるが故に他の組織との業務上の関連性が極めて低い。また不正実行者であるクリーンロボット部長は、その業界では一定の評価を受けており、属人的にビジネスを進められる状況にあったと、同社は不正の原因を分析しています。
 
 また、同社はこの不正の動機を三つ示しています。
 ① 正規の手続を経ずに使用する資金(要するに裏金)づくり
 ② クリーンロボット部の業績の赤字を回避
 ③ 社外でクリーンロボット事業を行う目的で自ら設立に関与した企業への資金移転
 基本的な不正の手法は、架空発注によって会社の資金を外部に流出させて裏金とし(①)、またその裏金を使って売上の入金を仮装し(②)、さらには自ら関与する会社への資金移転(③)を行っていました。その結果、外注取引先に対して106百万円が過大に支出されたようです。
 「不正は裏金づくりから」、よくある話です。
 裏金さえできれば、あとは比較的自由に不正が実行できますから。

 加えて本事件で特筆すべきは、社内の問題だけでなく、経済産業省等の公的機関に対する不正請求が伴っている点です。具体的には、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、科学技術振興機構(JST)からの委託事業・補助金事業に関して、外注取引先からの水増し請求や労務費等の水増し請求により、194百万円の不適切な請求があったとされます。
騙された側の公的機関はあくまで被害者ですが、公的機関には大切な税金を騙されて取られないように注意して欲しいとも思います。

 内部統制は管理職の不正には有効に機能せず、無機能化しやすいことも事実です。
 また、会社が指摘するとおり、特異な状況下において外注取引先と共謀し証憑を偽造するなどの巧妙な手口によって不正が行われていた場合には、会社側が不正を発見することは困難が伴うでしょう。
しかしながら、不正が発覚したときには、ほとんどの場合、「不正の兆候」があるものです。「なんか変だな」、「最近、怪しい動きが多い」という「不正の兆候」に適時に反応できる「風通しの良さ」「機敏な意思決定」が不正発見の糸口になります。
 承認手続の強化や定期的な配置転換、内部監査の強化や内部通報制度等の対応は、基本的かつ教科書的なのですが、どうしても形式的なルールの構築に終始しやすいものです。そのルールを実質的に機能させるには、具体的な不正事例から学び取った経験則を基盤として、当事者意識を持ちながら有効な内部統制について社内で議論することが肝要なのです。Taku

管理職によるカード不正 アテクト

プラスチック造形事業等を行う株式会社アテクトでは、経理・財務担当管理職による不正が発覚しました。公表された資料を掻い摘んで概要を示します。

「2007年10月~2011年12月・・・会社に無断で契約した会社名義の法人カードを私的に流用・・・会社の預金口座を通さず決済を繰り返すという簿外取引・・・極めて発見困難・・・カード会社から請求を受ける金額は130百万円と見込・・・現在精査中。」

この不正は管理職によるものなので、内部統制が有効に機能しなかったことは容易に想像できますが、具体的にどのような不正だったのかは、必ずしも定かではありません。
今後の詳細な報告を待つ必要がありますが、想像できることは、例えば以下のような場当たり的、自転車操業的な資金捻出方法です。

①A社のカード決済代金を生み出すために、B社のカードを利用して購入した商品を売却して資金化する。
②B社のカード決済代金を生み出すために、C社のカードを利用して購入した商品を売却して資金化する。
③C社のカード決済代金を生み出すために、D社のカードを利用して購入した商品を売却して資金化する。・・・

 このように複数のカード会社に対する債務が雪だるま式に膨らんだ結果、130百万円もの私的流用になったとも想像できます。上記A社、B社、C社のカード決済は無事なされますが、D社のカード決済はできません。この不正は、どうしようもなくなって決済できなくなった時点で発覚したのでしょう。
 無断で契約した会社名義の法人カードである以上、会社側としてはカードが発行されたこと自体を把握していないことになります。会社の開示資料にあるとおり、カード会社からの連絡がくるまでは全く知る由もなかったはずです。
 しかし、この不正を働いた管理職の人は不正発覚まで、いったいどんなことを考えていたのでしょうか。
 不正の金額が雪だるま式に増え続けていく状況下で、「このままでは大変なことになる」と知りつつも、その場しのぎに不正を続けたのでしょう。なんとも不幸な事件です。

その後、カード会社からの請求に会社は「仮払金」として処理しているようです。あくまで不正実行者の犯罪で、会社にはその債務を履行する義務はないものの、カード会社からの訴訟等を回避するためにやむを得ない決断だったようです。Taku

2011年12月 ナノ・メディアにおける会社資金の不正支出

外注先に架空の発注を行い、仮装した請求に基づいて代金を支払い、役員個人の口座に環流させる手口は、不正の典型的なパターンです。

 ナノ・メディアの元取締役は、自らが決裁して外注を発注し、一部外注の事実のない支出(総額30百万円)を行いました。この不正支出は元取締役の口座に環流していました。

 この種の不正は「一人の不届き者」が問題とされ、組織的な犯罪とは一線を画します。

役員クラスまで登りつめた方が、なぜこうした不正に手を染めてしまったのか。

やや理解に苦しむところですが、この事件で着目される点は、国税局の調査を発端としてこの不正が発覚したことです。

通常、税務調査というと会社は抵抗感を抱きますが、本件は会社からすれば大変ありがたい税務調査になったことでしょう。この国税局の調査で発見されなければ、不正による被害額がさらに多額になっていたかも知れないからです。

 ちなみに同社は、この不正支出が発生した原因について、取締役会の決裁機関としての機能が不十分、稟議書制度の運用の不徹底、取引先の選定等に係る手続上の問題をあげています。

 不正を防止するには「魔が差さないようにすることが重要」と言われますが、不正を防止する仕組みである内部統制を構築するのが役員である以上、その役員の不正の防止には限界があるといわれます。

役員に対する不正防止策を検討する以前の問題として、役員としての資質が問題視されるべきなのかも知れません。
プロフィール

TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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