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2017年9月 経理部門責任者による不正~税務調査により発覚230百万円

 最近、子会社おける不正が続発していますが、今回は開示会社そのものの経理部門責任者による不正です。山梨県甲斐市を本社とする株式会社光彩工芸(ジャスダック上場)は、ジュエリーの製造販売を行っています。
 同社は2017年8月に「当社経理部門責任者の不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 上記開示資料及び報道によると、同社経理部門責任者は、会社の預金口座から金員を不正に引き出して(1回につき数十万円から数百万円を数十回)当社に多大な損害を与えたとのことです。
 この点、一般的には、不正に引き出された資金は、三競オート(競馬・競輪・競艇・オートレース)やパチンコ等のギャンブルの他、異性のための遊興費として費消され、不正発覚時点では本人に資力がないケースが多いようです。
 しかし、この不正は異なります。
 というのも、不正に引き出された資金は、主に不動産投資及びその他物品等の購入費等に充てられており、これらの資産を抑えれば会社の被害を最小限にできるようなのです。
 また、不正実行者は経理部門責任者ですから、資金移動に関する権限を有しています。これを悪用し、支出した資金に相当する金額の材料費や棚卸高を過大に計上することで不正の発覚を免れていたのです。
 この点、資料からは明らかではありませんが、こうした材料費や棚卸高に係る関係資料のねつ造等、巧妙な隠蔽工作も伴っていたことが想定されます。そうでなければ、本不正により生じた異常値について、材料の調達部門や棚卸管理部門等の他部門の監視、又は内部監査等による原因究明によって、本不正が発覚する可能性が高いのです。つまり、社内の他部門の監視をすり抜ける隠蔽工作(これは財務諸表の監査人に対する隠蔽工作にも通じます)によって、不正発覚を逃れていたと考えられるのです。
 ここで強調したいのは、「経理責任者による不正は内部統制の限界を超える」と簡単に結論付けられないことです。
 経営陣を含め、他部門の責任者らが、会計数値の異常の有無を注意深く検証していれば、もっと早期に不正を発見できたのか、又はそうした監視下で「すぐ見つかる」という状況にあれば、そもそも不正を防止できた可能性もあるのです。
 さて、この不正行為の発覚の経緯ですが、実は東京国税局の調査を契機としています。
 これが、大変残念です。
 というのも東京国税局の調査は、この経理部門責任者の不正を質すことを目的としていたわけではありません。単純に「脱税の有無の調査」つまり、「水増しの経費計上はないか?」という趣旨で調査に来ているのです。
 つまり「この不正は、たまたま税務調査で見つかった」ということであり、会社の自浄作用によって発覚したわけではない、という意味で、大変残念なのです。
 同社の決算書を見てみました。
 平成29年1月期の売上高1,979百万円、当期純利益2百万円です。これらの財務指標と比較すると、当該不正行為の被害額230百万円は巨額です。
 「いやいや、不正実行者の保有する不動産を抑えれば大丈夫。実質、損害は生じませんから。」
 そんな声が聞こえてきそうですが、とんでもないことです。
 同社の業績は、平成27年1月期と平成28年1月期と連続して赤字で、売上高も下降気味です。業績動向を見る限り、ようやくリストラが一段落したのでしょう。平成29年1月期は、売上高の急落にも関わらず、何とかギリギリで2百万円の利益を出しています。このタイミングで、今回の経理部門責任者の不正が発覚したのです。仮に早期に不正が発覚していればリストラの方法も変わっていたかもしれません。
 しかも、自浄作用でなく、外部の調査によって「たまたま」発覚したのです。憎むのは不正実行者ですが、不正実行者が不動産投資をしていたことには感謝すべきでしょう(この不動産の上げ相場ですからね)。
 全てが結果オーライなのです。
 
 ちなみに、今年の4月に発覚した三菱食品株式会社の連結子会社でも同様の不正がありました。こちらは平成2004年6月~平成2015年3月にわたる長期間、請求書の偽造により個人の私的流用が行われていましたが、やはり国税局の税務調査により980百万円の着服が明らかになりました(資金の使途は開示されていません)。
 同社では、再発防止策として、役員を含めて単独での支払決裁ができない体制を構築することとしています。
 果たして、光彩工芸ではどのような再発防止策を提言するでしょうか?注目です。Taku

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2015年11月 イワキ株式会社の子会社役員による横領126百万円

 医療品や健康食品等の卸売業を手掛けるイワキ株式会社(東証一部)の連結子会社であるホクヤク株式会社は、動物用の医薬品販売を行う札幌の会社です。同社の経理担当取締役兼業務部長が10年以上にわたって会社資金を横領していたことが明らかになりました。
 同社グループでは内部管理体制強化のためグループ各社の資金管理の一元化を進めていたようですが、その過程で上記不正が発覚したとのことです。こうした内部管理体制強化の過程の中で不正が発覚したことは大変望ましいことですが、会社の報告資料「当社子会社元役員による不正行為に関するお知らせ」を読んで個人的に注目した点は以下の三つです。

1.不正隠蔽の手法
 不正実行者は当該不正隠蔽のため、銀行残高証明書を偽造して不正な報告を行っていたようです。確かに銀行残高証明書が偽造された場合には、不正実行者が操作した金額が当該証明書に記載されることになりますから、内部調査ではその不正発覚が困難になることでしょう。一方で、監査法人による監査では「残高確認書」が銀行から直接監査法人に送付されることになりますから、こうした偽造工作は無効となるはずです。
 イワキグループ全体からすれば、ホクヤクは金額的な重要性が乏しく、監査法人の監査対象とはならなかったのかもしれませんが、長年に渡って外部監査人による銀行残高確認が行われていなかったかと思うと残念でなりません。

2.不正金額の逓減
 個人的な資金の横領の場合、不正の手法が次第に大胆になっていく傾向があり、不正金額はその不正発覚に至るまで一般に多額になっていきますが、本不正事例では平成23年に14百万円、平成24年に11百万円、平成25年に10百万円、平成26年に9百万円、平成27年に8百万円というように次第に横領金額が減少しています。不思議です。不正実行者の良心の呵責か?それとも他に理由があるのでしょうか?

3.取引先に迷惑をかけないか?
 最も注目したのは、同報告書の中に以下の文言です。
「なお、当該不正行為は・・・販売する医薬品、医療機器その他の製品の品質等にも影響はなく、お取引先の皆様には何らご迷惑をおかけするものではございません。」
 この文言は無くても良かったように思うのですが、どうなのでしょうか?
 なぜなら同社グループの取引先は本不正が発覚したことについて、間違いなく心配しているはずです。また同社の内部管理体制の脆弱さから株価の下がる可能性も否定できません。そうした関係者の心配をよそに「何らご迷惑をおかけするものではない」と断言するのは危険です。
 ましてや、この報告書の文頭には「当社の株主の皆様をはじめとする投資家、市場関係者及びお取引先の皆様に、多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを心より深くお詫び申し上げます。」としているのですから。
 報告書を読んで、「いずれが本心なのか?」を考えてしまいます。

 最後に、こうした不正が長年に渡って発覚しなかったのは、不正実行者が継続して経理担当業務を行っていることに加えて、他者によるチェックが不十分であったことに起因することは他の不正事例を見ていても容易に推測できるところです。他山の石とすべきでしょう。Taku

2015年8月 架空仕入を利用した金銭着服

 長野県のリーダーカンパニーとして「新しいガス事業の創造に取り組んでいる」サンリン株式会社(JASDAQ)において、架空仕入を利用した金銭の着服が発覚しました。
 同社は、連結売上高32,121百万円、純利益596百万円(いずれも平成27年3月期;同社の有価証券報告書より)であり、ハイライト情報を見る限り業績は堅調に推移していると思われます。
 不正行為が判明した経緯として、平成28年3月期第1四半期決算の処理及び監査法人の四半期レビューの過程において、支店における棚卸資産残高の異常な変動について調査を行ったところ、従業員(1名)による「架空仕入を利用した金銭着服」が明らかになった、とのことです(業績に与える影響、複数年累計で約110 百万円と推定)。
 会社が財・サービスの提供を受けていないままに、その対価を会社に支払わせ、その資金を横領する手法は、資産を流用する不正の常套手段です。問題となるのは、そうした単純な不正が長年にわたって、なぜ防止・発見できなかったか、ということです。
 当然に不正実行者は、不正発覚をおそれて隠蔽工作を行っているはずですが、会社はその公表資料で「架空棚卸資産及び架空売上の計上という不正操作」の可能性について言及しています。この表現では具体的にどのような不正隠蔽工作であったかはハッキリしません(詳細な調査が未了なので、具体的に指摘することはできません)。
 ただ、本件に限らず一般的に重要なことは「不正の発生」と「その不正の隠蔽工作」とを混同しないことです。
 本不正は、実際に仕入れていない商品の対価を外部業者に支払ったこと自体に問題であると思われます。その上で、実際に仕入れたように仮装すれば「架空棚卸資産」を計上するでしょうし、さらにそれを販売したように仮装すれば「架空売上」を計上するでしょう。
 こうした架空棚卸資産・架空売上は、あくまで不正の発見を免れるための隠蔽工作に過ぎません。重要なことは、不正の隠蔽工作の具体的な手法よりも、不正の発生原因そのものなのです。
 不正が発生した組織では、時として不正の隠蔽工作の巧妙さを理由に、不正を発見できなかったことの正当性を強調するばかりか、不正行為の発生原因の究明が疎かとなる原因となることも考えられるのです。
 確かに、不正は事後的な意味では「発見」されるべきものであり、さらに発見された不正は「是正」され、再発防止策が講じられるべきです。しかし、もっとも重要なことは、不正を事前に「防止」することなのです。そのためには、隠蔽工作の巧妙さでなく、事前防止のためのコントロールの脆弱性に着目する必要があるのです。
 内部統制は「防止」「発見」「是正」のための仕組みですが、特に「防止」のためのコントロール、本件の例でいえば「外部業者への支払う際のコントロールの脆弱性」に着目する必要がありそうです。

 いずれにしても現在、同社は調査委員会を設置し事実関係の解明のため本格的調査を行っているようですから、その後の調査結果の報告を待ちたいと思います。Taku

2015年7月 不正の多発。七夕に思う。

 最近、不正事例の紹介の頻度が落ちていましたが、その主な要因は拙著「財務諸表監査の実務」の執筆、校正作業に起因します。現在、その作業は一段落したので、今後、時間を見ながら不正事例の紹介に励んでいこうと思っております。現時点でも、東芝、Lixil等、気になっている不正がいくつもあります。
 さて、私は不正事例を紹介する際、TDnetの適時開示情報閲覧サービスを利用しますが、ここ最近の1ヶ月で「不正」というキーワードで検索すると4件もヒットしました。しかも全てが、現預金の不正流用です。普段はゼロ件~1件ですから、ちょっと驚きです。
 以下、簡単にその4件を紹介します。

2015年7月3日 山加電業株式会社(JASDAQ)
 子会社の元代表者により、マンション管理組合の管理する修繕積立金等の預金が不正に引出されていることが判明。2010年4月~2015年6月の間の被害総額は約70百万円。元代表者は所在不明とのこと。2015年6月16日に元代表者は解任され、被害額については、親会社が弁済義務を負うとのことです。
 元代表者による不正である以上、内部統制による防止、発見には限界があったと思われますが、この元代表者は所在不明とのこと。逃亡したのでしょうか?

2015年7月1日 高木証券株式会社(東証2部)
 有印私文書偽造及び同行使の罪で元従業員、曾根崎警察署へ告訴。2014年1月~2015年4月にかけて8名の顧客の口座から約17百万円を不正に入手して自己のFX取引の損失の他、遊興費等に当てていた。2015年6月末に懲戒解雇。業績に与える影響は極めて小さいとのことです。
 必ず発覚してしまうのに、なぜ客の金に手を付けるのでしょうか?その発覚は、お客からの指摘だったそうですが、内部牽制での防止、内部調査等での発覚は不可能だったのでしょうか。

2015年6月15日 ルーデン・ホールディングス株式会社(JASDAQ)
 子会社の従業員による修繕積立金等の詐取。2008年4月~2015年5月にかけての被害総額は約70百万円。契約に基づいて親会社が弁済する予定とのこと。不正実行者は詐取したお金を遊興費等に全額使ったと供述しています。
 「修繕積立金」が「70百万円」詐取され、「最近発覚」した点で、この不正は上記の山加電業と酷似しています。修繕積立金は「ほったらかし」にされやすいので、不正が長期間放置される傾向があるのでしょう。定期的に残高を担当者以外の者がチェックする仕組みが必要なのです。

2015年6月22日 地盤ネットホールディングス株式会社(東証マザーズ)
 元経理部長による売掛金の回収代金の着服。2015年2月~4月までで被害総額は5百万円。
 不正実行者は経理部長の地位を利用して、顧客から預かった小切手を本人名義の銀行口座に入金して着服。主に遊興費に使用していたとのことです。
 「経理部長」は種々の権限は付与されていることが一般的ですから、「不正をやろうと思えばできる」という立場であることが多いようです。しかし、実際には「やろうと思わない」という人が経理部長になっていることが多いと思います。一方で、本不正は比較的短期間で、早期に発見されたように見受けられます。不幸中の幸いでしょうか。

 今夜は七夕です。
 不正事例研究会としては、「不正が無くなりますように」との短冊を書きたいところですが、なかなか現実的にはそうも行かないでしょう。
 より現実的に、「不正が事前に防止されますように」だけでなくて、「不正が発生しても直ちに発見されますように」、「発見された不正は直ちに是正されますように」と祈ることにします。
 今宵は、旧知の友人と事務所の斜向かいの「てんぷらや」で食事です♪ taku

2015年5月 北越紀州製紙の連結子会社における従業員不正

 北越紀州製紙株式会社の100%子会社である北越トレイディングの総務部長による不正です。2000年4月以降、15年にわたって行われた不正による着服金額は2,476百万円でした。期間も相当に長く、金額もかなり高額です。
不正の主な手法は、小切手の不正振出による現金着服、会社名義で締結されていた銀行との当座貸越契約を用いた不正借入による着服などでした。
 不正実行者は不正の隠蔽のため、帳簿上の当座預金残高と銀行残高を一致させるべく残高証明書を偽造したり、当座預金から前払費用への振替や架空の商品在庫を帳簿に計上する処理を行ったり、小切手を振り出している一方で借入金を非計上としました。
 長期にわたり不正が発覚しなかったのは、財務及び経理業務が一貫して不正実行者に集中していたため、内部牽制が有効に機能しなかったこと、及び銀行残高証明書の偽造、商品受払等の補助簿の改竄、不正な仕訳伝票の入力、偽造決算書の銀行提出などの隠蔽工作によるとされています。
 税務調査や親会社の内部監査及び会計監査人の往査、更には銀行の審査といった種々の調査をくぐり抜けたのは「残念」と言うほかありません。
 こうした単純な不正の場合、「残高確認で明らかになるだろう」と思ってしまうのですが、不正実行者としても「なんとかバレないように」様々な策を講じたのでしょう。例えば、使用していた口座を解約したとする虚偽の報告により、不正に使用している口座を金融機関の口座一覧から除外してしまえば、簿外借入の発見は困難が伴うかもしれません。
 また簿外の借入さえ発覚されなければ、そこから得た資金を利用して様々な辻褄合わせが可能となりますから、他の不正の隠蔽も比較的容易にできたのでしょう。
 一方で、管理体制が不十分であったことも否めません。
 不正に使用された銀行届出印は、不正実行者の管理責任者であった当時の副社長の管理下にありましたが、不正実行者は口頭で小切手の振出理由を説明することで押印を受けていたようです。副社長は事業内容について詳細な理解をもっておらず、証憑の提示や事実関係の詳細な説明を受けずに、不正に作成した小切手に銀行届出印の押印をしていたのです。
 さらに残念なのは、副社長の退任後に別の管理責任者である常務が銀行届出印を管理することになったものの、銀行届出印は常務の机の上に置かれ、理由の説明を要せずに、一言断りを入れれば自由に使用できる状況だったとのことです。
 この不正発覚の発端は、不正実行者の休暇の際に銀行からの電話連絡での問い合わせがあったことだったようです。また、取引関係のない銀行からの封書から簿外の借入金の存在が明らかになったとの指摘もあります。
 長年にわたって隠蔽され続けた不正。
 いつかは発覚することを怖れ続けた不正実行者はこの不正発覚に何を思うのでしょうか。
 不正資金の使途はギャンブル、株、愛人、遊興費等に費消したとのことです。
 長期間にわたり配置換えがなされなかったことは不幸なことです。Taku

資金環流による売上仮装事例

平成27年3月に「財務諸表監査の実務」(中央経済社)が出版されます。
 今回は、その中で扱っている過去の不正事例(販売担当者による資金循環)を紹介します。
 不正実行者Aはスゴ腕の「営業マン」と評価され、○○支店全体の8割超の売上を受注していました。
 実際は架空売上だった訳ですが、不正発覚前にその営業成績を「すごい」と考えるのか、「怪しい」と考えるのかが、不正発覚の分かれ道でしょう。もしかしたら、社内では「あり得ない」と考える者が多かったのかもしれませんが、その会社では「厳しく審査することができず、それどころか、その異常な売上を前提にして、翌年度は売上伸張110%の予算値を設定して、その実現を迫るという対応に終始していた」(同不正事例に係る会社発表の資料より引用)としています。
 では、なぜ本不正は発覚されなかったのでしょうか。

 会社の公表した資料では、不正実行者による関係処理の偽装の巧妙さに加えて、「入金の事実」が上げられています。会社は確かに「怪しい」と考えていたものの、入金の事実に着目する限り、収益の実在性を否定できなかったのです。
 上記の不正の「カラクリ」は、請負工事を業とする会社において、取引慣行上、下請け業者への工事発注費用を先行して支払う(元請け業者への手数料を先行して支払う場合もある)ことに起因します。例えば、元請け業者から大型工事案件を受注したことにして、その作業を下請け業者に発注し、その支払いを先行して行った場合を想定すると、以下の仕訳となります。

(借)未成工事支出金 ××百万円 (貸)預金   ××百万円※①

 上記の①の未成工事支出金は、工事完成までの間、仕掛品として資産計上されますが、工事完成によって、元請け業者に対する売掛金・売上計上するとともに、未成工事支出金を売上原価に振り替えることになります。

(借)売掛金     ××百万円 (貸)売上高     ××百万円
(借)売上原価    ××百万円 (貸)未成工事支出金 ××百万円

 上記の売掛金及び売上高が架空だったわけですが、上記の売掛金は下記のとおり入金処理されます。

(借)預金      ××百万円※②(貸)売掛金  ××百万円

 注目すべきは、上記※②の売掛金の入金は、実は※①の未成工事支出金として支出された資金が環流されている点です。帳簿上は下請け業者に支払ったはずの資金が、実際には不正実行者によって自社に環流され、この入金があたかも売掛金が入金されているかのように偽装していたのです。
 要するに、先だって計上した売掛金の入金の仮装するためには、また新しい大型受注案件が必要となり、その受注によって支出される下請け先への支払いが、その売掛金の入金の資金されていたのです。

 当たり前の話ですが、※①の未成工事支出金の支出を止めれば、※②の売掛金の入金も止まります。自転車操業的に資金を循環させて売上及び回収を偽装しているに過ぎない訳です。こうした不正では、次第に架空の取引金額が大きくなっていく特徴があります。本事例が発覚した時点では、未成工事支出金の残高が225百万円、売掛金の残高は841百万円、合計1,066百万円とが同社の貸倒要因となったとされます。

 問題は、「怪しい」と思った際の詳細な調査方法でしょう。
 本事例では、発注書や見積書等の書類だけでなく、工事現場の観察や作業工程別の作業完了写真の貼付、元請け業者や下請け業者等に対する確認(電話一本でも良い)を行うことで取引の実態を把握することができたはずです。また、売掛金が回収されているとしても、それ以上に未成工事支出金等の出金がなされていることを不審に思うこともできたではずです。
 上記の検討も不十分なままに、「支店長の監督不行届」や「本部には相談していた」との責任転嫁や「不正実行者本人が悪い」といった至極当たり前の意見しかなされない場合、同様の不正が発生する可能性は高いでしょう。Taku

2014年4月 KNT-CT連結子会社での経理担当者の不正

 「KNT」は何の略か?おわかりでしょうか?
 関係者でなければ判別できない人が多いのではないでしょうか?
 正解は「近畿日本ツーリスト」です。言わずと知れた旅行業界の大手です。
 2013年1月に「近畿日本ツーリスト(KNT)」と「クラブツーリズム(CT)」とが経営統合し、持株会社化された会社名が「KNT-CT」です。
 2014年4月、同社は「当社連結子会社元社員による不正行為について」を公表しました。
 上記報告書では、KNT-CTの連結子会社「近畿日本ツーリスト沖縄」で、経理担当者が2005年10月~2014年1月の間、足かけ10年にわたって不正を行っていたことを明らかにしています。不正実行者からの返戻金を控除した被害総額は251百万円。単独犯の従業員不正としては、比較的多額の不正と言っても良いでしょう。
不正の手法は以下の通りです。
・ファームバンキングを利用しての不正実行者の個人口座への不正送金
・不正な預金の引き出し
・夜間金庫の投入現金の抜き取り
 報告書では、上記の不正について「巧妙に経理書類を改ざんしていた」と指摘しています。
 「巧妙かどうか」は報告書を見る限り判断できませんが、上記の不正は容易に想定しうる典型的な手法なはずですから、そうした不正が発生するリスクを識別し、これに対応するコントロール(リスク低減策)が十分だったかどうかが問題となるでしょう。
 具体的な業務プロセスの内容にもよりますが、例えばファームバンキングの送金内容と請求書や支払依頼書等との照合、預金の引出に係る承認手続の有無や定期的な残高の検証、不自然な入出金の原因調査、領収書や入金票の日付や金額と夜間金庫の現金投入のタイミングや金額の不整合に係るチェック等、上記の不正リスクに対応する典型的なコントロールに不備がなかったかどうか、が問題となると考えます。
 こうしたコントロールが有効に機能しているにもかかわらず不正が発覚しなかったのであれば「巧妙な隠蔽」だったのでしょうし、仮にこうしたコントロールが運用されていなかったのであれば「巧妙」ではなくて、「管理態勢が不十分だった」ということになるでしょう。また、何よりも現金や預金(ファームバンキング等も含む)の取扱担当者は、定期的に配置換えを行うか、強制的に休暇を与え、他の者が作業を行う等のコントロールが必須です。
 特に注目すべきは、この不正の発覚は不正実行者である経理担当者が2014年1月に退職したことに起因する点です。つまり、不正実行者の退職後、他の者がその経理業務の状況を確認した結果、不自然な経理処理の存在が明らかになったのです。こうした発覚の経緯からすれば、長期間にわたって不正実行者の業務内容を誰もチェックしていなかった可能性があります。また、もしかしたら不正実行者が2014年1月に退職していなければ、この不正は未だに発覚しなかったのかもしれません。
 最後に、同報告書の結びの記述です。
「当社では、コンプライアンスを重視し、適正な業務の執行に努めてまいりましたが、このように重大な不祥事が発生いたしましたことは痛恨の極みであり、事態を重く受け止め、全役職員が一丸となって再発防止に努め、信頼回復を図った参る所存であります。」
 個人的には、その具体的な「再発防止策」について興味があります。
 それには今回の不正が長期間にわたり発覚しなかった具体的な原因が踏まえられるはずですから。今後、具体的な再発防止策が開示されることを期待しましょう。Taku

2014年3月 元フジテレビ社員による資金の不正流用

 株式会社ストーリアは、フジ・メディア・ホールディングスの100%子会社で、ブライダル事業(婚礼プロデュース事業)を行っています。本不正事例は、その会社の元社長が、会社資金を私的流用した事件です(公表資料はこちら)。
 この元社長はフジテレビの元社員で、多くの著名な番組制作に携わっていたそうです。
 テレビ局の給料は総じて高いですし、著名なプロデューサーであれば、相当額の収入があったとも考えられるのですが、それでは足りなかったのでしょう。真偽は定かではありませんが、証券取引での損失を補填するための資金横領との噂もあります。
 横領期間は約3年。横領金額は約1億円。比較的早期に発覚したケースかもしれませんが、何より「社長の不正」という異質な面は注目されます。
 不正の手法は単純で、会社の銀行口座から不正実行者の個人の銀行口座への不正送金を行っていたようです。通常の内部統制では、期末日等の締日に銀行預金の残高を検証することが一般的ですが、そのコントロールによる不正発覚をおそれて、いずれからか一時的に資金を調達してこれを返還し、また締め日後に払い戻していたとされます。
 通常の監査手続でも、単純に期末日時点の残高のチェックを行うだけでなく、通帳や当座照合表等を通査して、期末日前後に不自然な入出金がないかどうかを検証する必要があります。この会社で3年以上にわたりこの不正が発覚しなかったのは、こうした期末日前後の異常の有無の検証が不十分で、単純に残高の検証のみに留まっていたからかもしれません。
 きっと優秀な人材で、相当な手腕の持ち主であっただろうのに、魔が差して会社の資金に手をつけてしまったのは、なんとも不幸と言う他ありません。
 しかし気になるのが、同社の公表した資料の中の以下のコメントです。

「なお、当社の会社資金の私的流用につき、お客様への損害はございません」

 それはそうでしょう。
 しかし、「お客様への損害がないこと」=「当たり前なこと」を殊更に強調すると、なにか妙な感じがしませんか?
 きっとコメントしている側は意図していないのかもしれませんが、「お客様には関係ないこと」=「外部の人にとやこう言われる筋合いはない?」というように読めませんか?
 うがった読み方なのかもしれませんが、なお書きとはいえ、やや抵抗を感じてしまうのは、私だけでしょうか?Taku

2013年5月 学校法人立教学院元職員の不正流用83百万円

立教池袋中学校・高等学校を運営する学校法人立教学院(東京・豊島区)は、「元職員による学校会計外資金の私的流用について」を公表しました。
立教学院の関係者は「これで済む」と思っているのでしょうか。
もちろん、私は関係者ではないので、これで済んでしまっても何ら問題にはならないのですが、仮に関係者であるならば、受け入れがたい事例と考えてしまいます。
以下、本事例に関する個人的な感想です。不正そのものよりも、その不正の対応の異常さ、甘さに注目してください。

1.退職と公表のタイミングが異常
 資料によると「元職員は・・・2000年から2011年までの12年間に・・・私的流用を行い、損害総額は83,127,763円でした。」とあります。これに関係して新聞報道では、2011年6月の人事異動で不正が発覚し、2013年4月5日付でこの職員は退職しています。
 発覚が遅いことは不正では良くあることでしょうが、退職のタイミングが遅すぎます。また、公表のタイミングも不可解です。
 通常は、不正が発覚すればクビ(懲戒解雇)です。加えて刑事告発もあり得る。しかし本事例では不正発覚後2年近くも元職員(59歳)が籍を置いていたことになります。異常です。
 また、通常は不正が発覚した時点で公表します。しかし、不正発覚後2年近くも公表しなかったことになります。これまた異常です。
 退職や公表が遅れたことについて詰問すれば立教学院は「調査の過程にあって公表を差し控えていた」などと抗弁するかもしれません。しかしそんな理屈は通じません。なぜなら、2年という期間が長すぎるからです。残念ながら、2年近くも不正事例を公表しなかったことを正当化することは、もはやできません。

2.盗んでも返せばOKは異常
 被害額が返済されるかどうかは、被害者側の感情に大きな影響を与え、その結果、被害者が刑事告訴するかどうかの判断に関係してくるでしょう。しかし本事例は、公共的な学校法人で起きた不正であり、新聞の社会面で取り上げられるほどに社会的な影響は大きい事件です。学校法人側もその影響の大きさは気がついているはずです。
いくら損害が賠償されたからとはいえ、こうした手癖の悪い人間に社会的な制裁を与えない、とすることは問題があるでしょう。言い過ぎでしょうか?
「人のものを盗んで見つかってしまっても返せばよい。」
そんな教育方針の学校法人が仮にあるならば・・・?
学校に通う子供達、卒業生、父兄の皆さんは、この不正事例と立教学院の対応をどのように感じているでしょうか?

3.返済の確約と返済の見込みが異常
資料では、「総額83,127,763円のうち、これまでに約5,000万円の返済の目処が立っています。残額についても、本人から弁済の確約を得ており、全額を回収できる見込みです。」 
この記述も、呆れかえるほどに人を食ったような表現です。甘いです。
これを換言すれば「残額3,300万円は返済の目処が立っていないが、返済の確約を得ているから、全額回収できる」とも受け取れます。
他人のカネを83百万円も使い込んでいる泥棒の確約に何の意味があるのでしょうか?それを信じて疑わない姿勢が異常ですし、甘いです。 
加えて、不正実行者への退職金の支給も問題視します。
新聞報道では、「同法人は退職金や企業年金などで全額返済する確約を得ている」とあります。就業規則にもよりますが、一般には懲戒解雇の場合には退職金不支給とするケースが多いのが事実です。会社のカネを使い込んでクビになった人間に退職金を支払うなんて、まさに「盗人に追銭」。異常ですし甘いのです。

この異常さ、甘さはいったい何なのでしょうか?
大きな裏がありそうな気がしてなりません。
公表されている資料が少ないせいか、様々な憶測を呼びかねません。
もしかしたら、組織ぐるみの裏金を個人の責任に負わせたか?その退職を待って公表したのか?

まさか、そんなことはないのでしょう。
しかしその仮説は、上記の異常や甘さに一定の合理性を付与するから不思議です。
でも「まさか」ですね。

余談ですが、過日、赤坂で先輩と飲みに行ったときの話を思い出しました。
「人生には三つの坂があるんだ。覚えておけ。『上り坂』と『下り坂』。それに・・・」
「聞いたことあります。『まさか』の坂でしょう?」
「いや・・・。『赤坂』だ。」
なんのことやら。Taku

2013年3月 焼津市社会福祉協議会の職員が41,000千円着服

 2013年3月 焼津市の社会福祉協議会の職員が不正に41,000千円を引き出し、着服していたと発表しました。既に全額返金されているようで、同協議会は不正実行者について刑事告訴は行うかどうか不明としつつも、懲戒免職処分とするようです。
 特に手が込んだ不正ではなく、とても地味な不正なのですが、目にとまりました。
 基本的に不正は、このような単純なモノなのかも知れません。
 不正実行者は係長。不正期間は2010年7月~2011年12月の約1年半。
 1回に100万円から500万円の普通預金を引き出して横領し、定期預金に移し替えているように見せかけ、定期預金証書を偽造していました。
 当然、定期預金の満期が来れば、金融機関から連絡が来るはずなのに、来ません。
 不審に思った後任者が金融機関に問い合わせ、定期預金が架空だったことが判明します。
 単純明快な不正です。
 なぜこうした不正が無くならないのか?
 本人は「魔が差した。競馬や宝くじに使った」とコメントしたようです。
 しかし、発覚することが分かっていて、それも借金で苦しんでいたわけでも、生活に困窮していたわけでもない、きっと平凡で真面目そうに見える(すいません。想像で話しています。)職員が、なぜこうした犯罪に手を染めることになったのか?
 私には理解できません。
 この不正は、不正実行者が土日に出勤して局長等の印鑑を使用したとされます。
 当然のことですが、局長等の印鑑に係る管理がより厳重であったならば、この人は不正をしなかったと思うのです。例えば、局長等の印鑑の物理的な保管方法に加えて、押印簿による管理がなされていれば、相当な牽制になったはずなのです(こうした管理が行われていたかどうか不明のまま話しています。仮にこうした管理が行われていたのであれば、不正実行者の手癖の悪さが強調されるべきでしょう。この場合、上記の想像は撤回します。)
 不正実行者に不正の機会を与えた管理体制の不備が仮にあるならば、その不備を省みずに「不正を実行したモノが悪いのだ。我々は被害者だ。」と被害者面していれば、また同様のことがおきるでしょう。きっと。
 不正は単純なケースが多いのです。その不正の防止策も、実は単純なケースが多いのです。
 被害者にならないように、また不正実行者に機会を与えないように、少なくとも単純な不正防止策は考えておいた方がいいのでしょう。ところで会社の印鑑について押印簿、作ってますか?一般的な会社はありますよね。Taku

2012年9月 花王の子会社経理責任者の業務上横領270,000,000円

 花王といえば有名ですね。日用品大手です。
 こうした有名企業の不正は、他の有名でない企業に比べるとニュースになりやすいようです。
 特に今回は、単に同社名義の口座から自分の口座に資金を振り替えていたのではなく、情報システムに精通した管理職の不正実行者は、同僚になりすまして第三者のチェックを受けたように装って横領していたという手法が注目されました。
 個人的に興味を抱いたのは、会社側が事実を公表したのではなく、愛知県警が発表したことでニュースになったです。通常?(あくまで私の感覚ですが)こうした事件は、公開会社の場合、適時開示情報として開示されるのでは?と思ってしまったわけです。
 花王の適時開示は必要なかったのでしょうか?

 愛知県警によると、2006年2月、1,000万円を会社の口座から自分の口座に振り込み、着服したとして、2012年9月19日、業務上横領の容疑で花王の子会社(愛知県)の情報システム部長を逮捕した。株の購入資金等に使ったとして、不正実行者は容疑を認めているようです。
 この不正は2002年頃から始まり、会社の被害総額は2億7千万円(時効分を除くと1億6500万円)とのことです。
 不正実行者は、保有する株の売却により1億2千万円を返還したものの、残る1億5千万円は返済の見込みがない模様です。
 業務上横領罪の控訴時効は7年。
 2002年頃から始まった長きにわたる横領は、一部、時効により刑事訴追できなくなりました。
 以上が今回の事件の概要ですが、不思議に思ったのは以下です。

「着服容疑発覚後の昨年(2011年)11月、会社は同容疑者を懲戒解雇している。」

 懲戒解雇をするには、単に「横領の疑いがある」という理由では不十分で、その事実を示す証拠ないしは相当な蓋然性が必要とされます。とすれば、会社側は去年の11月に不正の事実を把握しておきながら、適時開示せずに、今回の警察の発表に至って、本事件が一般に開示された、ということです。

 東京証券取引所のHPによると、適時情報の開示が求められる「子会社の発生事実」は以下の通りでした。
1.子会社における災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
2.子会社における訴訟の提起又は判決等
3.子会社における仮処分命令の申立て又は決定等
4.子会社における免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令に基づく処分又は行政庁による令違反に係る告発
5.子会社における破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告
6.子会社における手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分
7.子会社における孫会社に係る破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告
8.子会社における債権の取立不能又は取立遅延
9.子会社における取引先との取引停止
10.子会社における債務免除等の金融支援
11.子会社における資源の発見
12.その他子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実

 あえて言えば12.に該当するかどうかでしょうか?
 最近の適時開示の事例からすると、子会社の不正でも適時開示の対象になっているケースが多い気がしたもので、いろいろと勘繰ってしまいました。
 むしろこうした不正事例は開示していないケースの方が多いのでしょう。考えを改めます。
 花王は本事件を適時開示せずにOKだったのでしょうね。

 なるほど、花王の2012年3月期の連結売上1兆2千億、税前利益が1千億円でした。
 今回の不正は、2億7千万円。税前利益との比率は0.27%。金額的な重要性がないことは明らかです(質的な重要性は別の議論ですけど)。

 一応、同社の広報に電話でも確認しました。
 「警察の捜査が進んでいる状況での適時開示は、適切な対応ではないと判断した」とのこと。
 そうでしたか。
 何でもかんでも開示すれ良いと言うわけではなさそうですね。
 本件を契機に情報開示のあり方について、思いを巡らせてみます。Taku
 

続報 ソリトンシステムズ 経営管理部長の不正

 ソリトンシステムズの続報です。
 「もしかしたら会社に対する報復的な行為ではないか?」と勘繰ってしまった今回の不正事例ですが、同社の第三者委員会の報告書が公表されていました。個人的に興味を覚えたところを中心に説明しましょう。

 2012年8月9日付の第三者委員会の報告書によると、不正実行者である執行役員経営管理部長は、同年5月15日~6月28日までの間に、同社の小切手帳から、計10枚(合計170百万円)の小切手を作成し、10回にわたり、自ら小切手を銀行窓口に持参して、現金化しています。
 経営管理部長自らが、銀行窓口に小切手を持参するというのは、かなり異例な事態ですから、銀行窓口の人もその使途を訪ねていたようです。しかし、不正実行者は「社長の個人的な用途に使われる」と嘘の回答をしていたとされます。
 不正発覚直前は、立て続けに現金を引き出しています。
 6/25に20百万円(A銀行)、6/27に20百万円(B銀行)、6/28に20百万円(A銀行)。 発覚したのは、6/29の40百万円(B銀行)の引き出しの際です。
 B銀行への小切手持ち込みは、これで2回目でした。
 不審に思ったB銀行の担当者は、「本当に社長の個人的な使途なのかどうか」を会社への問い合わせをしたようです。会社側は当然これを否定しますから、不正実行者から事情を聴取するに至り、本事件が発覚しました。
 余談かも知れませんが、B銀行の窓口の人は2回目の出金で気が付いたことになりますが、A銀行の窓口では8回もの出金をしていました。A銀行側で、もっと早く気が付いていれば・・・。(もはや内部統制の議論ではなくなりますね。)

 この事件で不可思議なのは、不正の動機です。
 通常は、借金の返済やギャンブルその他、具体的な資金使途が明らかになるはずですが、この不正事例では「遊興費に費消」との曖昧な供述のみで、その供述を裏付ける資料等もないため、具体的な使途が明かになっていないのです。
 すでに費消されてしまっているのか、又は現金がどこかに隠匿されているのか、不明なままなのです。
 
 私が個人的に抱いた「不正実行者は会社に恨みを持っていたのでは?」という疑問については、同報告書は以下のように示しています。
 「元社員はソリトンが支払ってきた給与額に不満も漏らした事実はあったが、それ以外に、地位や昇進・昇給等で格別に不利益を受けた事実はない。本件不正行為が執行役員就任から5ヶ月後に行われていること、この間に、例えば、社長に強い叱責を受けた等の元社員をしてソリトンへの報復を動機付けるような事実も報告されていない」
 
 なるほど。特に会社に不満を持っていたわけではなさそうですね。 
 発覚することが解っていながら行った確信犯的な不正。
 その目的も定かでなく、現金の所在も不明な事件。
 なんとも不可解です。

 最後に、今回の不正についての同社が公表した再発防止策を五つ示します。
 ①経理組織の見直し
 ②支払いに関するチェック体制の強化
 ③内部通報制度の改善
 ④内部監査機能の強化
 ⑤従業員教育の拡充
 もともと、キッチリしている会社でこうした不正がおきると、なかなかどうして、その具体的な防止策の検討は難しいことなのかも知れません。なぜなら、「内部統制の限界」を克服する策を議論しているからでしょうか。
個人的には、この不正実行者を経営管理部長に指名したことが問題であって、それ以上にこうした不正の再発防止策を講ずるのは、かえって非効率的な組織になるリスクを孕んでいると考えました。Taku

2012年7月ソリトンシステムズの経営管理部長不正

ネットワーク機器、セキュリティ製品の開発、販売を行うソリトンシステムズ(JASDAQ)は、元社員(元執行役員 経営管理部長)が、不正に当社の銀行口座から 170 百万円を引出し、着服したことを発表しました。会社はこの元社員に対し、当該執行役員の職を解任し、懲戒解雇処分を決定しています。また、法的責任追及に関しては、刑事告訴を念頭に対応を協議中とされ、現在、金額を含め、内容の詳細を調査中とのことです。
 この事件は驚きました。

 第一に不正実行者の役職です。
「経営管理部長」といえば、一般的には企業内容開示に係る責任者として、また社長の右腕として位置づけられるような相当な権限が付与されている役職です。当然に銀行の届出印の使用権限も付与されているでしょうから、これを不正使用して会社の資金を着服することくらい「やろうと思えば」容易なことです。
しかし、そうした立場にある人間は通常、相当な責任意識の持ち主であって、相応の実力や会社への貢献、社長他、従業員からの信頼があるのが一般的です。当然に「そんな不正をしたら、直ちに発覚する」ということは、十二分に理解しているはずですから、「やろうと思わない」のが通常です(不謹慎かも知れませんが、もしこうした不正を行う覚悟があるなら、発覚した時点では不正実行者は行方不明になる方が、犯罪心理的には自然なことなのかも知れません)。

第二に不正発覚のタイミングです。
ソリトンシステムズは3月決算ですから、2012年3月の決算に関して、6月下旬は株主総会開催、監査法人の監査報告書の提出、有価証券報告書及び内部統制報告書の提出といった重要事項の目白押しの時期です。不正が発覚したのは、これらが全て完了した2012年6月29日なのです。

「もう少し早く気が付かなかったのか?」
「実のところは気が付いていたのではないか?」
「監査人の後発事象のチェックは十分だったか?」
そんな多方面に大きな疑問が沸く、とても厄介な時期(逆に言えば、絶妙のタイミング)に不正が発覚したのです。
上記二つ不正実行者の役職と不正発覚のタイミングの不自然さに鑑みれば、もしかしたら、この経営管理部長は、発覚することを知りつつ(又は発覚するだろうタイミングまで見計りつつ)、この不正を行ったのではないかと勘繰ってしまいます。
「何のために?」 
 経営管理部長が、会社に対して何か大きな不満があったのか、納得行かないことがあったのか?
 当然、私にはわかりませんし、ゲスの勘繰りの域を超えません。
 ちなみに、2012年3月期の連結当期純利益が288百万円と比較して、経営管理部長の不正170百万円の重要性は無視できません。今後の調査結果、注目しましょう。Taku

J.フロント 従業員による架空売上計上と顧客口座からの不正引落とし

J.フロント リテイリングは2012年2月16日付で「当社子会社の元従業員による不正行為に関するのお知らせ」を公表しました。公表によると不正の内容は次の通りです。

 子会社の大丸松坂屋百貨店のお得意様営業部所属の元従業員(本年2月14日付で懲戒解雇)が2003年11月ごろから、自らの売上実績を装うため、複数の顧客に架空売上を計上し、他の顧客から集金代金を流用することにより、売掛金に充当していた。また、2004年8月ごろから、自ら充当する現金を得るため、架空売上を計上した商品の一部を横領・転売していた
架空売上の一部は、支払方法が銀行口座自動振替である得意先口座に計上し、複数の顧客の銀行口座から架空請求の金額を不正に引き落としていた(2億8千万円)が、請求書を破棄するなどの方法で発覚を免れていた。
2011年9月、元従業員が担当していた顧客から、口座の利用額と銀行口座引落額について不審な点があるとの問い合わせがあったため、調査を進めた結果、12月上旬になって不正を行っていたと判断するに至った。
これをきっかけに、元従業員が担当した得意先口座についても調査したところ、不正を行っていたことが判明した。
2012年2月期連結決算でおいて、特別損失に約2億8000万円を計上する見込みだが、通期連結業績予想の修正はない。

 架空売上計上額、他の顧客からの流用額、商品の横領額、対象顧客数、流用代金口座数については、公表していません。報道(松坂屋名古屋店:元従業員が3億7千万円の架空請求(毎日)大丸松坂屋元社員が銀行口座から不正引落3億円超、愛知県警に告訴(日経))によるとその金額などは、次のようです。

 元従業員は2001年から「お得意様営業部」で外商を担当、2003年11月ごろから8年以上にわたり、顧客38人に宝飾品391点、計約3億7千万円の架空請求を繰り返していた。また、2004年8月ごろから商品が売れたと偽って店から持ち出し、348点を約8,800万円で換金して売掛金に充当していた。
 不足した約2億8000万円を顧客2人の口座から引き落としたため、不審に思った顧客が昨年9月に同社に問い合わせて発覚した。
 顧客との取引はすべて営業担当者個人に任されており、元社員は不正を隠蔽しようと顧客請求書を破棄していた。

 請求書が顧客本人にいかず、破棄されるということ事態が理解できなかったのですが、報道で「すべて営業担当者個人に任されている」ことを知り、たぶん、販売者、請求書作成者・発送者が同一人だったと推測しました。事件は起こるべきして起きたようです。売掛金回収管理体制はどのようなものだったのか、も気になります。今後の調査委員会の結果に期待します。

 それにしても、百貨店は、1人平均年1百万円を超える額の移動があっても気がつかない顧客、相当に裕福で余裕のある層の人たちを相手にしているのだと、お帳場客について再認識させられました。
Tetsu

テーマ : ビジネスブログ
ジャンル : ビジネス

スーパーの売上金の着服

スーパーマーケットの株式会社タイヨーで起きた不正は、庶務担当の女性が帳簿を改竄し、売上金から現金を着服し、生活費、遊興費等に充てていた事例です。
 2006年11月から2011年8月までの間の不正総額は70百万円で、うち1百万円が弁済される予定であるため、会社の被害額は69百万円となる見込みです。
 
同社では、レジに入った現金が店舗ごとの売上金として集計され、警備会社による集金システムを介して、集金される仕組みになっていたようですが、この不正実行者は帳簿上、売上金を銀行に預け入れたように記載しておきながら、実際にはその日に入金せず、最大14日間遅らせて入金していたようです。
店舗の売上金の入金状況についてチェックする仕組みもなかったわけではないのですが、入金の遅延発生の確認とその対応について十分にコントロールされていなかったことが不正を見逃した原因とされています。
現金を目の当たりにした場合「魔が差す」ことが十分に考えられます。
スーパーや飲食店等の現金取扱い業種は、特に現金に関する内部統制を慎重に構築する必要があります。
「いやいや、そんなことしたらすぐバレてしまう。」と不正実行を断念させるような仕組みを工夫しなければならないのです。

当社元従業員による不正行為に関する調査結果、再発防止策及び関係者の処分について
プロフィール

TwoNT

Author:TwoNT
 当ブログは、中里会計事務所による不正事例研究会の記事を発信しています。
 不正事例研究会 中里会計事務所
実際の事件を知ることが、同様の事件を繰り返させないための想像力を養い、対策を有効に機能させるための第一段階になると信じます。
連絡先:中里会計事務所 電話03-6228-6555
中里会計事務所

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